序. 早稲田、慶應なのに夏季インターンで苦戦?
①夏季インターンにもいろいろあるが…
日本の大企業の場合、本選考に先立って、大学3年次の夏、秋、冬にインターンを実施する企業が多い。インターンと言っても、1日だけの短期から1週間程度の長期まで、また、会社説明会に近いものから本選考に直結するものまで様々である。
コロナの状況下、心理的な不安も高まっているし、一般的に就活も早い時期から動いた方が有利なので、大学3年次の夏季インターンに挑戦する学生は多い。
当然、夏季インターンに臨む早稲田や慶應の学生は多いのだが、何故か結構苦戦している早慶の学生も見られる。
②苦戦とは?
夏季インターンの選考は、本選考よりも難しいところがあると言われている。何故なら、大学3年次から夏季インターンに挑戦する学生は早くから就活対策を立てている就活強者の学生の割合が多いからとか、夏季インターンの枠がそれほど大きくないため競争率が高いからと言われている。
このため、早稲田や慶應の学生が夏季インターンで苦戦することは想定できるのだが、問題は、その程度である。「とりあえずメガを見ておこう」という学生が多いことから、メガのインターンに落ちるのなら仕方がない。ただ、問題は大手金融機関の子会社であるリース会社やカード会社あたりや、通信キャリア、メガベンチャー、大手メーカーあたりも全滅するケースである。
そうなると、当然、秋季や冬季インターン、そして、来年の本選考は大丈夫かと不安になるものである。
コロナウイルスの問題によって、それほど大きな変化は就活市場には生じていないという見方もあるが、コロナ前と比べて採用難易度や選考基準に微妙な変化が生じている可能性もある。
従って、夏季のインターンで苦戦した場合には、まだまだ時間的余裕はあるので、その苦戦した理由を分析し、秋季インターンが始まるまでには対策を立てておきたいものである。
1. 本選考で就活無双する学生と内定を取れない学生との違い
就活において、業種に関係なく内定を取りまくる学生がいる。例えば、商社、金融専門職、電通・博報堂、三井不動産・三菱地所あたりから全て内定を取るような学生である。他方、最近では、早慶クラスでもメガバンクや大手事業会社に全落ちしてしまう学生もいる。
企業の採用担当者の中には、採りたい学生とそうでない学生との格差が拡大してきているという人もいる。
その格差の原因は何であろうか?
もちろん、同じ早慶の学生でも、スペック、要するに、帰国子女/留学経験、有力体育会、起業経験等によって就職力は異なって来るだろう。しかし、そういったハイスペックの学生は一部に過ぎない。
また、ここで問題としたいのは、商社、金融専門職、MMデべのような難関企業から内定を取れないことではなく、メガ以外の大手行や、リース、カード等の大手金融機関の子会社、業界中位の生損保の夏季インターンに全落ちするようなケースである。そういったところは、早慶クラスであれば、普通は落ちないだろうという期待があるので問題となるのである。
インターンではなく、就活で苦戦する一般的な理由としては、以下のものがあげられるだろう。
①就活開始時期が遅い
②幅広い業界に挑戦していない
③OB訪問/会社説明会への参加を積極的に行っていない
④マスメディアやSNSを通じた情報収集を積極的に行っていない
⑤企業研究が不十分
⑥ESの文章力や面接でのプレゼンテーション能力が低い
以下、上記項目について、就活本選考ではなく、夏季インターンのケースにフォーカスして考えていきたい。
2. 早稲田、慶応の学生が夏季インターンで苦戦する理由
①夏季インターンの準備開始時期が遅い
どんなことでも早くから準備をした方が有利なのは当然であるが、外銀・外コンのように3年生の時に本選考が行われる業界を除くと、夏季インターンを目指して就活を開始するのであれば、それは就活開始時期としては遅くはない。
ただ、夏季インターンの場合は、比較的早くから準備をする学生同士の競争なので、当然、早くから準備をした方が有利なのは本選考と同様である。
夏季インターンについては、大学の期末試験とタイミングが重なるので、単位の取得状況や選択した講義の負担によって、準備に充てることができる時間が違ってくる。この点は予め想定しておくべきだろう。
もっとも、準備時間が足りなかったことが主な敗因であれば、秋季や冬季に向けて時間をかけて準備をすればいいだけなので特に問題は無い。ただ、準備時間はそれなりにあったにも関わらず、不本意な結果に終わった場合には、原因をしっかりと見つけて対策を建てる必要がある。
②幅広い業種に挑戦しているか
一般的には、浅く広くカバーしようとするよりも、範囲を絞ってそこにフォーカスする方が戦略的には有利なはずである。
ただ、難関企業に内定した学生は、何故か他業種に亘って内定をとりまくっていることが結構多い。
これは、学生はビジネス経験が無いので、幅広い業界を調べた上でその業界の人の話を聞くことによって、ビジネスセンスが磨かれるのかも知れない。例えば、金融志望の場合でも、金融機関の顧客はメーカーやサービス業者であったりするし、DXが重視される環境下、IT業界に詳しい方が望ましい。
また、一口に金融機関と言っても、銀行、信託、証券、アセマネ、生損保、リース、カードまでいろいろある。大手金融機関の場合は傘下に様々な金融子会社を有しているし、業界の正確な理解をするためには、近接業界にも関心を持っておいた方が望ましい。
さらに、幅広い業種に挑戦しようとすれば、その分スケジュールはタイトになるが、それに慣れると就活筋力的なものが鍛えられ、一部の業種・企業に早い段階から絞ってのんびりと準備をしている学生と比べて、集中力やモチベーションで勝てるという見方もできる。
志望業種を拡げ過ぎるのはリスクでもあるので、バランスが難しいところだが、夏季インターンの段階で業界・企業を絞り過ぎて失敗した場合には、もう少し業界を拡げることによって、視野を拡げたりビジネスセンスを磨いたりすることも狙ってみてはどうだろうか。
③OB訪問や会社説明会の参加に消極的である
このタイミングでのOB訪問は評価の対象にならないインフォーマルなものであることが多い。だからこそ、早い段階で積極的にOB訪問を行い、業界の知識を深めたり、社会人と会話をすることによって面接やプレゼンの強化を図ることは有用である。
また、会社説明会は、非効率であるという意見もあるが、時間があるのであれば積極的に参加するのも悪くはない。ただ、就活専用ホムペや会社パンフレットを眺めているよりも、吸収できることは多いはずだ。特に、IR情報を熟読した上で会社説明会に参加をすれば、その理解度は違ってくる。
もっとも、夏季インターンの段階で、OB訪問が不十分という理由だけで全落ちするということも考えにくい。他にも、以下のような理由があるはずなので、その原因を広くチェックしておきたい。
ただ、秋季や冬季インターンで挽回を図る上で、会社説明会への参加を積極化したり、意図的にOB訪問を数多く行って業界・企業の理解度を高めたり、プレゼンのレベルを上げるということは有用であろう。
④マスメディアやSNSから十分な情報収集を行っていない
早稲田や慶應の場合、就活力が最も高いのは内部生だという。その理由の1つとして、強固なネットワーク力を通じた情報収集能力が指摘される。
就活は情報戦でもあるので、情報収集能力のレベルが就活の結果に直結するのは当然であろう。
そういった特殊な人的なネットワークが無くても、マスメディアやSNSのような公開情報からでも十分有用な情報を入手することは出来る。
この点については、以下のブログの過去記事でまとめてあるのでご参照下さい。
<就活生の情報収集>
https://career21.jp/2020-01-16-121414/
もっとも、地方の学生ではなく、早慶で夏季インターンへの参加を考える様な学生は、特に情報収集に問題があるとも思えない。情報収集が不十分なことも敗因の1つになっているかも知れないが、他の原因もチェックした方が良いだろう。
⑤企業研究が不十分
企業研究は非常に重要だ。何故なら、企業研究の深さは、志望動機に直結するものであるし、業界の知識が弱いと本選考ではモチベーションの強さが伝わらない。また、学生によるレベルの差が出やすいところであり、徹底した企業研究を行うとスペックの弱さをカバーすることも可能である。
それでは、どういった企業研究をすればいいかということについては、こちらのブログ記事にまとめたのでご参照下さい。
<MARCHから商社に内定した就活生が教えてくれた企業研究の方法>
https://career21.jp/shukatsukigyokenkyu/
ただ、一般的に、夏季インターンと本選考を比較すると、志望動機はそれほど重視されないと言われている。実際、就活生に話を聞いても、業界知識やスキルに関する細かい突っ込みはあまりされなかったようだ。
その理由としては、3年生の夏だと志望業界や職種を絞り切っていなくても不思議ではないので、この段階で企業は、志望動機(フィット感)よりもガクチカ(学生のポテンシャル)に重点を置くからである。
そう考えると、企業研究は重要であるが、夏季インターン時点では企業の評価におけるウェイトは低いだろうし、この段階ではそれほど学生間の格差は無いのではないか。
そうであれば、企業研究の巧拙が夏季インターンで苦戦した決定的な理由にはならないかも知れない。
⑥ESにおける文章力や面接におけるプレゼン能力の問題
私はブログやSNS、また、OB訪問等を通じて、早慶や旧帝大等の有力国立大学の学生から夏季インターンのESに関する相談を受けたが、最も問題と感じたのはESにおける文章力である。
ガクチカや自己PRの中身の大きさではなく、文章力に大きな差が生じていると感じた。学歴は同じ早慶で、ガクチカは似たり寄ったりのバイトの話であっても、文章がわかりやすく自然な文体で書かれているESと、全体的に文章が長く何が言いたいのか何度も読み直してもわからないESとがある。
わかりやすいESの学生は、普通のガクチカでの金融機関、コンサル、メガベンチャー等、夏季インターンは全勝であった。他方、文章がわかりづらいESの学生は、大手金融機関だけではなく、中位金融機関や金融機関の子会社等も全落ちであった。
文章力、読みやすいESか否かというのは自分では意外と気付きにくい。早慶なのに夏季インターンで苦戦したのであれば、ESの文章力にも問題があると考えて早めに社会人や難関企業に内定した先輩に見てもらった方がいいだろう。
面接におけるプレゼン能力についても、ES以上に差が開く原因となる。これについては、長くなるので別途改めてまとめたい。
ただ、私が相談を受けたケースでは、早慶からは特に難しくないと思われるレベルの企業にES段階で落ちたケースがちらほらあった。その場合は、面接におけるプレゼン力ではなく、ESに問題があることが明らかなので、早期の是正が必要であろう。
3. 早慶だから、このレベルの企業は滑り止めだと軽く見ていないか?
この項目はスキルではなく、精神論的なものなので上記2の①~⑥とは分けて書くことにした。
早慶だと、メガバンク、証券会社、大手生損保のオープンコースだと、内定を取れても特にうれしいわけではないだろう。そして、業界中位レベルの金融機関や、リース、カードのような大手金融機関の子会社、大手地銀、B to B系の大手メーカー、通信キャリアあたりだと、内定を取れて当然と思っていないだろうか?
実は私もコロナ前まではそう思っていたのだが、21卒、22卒については、早慶や旧帝レベルでも、そのあたりの企業から内定を取れないケースが散見されるようになった。
コロナの就活に対する影響は、特定の業種を除くと、それほど大きくはないという見方もあるが、少なくとも易化はしていないだろう。やはり、コロナ前と比べるとある程度は難化しているのではないか?
そうした状況において、「これぐらいのレベルの企業であれば内定を取れて当然だ」「本命ではないのでさっさと内定を出してくれ」「あんな先輩でも内定を取れた」という風に思っていると、それは態度や発言にも表れるものである。経験豊富な採用担当者からすると、そういったものはすぐに見抜かれてしまい、決定的な減点をされかねない。
精神論的で申し訳ないのだが、本命ではないランク下の企業であっても、「コロナ後は難化したので油断できない」と考えて全力で臨むべきであろう。学歴、スペック、能力ではなく、こういった内心の問題だけで内定を取り損なうのは非常に勿体ない。
4. 秋季・冬季インターンに向けて採るべき対策
夏季インターンで苦戦したとしても、就活スタート時期としては必ずしも遅くはなく、今から適切な対策を取れば秋季・冬季のインターンには間に合うはずである。
対策としては、前述の全ての原因をチェックして改善すればいいのだが、特に以下の2点は実行することをお勧めしたい。
①ESの文章力のチェックと改善
今から大きなガクチカを作ることは難しいかも知れないが、早慶レベルの学生であれば、ESの文章力を改善することは難しくないはずだ。
そのためには、他の人に見てもらう必要がある。夏季インターンに無双した同期、難関企業に内定した先輩、成功している社会人等に是非チェックしてもらおう。
あるいは、お金に余裕があるのであれば、就活塾を使うのも構わない。ESの文章力を磨くと、面接でのプレゼン能力の向上にも繋がるので、是非文章力を強化しておきたい。
<就活塾に関する過去記事>
https://career21.jp/shuukatsujuku/
②プレゼン能力の向上や弱点発見のための積極的なOB訪問の実行
早慶でESを通過できたとしても、面接を突破できないと内定は取れない。そして、面接の結果を大きく左右するのがプレゼン能力である。プレゼンも練習しないと上手くならないので、積極的なOB訪問の実行が重要だ。社会人との会話に慣れる必要がある。
また、本命でなくとも内定を取っていくことも重要だ。最初はベンチャークラスでもいいので、内定を取れると自信も付くし、精神的にも落ち着くことができる。また、実際の面接をこなしていく過程で自分の弱みを発見することもできる。
特に、夏季インターンでESの段階で落とされてしまった場合には、面接を経験していないので何が原因だったかを把握しにくい。従って、対象先を拡げるみるべきだろう。
最後に
5~6年前の好況期と比べると、メガバンクの新卒採用者数は1/3以下になっている。また、コロナ問題によって、特定の業種については大打撃を受けたため、そこから他の業界に流れてくる学生もいるだろう。いずれにせよ、早慶や旧帝クラスの学生だと、従来は楽勝と思われた企業でも、コロナ後の状況は異なっている可能性がある。夏季インターンで苦戦したても、今から問題点を抽出し適切な改善策を取れば、秋季・冬季インターンでは挽回可能なので、自信を失わずに、対応すればいいだろう。