1. 東北大学経済学部の基本情報
東北大学経済学部は1949年に設置された、いわゆる旧帝国大学の経済学部であり、難関大学経済学部の1つとされている。
現在の定員は260人であり、経済学科と経営学科の2学科体制である。
2019年入学生に関して、男女比率は、約8:2と圧倒的に男子学生の比率が高くなっている。
https://passnavi.evidus.com/search_univ/0100/department.html?department=020
2. 東北大学経済学部の就職状況
東北大学経済学部の就職先に関する公式HPの開示はあまりよくない。経済学部の場合は、業種別に主要な就職先が紹介されているだけであり、各企業や団体別の就職者数は開示されていない。
2018年度の卒業者数は270人であり、そのうち進学者数は17名である。
法学部の場合は、法科大学院への進学者がいるが、経済学部の場合は基本的にこれが無いので比較すると進学者の割合は法学部よりも低い。
業種別で見ると、就職者の総数は233人であり、そのうち51人が公務員となった。
比率にすると約22%であり、経済系の学部としては、国立・私立を問わずトップクラスに高い公務員比率となっている。
民間企業の業種別シェアは以下の通りであり、金融業と情報通信業のシェアが高い。
金融業、保険業 23.6%
情報通信業 15.5%
製造業 14.2%
その他サービス 3.9%
運輸業、郵便業 3.4%
不動産業、物品賃貸業 3.0%
(出所:東北大学HP 「産業別就職者数」より外資系金融キャリア研究所作成)
具体的な就職先については、以下の通りである(平成30年度卒業生)
金融・保険業 | 野村證券、みずほ証券、SMBC日興証券、日本取引所グループ、みずほFG、りそなホールディングス、日本銀行、日本政策金融公庫、日本政策投資銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、東京海上日動火災、日本生命保険、三井住友海上火災、損害保険ジャパン日本興亜 (他、銀行・保険会社多数)
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公務員 | 経済産業省、裁判所、金融庁、財務省、東京都庁、宮城県庁、茨城労働局、仙台国税局、東北財務局、東北防衛局、東北経済産業局、仙台高等裁判所、自衛隊幹部候補生学校、県立高等学校 (他、県庁・市役所多数)
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情報通信産業 | 楽天、SAPジャパン、DeNA、日本コントロールシステム、NTT東日本、NTTドコモ、宮城テレビ放送、ニッポン放送
他
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製造業 | トヨタ自動車、パナソニック、ヤマハ発動機、IHI、AGC、村田製作所、三菱電機、JFEスチール、JX金属、セイコーエプソン他
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その他 | デロイトトーマツコンサルティング、アクセンチュア、税理士法人、東京地下鉄、東日本高速道路、JR東日本、日本航空、大林組、大成建設、東北電力、カメイ、ルートインジャパン、パーソルキャリア、リクルート、東急リゾートサービス、JTB、三井物産、三菱地所 他
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(出所:東北大学公式HP)
大学のこの開示は各企業への就職者数が示されていい無いので、これが東北大学経済学部の就職先の傾向を正確に示しているかどうかはわからない。
しかし、開示する企業名を取捨選択したのは大学側であるので、少なくとも東北大学経済学部の意図としては、就職先はローカル企業よりもむしろ全国型の大企業がメインであることをアピールしたいのではないだろうか?
例えば、最大シェアの金融機関については、メガバンク、野村證券、東京海上日動火災、日本生命という大手金融機関や、日本銀行、日本政策投資銀行という政府系金融機関を例示している。
地元の七十七銀行にも就職者がいると推測されるが、このリストには例示されていない。
また、製造業においても、トヨタ自動車、パナソニック、AGC、村田製作所、JFEスチールといった人気の最大手メーカーを紹介している。
さらに、デロイトトーマツコンサルティング、アクセンチュア、三井物産、三菱地所という東京の有力校でも人気の総合系コンサル、商社、財閥系デベロッパーを「その他」の項目で例示しているので、大学としては就職力の強さをアピールしたいのではないだろうか?
この点については、ローカル色が強い、他の地方旧帝大の経済学部とは志向が異なるようにも見える。
<北海道大学経済学部の就職と課題>
https://career21.jp/hokkaido-keizai-shuushoku/
<名古屋大学経済学部の就職と課題>
https://career21.jp/2019-03-08-064658/
いずれにしても、東北大学経済学部の場合、旧帝国大学の経済学部というブランドと伝統がある上、民間企業就職者の絶対数が少なく稀少性が確保されているため、大手企業・有名企業への就職は難しくなさそうである。
3. 東北大学経済学部の就職における課題
東北大学経済学部の場合、学部の性質上、法科大学院(予備試験)や公務員試験の強さでアピールするわけにも行かず、民間企業での就職力の強さをアピールする必要があるだろう。
この点、東北大学経済学部の場合は、上記の通り、金融、IT、メーカー、その他サービス業において全国的に人気の高い企業に就職実績を有している。
しかし、少子高齢化が深刻化することは不可避なので、上位国立大学や早慶、MARCH、関関同立等の有力私立大学と競争して優秀な学生を確保するためには、課題はあると言えるだろう。
まず、全般的に外資系企業への就職力の高さがうかがえない。
外銀、外コン(MBB)、外資メーカー(GAFA、消費財系)は非常に内定を取るのが難しいが、少数でも、こういった有力外資系企業の実績を作りたいところだ。
また、国内系金融の専門職コース、総合商社、電通・博報堂といった最難関の企業でのプレゼンスも高める必要があるだろう。
例えば、五大商社への就職者数について見ると、東北大学全体で10名(三井物産4名、住友商事3名、伊藤忠2名、丸紅1名)であり、北海道大学全体の12名よりも少ない。また、最難関の三菱商事についてはゼロ名である。
(就職者数のデータはAERA2019.8.5号「主要50大学の人気企業への就職者数」より)
このあたりは、強化する余地があるだろう。
それから、経済学部であるので、ベンチャー・起業におけるプレゼンスを高める必要があるだろう。東北大学経済学部出身の著名な起業家を輩出したいところだ。
こういった事項を実現するためには、大学だけでなく、OB会のサポートが必要になるだろう。経済学部という限定を付けず、特に在京で成功している東北大学OBや、東北地方の経済界のサポートが望まれるところだ。