早稲田、慶應からのコンサル(戦コン・総合コンサル)就職について

序. 早稲田、慶應の学生からのコンサル人気は高いが…

早稲田、慶應の学生からのコンサル人気は高い。
もっとも、コンサルといっても、MBBに代表される戦コンと、アクセンチュアやアビームに代表される総合コンサルとでは、業務内容も就職難易度も大きく異なる。

早慶の就活生の上位層は、外銀、商社に加えて、戦コンもターゲットに加えるのだろうが、果たしてその戦略は正しいのか?

また、早慶からの就職先企業上位に複数の総合コンサルが入っているが、総合コンサルへの就職状況や課題等について見て行きたい。

1. 早稲田、慶應からのコンサルへの就職の現状

①総合コンサルへの就職状況

早稲田、慶應の両校ともに就職に関する開示が非常に良い。上位就職先企業だけでなく、早稲田の場合は就職者が5名以上の企業、慶應の場合は就職者が3名以上の企業を、全て学部別に開示してくれるので非常に便利である。

21卒の就職状況にについて、両校とも2021年7月中に開示をしてくれたので、以下これをソースとして検討する。

<早稲田大学の21卒の就職状況>
https://www.waseda.jp/inst/career/assets/uploads/2021/07/2020careerdata.pdf

<慶應大学の21卒の就職状況>
https://www.students.keio.ac.jp/com/career/service/date.html

早稲田、慶應からの21卒の就職状況をまとめると以下の通りである。
なお、総合コンサルというのは、ここでは、アクセンチュア、アビームコンサルティング、ベイカレント・コンサルティング、Big 4系コンサルティングに限定することとした。FASや監査法人は含めていない。

<早稲田、慶應からの総合コンサル企業への就職者数(21卒)>

企業名

早稲田

慶應

アクセンチュア

64

70

アビームコンサルティング

35

35

ベイカレント・コンサルティング

29

21
デロイトトーマツコンサルティング

28

40

EYストラテジー・アンド・コンサルティング

24

38

PwCコンサルティング

17

47

KPMG

7

6

合計 204

257

(出所:早稲田大学、慶應大学の公式HPを基に外資系金融キャリア研究所が抜粋)

なお、これは大学院も含めた全学部からの就職者数である。
早稲田の全就職者数は8153人なので、この7社のシェアは2.5%、慶應大学の全就職者数は5544人なので同シェアは4.6%である。特に慶應大学における総合コンサルのシェアは非常に高いと思われる。

②戦コン(戦略コンサルティングファーム)への就職状況

ここでは、戦コンとは、マッキンゼー、BCG、ベインのMBBに加え、ATカーニーとローランド・ベルガー、アーサー・D・リトルの6社を対象とすることとする。

21卒について、両校の上記ソースを参考に抜粋すると就職状況は以下の通りである。

<早稲田、慶應からの戦コンへの就職者数(21卒)>

企業名 早稲田 慶應
マッキンゼー NA 4
BCG(ボストン・コンサルティング・グループ) NA 3
ベイン・アンド・カンパニー NA 3
A.T.カーニー NA NA
ローランド・ベルガー NA NA
アーサー・D・リトル NA 3

(出所:早稲田大学、慶應大学HPより、外資系金融キャリア研究所抜粋)

総合コンサルと比較して、早稲田、慶應からの戦コンへの就職者数は非常に少ないことがわかる。早稲田の場合は4人以下、慶應の場合は2人以下の就職先については開示の対象外なので、この点は不明である。このため、早稲田から上記6社については最大4名ずつ就職している可能性はある。

2. 早稲田、慶應から戦コンを目指すことについて

自信家の就活生が「戦コン目指しているんだ」と言うかも知れないが、現実的には、戦コンから内定を取れる可能性は非常に低い。大学院も含めた全学部からの就職者数合計が5000人を超える両校から、戦コンに就職したのは僅か十数名程度である。

元々、戦コンの新卒採用者数は非常に少なく、せいぜい片手位の時代が長かったが、近年では採用者数を増やし、マッキンゼーやBCGでは30-40人位の新卒採用枠があるという。ただ、この世界は今でも東大、特に理系が強いのであろうか。

早稲田、慶應から真剣に戦コンを目指す場合には、YC塾とか外資就活アカデミアのような選抜コミュニティに入るか、戦コンに実績のある就活塾を利用するほかないのかも知れない。

<文系の就活生がマッキンゼーから内定を取るのは不可能なのか?>
https://career21.jp/2019-08-22-140957/

もっとも、早慶で、外銀や商社を目指すトップ層の学生が戦コンを併願することは、意味がないことはない。何故なら、東大等の戦コン狙いの優秀層と接して刺激を受けることが出来るし、また、戦コン対策におけるロジカルシンキングやケース対策は有用だからだ。

それに、戦コンは何時でも中途採用を行っているので、就職後やMBA留学後にもチャンスはあるので、新卒に拘る必要は無いだろう。

3. 早稲田、慶應から総合コンサルを目指すことについて

①業務内容に本当に納得できるか?

コンサルと言うのは非常に響きがいい。コンサルと言うと、何となく、戦略コンサルのイメージが浮かぶ。

総合コンサルの場合、業務の大半はITコンサルだということは、今では、ほとんどの学生は理解しているだろう。それでも、コンサルと聞くと、少しでも戦略系の仕事にも従事できるのではないか、或いは、将来的には戦略がメインの仕事に就けるのではないかという期待が生じる。

実際、採用側である総合コンサル企業も、このことはよくわかっているので、採用ブランディングとしては「コンサル」のイメージを強調しているようだ。

ただ、戦略の仕事のイメージや憧れが強いままで、総合コンサルに就職すると、自分の思いと実態とのギャップの大きさにがっかりする場合も少なくないようだ。この点については、メインであるITコンサルとか業務コンサルの具体的な仕事内容をOB訪問等で十分把握して、就職する必要があるだろう。

また、ITコンサル業務がメインであるので、プログラミング等のITスキルが求められるし、そういったスキルがある方が働く上で有利だ。プログラミングに関する社内研修を実施してくれる企業が多いようだが、プログラミングの習得に抵抗感がある文系学生はよく考えた方がいいだろう。

このあたりについては、以下のアビームコンサルティングに関するブログ記事をご参照下さい。

<【年収チャンネル】アビームコンサルティングの登場回>
https://career21.jp/abeamconsulting/

②2社目以降のキャリアプランは明確か?

コンサルティング業務は業種の違いに関係なく有用なスキルである。
また、IT系のスキルも今どの業界でも非常に求められている。このため、就活段階でやりたいことが明確でない場合、「とりあえずコンサル」に行けば転職力が高いため、やりたいことが見つかってから転職すればいいという考えがある。

確かに、総合コンサルに就職した場合、金融や商社よりは転職が可能な業界は広いかも知れない。しかし、それは自分の希望する業界・企業に転職が可能な転職価値を付けられることを意味しない。

例えば、総合コンサルで3~5年働いたところで、IT系の高度な専門スキルが無いと、外資IT、金融、商社への転職は容易ではない。

もっとも、とりあえず上場企業ということであれば、IT部門や企画部門での転職は可能だろう。しかし、そういった企業では年収1000万円到達は早くても35歳以降か、スピード出世で管理職に引き上げてもらうことが必要だろう。それならば、就活の段階で大手金融機関か高給の事業会社に就職しておいた方が良かったということになる。

総合コンサルから年収水準を落とさずに転職しようと思えば、同業他社に転職するのが現実的であろう。今はDXブームの影響もあり、同業他社に転職すると年俸アップも十分可能らしい。ただ、この場合には職種やスキルを転換することにはつながらない。

③総合コンサルの大量採用は将来、市場価値の下落につながるおそれも…

上記のデータの通り、総合コンサルは早慶を始めとする有力校から大量採用を継続している。また、新卒だけでなく、中途採用でも様々な業界から大量採用をしている。DXブームはまだしばらく継続しそうであるが、これだけ総合コンサルの若手の人材のストックが増えていくと、供給過多ということで、将来転職市場における価値の大幅な低下にもつながりかねない。一旦市場価値が下がり始めると、その過程で抜け出すことは難しいので、このリスクを踏まえて、スキルを磨いたり、迅速な転職が出来るよう密なコンタクトをエージェントとしておくことが必要となろう。

最後に

コンサルと言っても、戦略コンサルと総合コンサルとでは、就活難易度、業務内容、入社後のキャリアプランが大きく異なる。

戦略コンサルへの就職者は、早慶からでも非常に少なく、本当に戦略コンサルに行きたければ転職やMBA留学も視野に入れた方がいいだろう。

他方、総合コンサルへの就職者は非常に多く、将来の人材の供給過多が懸念される。「とりあえずコンサル」という発想はリスクが高く、セカンドキャリアのオプション等を十分吟味しておきたい。

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