序. ほとんど全ての学生はガクチカでお悩みの様だが…
就活のESや面接での定番アイテムがガクチカだ。留学経験、有名体育会の幹部、IT関係の学業やスキル、起業体験といった大きなガクチカを持ちたいところだが、現実的にはなかなか難しい。
しかし、バイト、サークル、ゼミといったありふれたガクチカでは他の学生との差別化が難しく、商社、デべ、広告代理店といった難関企業の内定は難しいのではないか?
こういった悩みを持つ学生は多いだろう。
1. バイトのガクチカでMARCHの学生が商社から内定なんて本当?
総合商社、特に5大商社の難易度は非常に高い。21世紀以降、5大商社の人気は高まっているのだが、コロナ以降は更に難化したのではないか?
5大商社の内定者というと、大学は東大、京大、一橋、ガクチカは帰国子女/留学経験、体育会、学業優秀のハイスペックな学生がイメージされる。しかし、毎年、非留学/帰国、非体育会、非起業実績の、これという大きなガクチカを持たないMARCH生が5大商社から内定を勝ち取っている。
その事実は、大きなガクチカを持たない大半の学生にとっては非常に勇気づけられるものである。この点に関し、MARCHから普通のバイトのガクチカで商社に内定した学生から話を聞けたので、そのポイントについて以下で紹介したい。
2. ガクチカだけでなく、他のことでも頑張る必要がある
もちろん、バイトのガクチカだけで誰でも簡単に商社から内定を取れるような上手い話は無い。就活の判断材料としては、学歴、スキル(英語、会計系資格等)、企業研究の深さ、文章力/プレゼン能力といった多くの要素があるので、他の項目も十分に頑張る必要がある。そうじゃないと、より高学歴でハイスペックな学生に勝てないのは明らかだ。
従って、商社等の難関企業に本気で内定したいのであれば、英語ではTOEIC800以上は取っておきたいし、十分な企業研究を実践するための会計的な知識、プレゼン能力を高めるための豊富なOB訪問等の対応が求められる。
3. バイトのガクチカでどうやって差別化できるのか?
①そのガクチカの向きは、自己PRや志望動機の向きと同じか?
ガクチカの大きさで勝負できないなら、論理性・一貫性は万全にしたい。
ES、面接の定番アイテムというと、ガクチカの他に自己PRと志望動機があるが、これらに論理性・一貫性が無いといけない。また、たとえ小さなガクチカであっても、論理性・一貫性を備えていると、賢く見えるし、説得力もあるものだ。
基本的な話であるが、志望動機は自分が「将来」やりたいことである。そして、自己PRは自分が「過去(現在も含む)」にやってきたことである。ガクチカは現在(大学入学から現在まで)やっていることである。したがって、論理性・一貫性という難しい話でなくとも、自己PR⇒ガクチカ⇒志望動機という流れで、少なくとも「向き」は同じ方向を向いていなければ説得力はない。
このため、ありがちな志望動機で、「日本企業のプレゼンスを高めたい」というのがあるが、大抵は上手く行かない。何故なら、学生の段階で現在や過去に「日本企業のプレゼンスを高める」様な活動は成しえないからである。そういったものは採用担当者から見て、いかにも適当に作ったきれいごとの作文であると受け止められる。(なお、過去の内定者のES例の中にはこういったものも散見されるが、それは高学歴・ハイスぺの学生のものであって、志望動機やガクチカの内容が評価されたものではない。この点が、過去のES例を参考にしにくいところである。)
ガクチカ、自己PR,志望動機の向きを同じにするとは、志望動機から逆算するとそれほど難しいものではない。例えば、商社の志望理由が「将来経営者になりたい」というのであれば、自己PRやガクチカも「経営者になる」ことをうかがわせるものにすれば良い。自己PR、要するに自分の過去については、親族が会社や個人商店を経営していたエピソードや、自分が事業経営に興味を示していたエピソードを交えれば良い。ガクチカについては、別に起業体験や実績が無くても構わない。飲食店の平凡なバイトであっても、それが経営者としての視点を示せれば良い。ありがちな自分が頑張って、メニューを変えて売上を増やしたことをアピールするのではなく、経営者の視点でどういうことを感じて問題意識を持つに至ったのかを示せればいいのだ。そして、学業実績においても、経営やマーケティングに関する講義において、どういった経営に関する知識や視点を持つに至ったかについて言及すればいいのである。
大抵の学生は、小さいガクチカに不安やコンプレックスを感じているからか、それを如何にして膨らませることばかり考えているのではないか?そうだからこそ、「向き」に拘った構成にすれば、他の学生に対して差別化のチャンスは大いにあるのである。
②そのガクチカに個性、オリジナリティは表れているか?
応募する企業の難易度が低いのであれば、ガクチカ、自己PR,志望動機で無理をする必要はなく、ありふれたコピペのESでも内定は取れるのかも知れない。
しかし、商社、デべ、代理店といったところは競争率が非常に高く、早慶以上の学歴であっても、平均点だと内定は取れない。他の学生とは異なる個性やオリジナリティを伝えることができないと内定は難しい。
また、将来はどうなるかはわからないとは言え、日本の大企業は終身雇用を前提として新卒採用を行っているので、学生の本当の姿、個性を知りたいものである。
このため、ガクチカにおいては何らかの個性やオリジナリティを発揮できるよう意識する必要がある。
よくある塾のバイトだと、学歴は早慶であっても、内容は非常に似通っている。書くことと言えば、(1)生徒・父兄へのヒアリング調査、(2)塾講師間での話し合い、(3)自分の体験談を紹介する等の情報の充実化、(4)講師の配置換え、(5)テキストの見直し、といったものだ。
そうではなく、自分独自の施策や考えはないのか考えてみることが重要だ。その際の切り口としては、上述したように「経営者」の視点で見ると違ってくるのではないか?経営者視点であれば、これからはIT化が進むのは明らかなので、リモート化するというのも1つの方策だ。そうであれば、自分の塾のバイト経験を通じて「講師は似たり寄ったりなので、バイトも実店舗も止めて、塾経営者が自らリモートでやる方向に切り替えるべきだと思った」という結論の方が面白い。
また、学生はSNSユーザーであっても、自ら情報発信の側に立てる人は少ない。そこで、SNSを駆使した塾のマーケティングも思いつくはずだ。
そういったスキルが無いというのであれば、塾の経費削減にのみ特化した話をしても構わない。とにかく、題材は平凡なバイトの話で構わないので、その視点、切り口について独自のものを考えればいいのである。如何にして、自分の個性やオリジナリティを表現し、他の学生と差別化できるか。この視点からガクチカをとらえてみればいいのではないか。
③なかなか良いガクチカ、自己PR、志望動機が浮かばないのは、企業研究が不十分だから?
学生の段階では実際に企業で働いた経験が無いので、自己PRやガクチカと一貫した志望動機がなかなか浮かばないかも知れない。そういった場合は、企業研究が不十分であるため、その企業で働くイメージが浮かばないのかも知れない。
商社の場合、「何故商社」「何故(商社の中で)当社」というのは定番の質問項目であるので、徹底した企業研究が必要となる。その点については、こちらの過去記事をご参照下さい。
<MARCHから商社に内定した就活生が教えてくれた企業研究の方法>
https://career21.jp/shukatsukigyokenkyu/
④塾や飲食店のバイトでいいアイデアが浮かばないと他のバイトも試せばいい
バイトというのは、通常はお金のためにやっているものであって、わざわざガクチカ作りのためにやっているものではない。また、一般的なバイトは、少々頑張ったところで沢山お金がもらえるわけでもないので、実際は言われる通りにやっている場合が多い。
このため、いざ就活のガクチカ作りという段階になってから、オリジナリティ溢れる面白いエピソードを捻出することは難しかったりもする。
そんな場合には、他の種類のバイトも試してみればいい。別にスキルや実績を作る必要はないので、短期間で構わない。違う種類のバイトをやってみると、違ったアイデアが浮かぶ可能性はある。
そういった意味でお勧めなのは、歩合営業系のバイトだ。結構泥臭くて、好き嫌いは分かれるかもしれないが、いろいろなやり方があるし、実際に結果を出している社員のやり方は参考になったりもする。また、企業の面接官のオジサン達も、そういった泥臭い営業話は好きだ。また、よく聞かれる挫折経験のネタも作り易い。営業系が苦手でなければ試してみる価値はあるだろう。
営業系が嫌ならば、CheerCareer(旧パッションナビ)でベンチャー系のバイトを探してみるのも良い。ベンチャー系であれば経営者と距離が近いので、経営者視点に関する面白い独自の気づきが得られる可能性がある。また、YouTube運営、動画編集等の、ちょっとしたwebビジネス周りのスキルも習得できると更に面白いネタが得られる。
<CheerCareer(旧パッションナビ)>
⑤ガクチカをOB訪問で検証してもらい、磨きをかける
コピペでは無い、オリジナリティの高いガクチカを考えたものの不安がある。また、ガクチカ、自己PR、志望動機の一貫性について自信が無い。こういった不安については、OB訪問でチェックしてもらい、改善すればいい。
MARCHから商社の内定を取った就活生の共通点としては、豊富なOB訪問と企業訪問があげられる。自分で考えたガクチカや自己PRをOB訪問で検証していくことを重ねると、十分に練れた良いガクチカが出来ていくはずだ。
また、多くの業種やベンチャー企業にも応募することにより、実践を通じてプレゼン能力も磨いていくことが大切だ。
4. 小さなガクチカの限界と対応策
小さなガクチカでも、やり方次第で難関企業も内定の可能性があるというのは上述の通りだが、小さなガクチカの方が大きなガクチカよりも強いということではない。
やはり、小さなガクチカには限界があるので、別途対応を考える必要がある。
①IBD、アセマネ等の金融専門職では専門知識の習得がある程度は求められる
まず、最初の限界としては、専門的な知識が求められる業界においては別途対応が必要ということである。典型的なのは、金融専門職であるIBD、アセマネである。また、消費財マーケティング職もそうだろう。
金融専門職で、「気になったM&Aのディールを10個言え」とか、「君の日経平均予想を教えてくれ」と言われた場合には、バイトのガクチカだけではどうしようもない。そういったところを希望するのであれば、別途、最低限の専門知識を習得しておく必要がある。
②最終面接を突破するには何か光るところが求められる
もう1つの限界は、商社、デべ、広告代理店の様なハイスぺ学生が集中するような業界については、小さなガクチカを磨いて善戦(最終面接までは行く)する可能性は十分にあるが、最終面接まで突破するのは非常に大変だということだ。当然ではあるが、小さなガクチカを磨けば確実に商社に内定するという訳ではない。従って、最難関企業に落ちた場合にどうするかを考えて、応募企業を考える必要があるということだ。商社であれば、専門商社をどう考えるか?或いは、グローバルキャリアということであれば、グローバルメーカーや金融のグローバル職をどう考えるかという話だ。これは予め十分に検討しておきたい。
多くの学生はガクチカで悩むという。しかし、小さなガクチカでも磨けばまだまだチャンスはあるようだ。ファーストキャリアは非常に重要なので、大きなガクチカを作る時間が無くても、諦めずに難関企業にチャレンジしてみるのは悪くないはずだ。