1. 学歴と要領の良さだけでメガバンクに内定できたが…
コロナ前の好況期とは異なり、メガバンクの新卒採用者数は1/3以下に大幅減少している。このため、早慶という学歴だけでメガバンクの内定を勝ち取ることは難しい。
ところが、どこにでも要領のいいタイプの学生はいる。
大学4年間、単位を取る最低限の勉強以外はしない、留学経験も無く、体育会でも無い、いわゆるバイトとサークルだけのガクチカの無い学生でも、早慶という学歴と要領の良さでメガバンクに内定する学生は少なからず存在する。
しかし、そういった学生もメガバンクに入行すると、ショックを受ける。
英語も特段の専門性も無いので、メガバンクと言っても当然リテールコースである。配属は都内の支店なので、地方に飛ばされなかっただけいいかも知れない。
メガバンクの教育体制は良くできているので、金融の知識や社会人のマナー等を研修で叩きこまれる。そして、リテールなので泥臭い仕事も多い。
頑張ることに慣れていない、学歴と要領良さだけで内定した1~2年目の若手メガバンカーは、努力はしない癖に、外銀/国内IBDとか、国内アセマネで働く同期の話を聞くと、自分もそういった仕事に就きたいと考える。
そして、第二新卒での転身を図ろうとするのだが、そこで以下の様な多くの悩みに直面する。
2. 第二新卒での転職を考えた際に直面する悩み
①転職情報がわからない
第二新卒も中途採用であり、新卒採用とは全く採用プロセスが異なる。
どの企業にどういった求人があるかは自分で探さないと行けないし、OB訪問という制度も無いので、就活の要領では全く情報収集ができない。
もちろん、リクルートエージェント、doda、エン・ジャパン、マイナビ、JAC、ビズリーチとかは聞いたことがあるが、どこに登録すればいいのか、どういった使い方をすれば良いのかといったことはわからない。
②レジュメ(職務経歴書)の書き方に自信が無い
第二新卒市場は大きな転職市場となっているし、信頼性が高く教育体制も良いメガバンクの若手の人気は高い。そして、第二新卒市場であれば、学歴もそれなりに考慮してもらえるので、「早慶」という学歴はプラスに働くことが多い。
このため、リクルート他、何社かエージェントに登録すれば連絡は来るだろう。
その際に、転職用のレジュメを作成する必要がある。今は、ネット上に、レジュメのテンプレートや記載例がいくらでもあるので、とりあえずレジュメを埋めることはできる。
しかし、就活のES作成ノウハウは使えない。
メガバンクの先輩に相談する訳にも行かない。このため、正しいレジュメの書き方に自信が持てない。
③英語ができない
帰国子女でもなく、留学経験も無く、就活に備えてTOEIC上げをした経験も無ければ、当然英語は話せない。
就活では英語が出来なくても何とかメガバンクの内定を取れたかも知れないが、転職時においては、英語ができないと外資は厳しい。また、国内系金融の専門職とか、事業会社のグローバル職に応募をするには、英語ができないと不利である。少なくとも、英語が得意なライバルに見劣りしてしまう。
もちろん、TOEIC対策の本を買って自習したり、語学学校に通って地道に英語力を磨けばいいのだが、それにはお金も時間も労力もかかる。
④証券アナリスト(CMA)も証券分析の知識も無い
IBDで企業価値評価をやっている同期や、運用会社でリサーチの仕事をしている同期を見るとカッコ良く感じるが、そのためには当然、企業会計やファイナンスの基礎知識が求められる。ところが、学生時代に企業財務や会計の勉強をやっていないと、社会人になってから勉強をせざるを得ず、仕事の後に勉強するのは辛い。
もちろん、銀行の場合、基本的な会計の知識は研修で叩き込まれるが、株式投資周りの知識は自分で別途勉強しないと不十分だ。また、第二新卒での転職の際に基礎的な知識を証明するためにも、証券アナリスト(CMA)位は取っておきたい。CMAは決して難しい資格ではなく、高学歴の人が真面目に勉強すれば取れるはずだが、それなりに面倒臭く、学生時代に勉強しておけば良かったと後悔するケースが少なくない。
⑤ロジカルシンキング、ケース分析のスキルが無い
アクセンチュア、ベイカレントコンサルティング、アビームコンサルティング等は、非常に積極的な中途採用を行っており、メガバンク等の大手金融機関の若手もキャリアチェンジのために多くの者が転職している。
総合コンサルは学歴や会社名を重視するので、早慶&メガバンクというのは非常に有利な位置にある。しかし、応募に際してはロジカルシンキングとかケース対策のじゅんびをしておくことが望ましい。これらの準備をしなくとも、内定を取れる可能性はあるが、入社してからロジカルシンキングやプレゼンテーションを厳しく叩き込まれ、日々厳しい競争に晒されている新卒組に追いつくことは難しい。
別にコンサルを目指さなくても、ロジカルシンキングとかケース分析はビジネスマンを長くやっていく上で非常に有用なスキルであるので、やっておいて損はない。
とはいえ、英語、CMA等、やることが他にたくさんある中で、これらの準備をすることは結構大変だ。そして、就活生時代に総合コンサルも受けておくのだったと後悔するのである。
3. 全くスペック上げ(スキルを磨かなかった)若手メガバンカーの処方箋
①まずは、金融キャリアを前提に英語とCMAを始める
まずは金融専門職を目指すのか、コンサルを目指すのかを明確にする必要がある。
迷った場合には、金融キャリアを前提に英語とCMAを始めるのが無難だろう。
特にコンサルに転身するという意思が明確でなければ、今いる金融業をベースに考えた方がいいし、コンサルは年功序列・終身雇用の無い厳しい世界なので、国内大手金融機関でのキャリアを考えた方がリスクが低いからである。
そうすると、英語とCMAから始めればいい。これらは、社内異動のアピールにも使えるし、英語はTOEICスコアを高めれば普遍的に転職時に使いまわすことができる。
TOEIC対策は書籍を購入して自習が可能だが、英会話については英語学校に通わないと厳しい。ただ、並行して始めると相乗効果があるので、より短期での上達が期待できる。
②プレゼン、ロジカルシンキング、ケース対策については単科のMBA講座を受講するという手もある
このあたりは自習するのではなく、国内系ビジネススクールの単科のMBA講座を受講するという手もある。比較的安価だし、モチベアップにもなるだろう。
https://school.nikkei.co.jp/special/partners/mba_wbs/
③余裕があればVCが主催するイベントや副業に向けた情報発信を始めるといいが…
現実的には、日々の業務の中、なかなかここまで手が回らないだろうが、将来に向けた投資ということで、VCが主催する起業イベントに参加するとか、将来副業で稼ぐことも想定してSNSによる情報発信を徐々に始めてみるのも良い。
本来であれば、英語とか会計・ファイナンスの基礎、ロジカルシンキングやプレゼンテーションは就活の際に磨いておくことが望ましいのだが、やらなかったのであれば仕方が無い。早いうちに、学生時代にサボっていたスペック上げを今から始める他ないだろう。