総合コンサルの若手社員の生活、スキル、転職(キャリアプラン)について

序. コロナ以降、総合コンサルのキャリアにも変化が?

新卒採用、中途採用において、もっともプレゼンスが高いのは総合コンサル業界ではないだろうか?非常に積極的な採用活動を継続していたため、人材の供給過多が不安視されていたが、コロナ以降にDX化が加速し、今ではコロナ前以上にビジネスは好調で採用活動も強化している。

また、ワークライフバランス(WLB)とは無縁の、とにかく仕事がハードな業界かと思われていたが、働き方改革の影響も無くはなく、多少は緩和されているようだ。

東大、早慶等のトップ校や、一流企業の若手の総合コンサル業界に対する関心は高く、私もこのブログやTwitterで情報発信をしてきたが、昨年秋以降に、エージェントや若手社員から情報収集することができたので、若手社員の現状についてアップデイトしたい。

1. 若手社員と勤務時間

MBB等の戦コンと比べるとマシかも知れないが、総合コンサルもハードワークは当然で残業は軽く月に100時間を超す世界かと私は認識していた。

しかし、働き方改革の流れもあり、以前よりは働きやすくなっている模様だ。
例えば、ある入社4年目の若手総合コンサル社員の場合、帰宅時間の平均は8~9時位だという。(月に60~70時間)。但し、プロジェクトベースでの勤務なので、忙しい時は12時近くまで連日働く時もあるが、プロジェクトが落ち着いたときは定時近くに帰れる場合もあるという。

もちろん、働いている間の緊張感、集中度は、一般的な国内系大手企業よりもハードである。また、上司の評価も辛く、「もう帰っていい」とか「0点の仕事だ」という厳しいことを言われることもある。

ただ、よほどのハードワーカーじゃないと無理という世界では無くなってきている感もあるようだ。

2. 若手社員の年収

初年度は年収550~600万スタートであるが、1ランク昇格してコンサルタントになると、年収が増える。ある入社4年目の社員は年収が800万円を軽く超えているという。また、一般的に経験者として同業他社に転職すると年収は跳ね気味で、シニアコンサルタントとして転職すると年収1200~1300万もあるという。20代でこの水準になると5大商社クラスである。これは最近の順調なビジネス環境と人材難に起因するものであるが、オープンワークとかwebに出ている年収情報より1-2割位高い場合もありそうだ。どの業界でもそうだが、本当にもらっている人はあまり口外しないものなので。

また、業界内でもベイカレントは給与水準が高いことで知られている。
ネームヴァリューの弱さを年収で補わないと採用できないからだろう。マネージャークラスになると年収2千万で引き抜かれるケースもあるという。

以前は、仕事がハードな割には年収水準はメガとか大手金融機関クラスだと思われていたかも知れないが、給与水準については大手金融機関を上回り、5大商社に迫ってきているのではないだろうか(もちろん、総合コンサルの世界は年功序列・終身雇用の世界では無いので、単純に金融や商社とは比較できないが…)

3. 総合コンサルからの転職事情

転職エージェントや若手の総合コンサルから情報収集したところ、総合コンサルからの転職事情も、私が認識していたよりも全般的に良くなってきているようだ。

総合コンサルの場合、終身雇用というのはほぼ有り得ない。
5年以上継続して在籍する社員は、少なくとも半分もいないであろう。従って、総合コンサルでは転職を前提としたキャリアプランを用意しておく必要がある。

それでは、どういうところに転職するかというと、約7割位が広義のコンサル業界に転職するということだ。半分くらいは総合コンサルの同業他社ということであるが、注目すべきは戦コンへの転職者も一定数いるということだ。以前は、総合コンサルから戦コンへの転職というのは非常に例外的であったが、DXのスキルと実績を有する人材に対する評価が高まり、総合コンサル内で上位2割以内位の優秀層であれば、戦コンへの転職の可能性は十分あるということだ。

あと、少々マニアックな話になるが、(広義の)コンサルには、マーサーの様な人材系、FASあたりも含まれるようだ。

2~3割は事業会社に行くということであるが、転職先の傾向を聞いて、私の認識が変わった。というのは、以前は、総合コンサルから事業会社というのは、総合コンサルでドロップアウトした人が大したスキルも無く、給与が下がりキャリアダウンするというイメージであった。しかし、最近の話を聞くと、必ずしもそうではなく、キャリアップ或いは少なくとも現状維持位の転職をしている人が多そうだ。

その理由としては、一定数はSAPとかAWSとかマイクロソフトといった外資系に転職するからである。そうであれば、年収水準は維持或いは上昇させることが可能だ。

また、国内系事業会社の場合でも、ファーストリテイリング、リクルート、CAや楽天等のメガベンチャーに行くケースが結構あるようだ。そうであれば、年収の維持も可能だ。また、日立や富士通等のIT系の部門に相応の待遇で行くケースもあるという。

事業会社への転職のポイントは、どういった部門に行くかということだ。最近では、DXやIT系の部門が多いということだが、そうであれば、キャリアを積み上げることができる。他方、単なる経営企画とか財務経理系の部門であると、総合コンサルで培ったスキルや強みがそこで途絶えてしまう。

従って、年収が維持され、かつ、DXやIT系の部門への転職であれば、事業会社への転職は決してキャリアダウンとは言えないであろう。

それから、話を聞いて面白いなと私が思ったことは、ベンチャーとか起業独立のための転職者は1割以下と、イメージよりも少ないことだ。この点は、ITビジネス周りに強いからか、ベンチャーに行っても儲からないとか、起業で成功するのはそんなに簡単ではないと冷静に見ているからかも知れない。ただ、起業というよりは、ある程度経験を積んでスキルが付けば、フリーランスとして独立する人は一定数いるようで、その方が堅いということである。

4. スキルについて

総合コンサルの場合、基本的に英語力はつかない。
何故なら、英語関連のプロジェクトにアサインされない限り、英語を使う機会は特に無いからだ。また、中途半端な英語力ではプロジェクトで力を発揮できない。

他方、戦コンと同様にプロジェクト単位での業務なので、プロジェクト遂行能力は磨かれる。また、非常に評価が厳しい競争社会なので、仕事の取り組み方や仕事の質に対する拘りは磨かれるという。

もちろん、論理的思考力、プレゼン能力、資料作成能力といった点は当然鍛えられる。

但し、こういったスキルは一般的なものなので、キャリアップを図るには、特定の詳しい業界やスキルをプロジェクトや自習を通じて磨いていく必要はある。

まとめ

コロナ後の3年間で、総合コンサルを取り巻く環境はかなり好転しているようだ。
業務の大変さは(多少は?)緩和され、年俸水準は上昇し、活躍できる舞台は拡がって来ている。

それでも、国内系の大手企業と比べると厳しい世界であることには変わりがなく、誰にでもお勧めできる業界ではないが、ハードワークが平気で、アップサイドを目指す執念があれば、結構面白い業界になってきているのではないだろうか。

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