ベンチャー企業に就職・転職した場合のキャリアにおける勝ちパターン

1. ベンチャー企業から大企業への転職は難しいが…

新卒或いは転職によってベンチャー企業で働くことになった場合、そこから、大企業に転職することは難しい。

何故なら、大企業が求めるスキルはベンチャー企業のそれとは異なっているし、大企業はネームバリューのある職歴を好むため、ベンチャー企業の場合は不利だからである。

<「成長」目的でベンチャー企業に就職しても大企業に転職できない理由>
https://career21.jp/ventureproblem/

2. それでは、ベンチャー企業からのキャリアにおける勝ちパターンにはどういうものがあるか?

ベンチャー企業から大企業への転職は難しそうであるが、だからといって、キャリアにおける勝ちパターンが無い訳ではない。

一般的に、ベンチャーキャリアで成功する場合、以下の様な可能性が思い浮かぶ。

(1)現在働いているベンチャー企業で出世する
(2)他のベンチャー企業に転職し出世する
(3)私費留学でキャリアをリセットする
(4)起業・独立で成功する

①現在働いているベンチャー企業で出世する

ベンチャー企業は社員数が少なく、経営者との距離は非常に近い。
このため、頑張って働いて、経営者から評価された場合には、大企業では考えられないスピード出世も可能である。例えば、入社後2-3年で取締役やCXOに抜擢されることも有り得るだろう。

もっとも、取締役やCXOといってもタイトルだけの話であって、給与的にどれくらい上昇するかはその企業の業績や財務状況次第である。

また、ストック・オプションを付与されれば、IPOが出来た場合には数千万円~数億の現金を得ることも有り得るだろう。但し、IPOまでたどり着く可能性は非常に低い。

社内で頑張って出世を目指すこと自体は結構なのだが、それによって報われるかどうかは、そのベンチャー企業の業績が非常に大きく、その点は自分の力だけではどうしようもない。

そのベンチャー企業の将来性、ライバル企業の動向等を見て、今の会社で働き続けた方がいいか、或いは、他のベンチャー企業に転職した方がいいのか見極める必要がある。

なお、ベンチャー企業に新卒入社或いはジュニアポジションで転職した場合、自分が実績を出していても、突然、他の会社から幹部が採用され自分の上司になるリスクがある点には留意が必要である。

②他のベンチャー企業に転職する

自分が新卒・転職で入ったベンチャー企業が、たまたま、その後非常に成長するという確率は必ずしも高くはない。

このため、より成長できそうと考えられるベンチャー企業に転職するというキャリア上の選択肢がある。実際、ベンチャーキャリアにおける勝ちパターンとしては、このタイプが多いのではないだろうか?

ある程度ベンチャー企業で働くと、狭い社会なので、ベンチャー企業の噂や情報が耳に入って来る。また、Green、アマテラス、Wantedlyといったエージェントやアプリに登録すると、数多くのベンチャー企業の転職情報が収集できる。常時非常に多くの案件がある。

転職すると、今の条件よりは良い条件が期待できるので、現状よりもキャリアアップを図ることは十分可能だろう。

ただ、この場合、「ベンチャーの沼」に陥らないよう留意する必要がある。
大企業や外資系企業の場合には、転職を重ねることによって、どんどん年収やタイトルを上げて行くことは可能だが、ベンチャーの世界だと、昇格は別として、昇給には限度がある。何度もベンチャーの世界の中で、何度も転職をしても、大きなジャンプを達成できないまま終わってしまうことがある。これがベンチャーの沼という現象だ。

もちろん、どこかのタイミングでストック・オプションをもらって、それが行使できればいいのだが、それを期待するのはあまりにも楽観的と言えよう。

③私費留学でキャリアをリセットする

これはベンチャー企業勤務者に限った話ではないが、一般的に私費留学というのは非常に有力なキャリアリセットの方法だ。

それまでの職歴・スキルに関係なく、欧米アジアの一流のビジネススクールを卒業すると、外資金融、外資IT、国内系一流企業等への就職が可能となる。

最大の問題点は留学費用がかかることであるが、私費留学を狙うほとんどの人は奨学金やローンを利用する。私費留学の場合、留学前に十分な資金を持っているケースは少ないからだ。欧州やアジアのMBAには1年コースもあるので、相対的に低い予算と短い期間でキャリアチェンジをすることも可能だ。

これに対し、海外に私費留学するのはあまりにも大変なので、国内MBAはどうかと聞かれることがある。国内MBAには、全日制と夜間コースとがあるが、夜間コースの場合は転職を想定したものではないので転職に関するサポートを学校はやってくれない。他方、全日制の場合は、一旦会社を辞めて入学することが前提となっているので、ある程度就職のサポートの期待ができる。

この場合、学部と同様、就職力の高いMBAを選択することが重要で、慶應、早稲田、一橋あたりが望ましい。そうすると、海外のトップスクールには全く適わないが、それなりの一流企業に就職できる可能性は十分ある。興味があれば、各校の説明会に足を運ぶといいだろう。

<国内MBAからの転職、年収アップについて>
https://career21.jp/2019-10-18-131646/

④起業・独立で成功する

ベンチャー企業のキャリアの王道の成功パターンはこれである。
ベンチャー企業で培った経験やスキルは、自らの起業・独立に活かすことが理想である。

別に起業と言っても、IPOを目指すような大げさな話ではない。
自分が100%株主、それ以外の従業員がゼロ、オフィスは自宅、借入ゼロで全然構わない。別に会社を当初から起ち上げる必要は無く、フリーランスとしての個人事業者スタートでも構わない。

職種については、自分のベンチャー企業での経験を踏まえて、将来最も稼ぎやすいと思う分野で構わない。中には、ベンチャー企業時代のクライアントから独立時には仕事を発注すると言われたケースもあるが、基本的に自分自身でコツコツと拡大して行くことになる。

独立するには、仕事を受注しないと行けないので、ベンチャー時代に得た人脈・コネ、ブログ・SNS等を通じたweb集客を駆使する必要がある。

良くも悪くも、ベンチャー企業の場合はそれほど高給ではないので、独立するに際しても、発射台は低いと言える。クラウドソーシング的な仕事で当初食いつないでも構わない。この点は、20代でもそれなりの給料をもらえ失うものが多い大企業サラリーマンとの違いである。

大企業にも就職・転職可能にもかかわらず、あえてベンチャー企業を選ぶのであれば、サラリーマンを続けるという発想は捨て、自らが起業・独立することを最終目標とした上でベンチャー企業に行くべきであろう。

最後に ベンチャーキャリアで成功するには、ベンチャーから抜け出すことが必要

ベンチャーの世界でサラリーマンとして成功するのは難しい。
ストック・オプションが行使できるような状況は稀だし、ベンチャーの世界の中で転職しても大企業のような高給は期待できないからである。

結局、自らが経営者になるか、フリーランスとして独立して成功を収めるのがベンチャーキャリアの勝ちパターンである。

実際、起業・独立での成功から逆算した上で、ベンチャー企業を目指す人は少ないと思うが、それぐらいの意欲が無いと大企業を選択した方が良いだろう。

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