1. 就活塾とは?
就活塾とは、有名企業への内定獲得を目的に、就活生を対象に有料で、自己分析、自己PR、ガクチカ、ES、面接、GD等の指導をする組織である。
外銀や戦コンを対象に、学生に対して指導をする団体に、選抜コミュニティと呼ばれるものもあり、YC塾とか外資就活アカデミア等が知られている。ただ、選抜コミュニティは無料であることが多く、営利を目的とした就活塾とは別のカテゴリーと考えられる。
<選抜コミュニティの草分け、YC塾の紹介記事>
https://career21.jp/2019-12-04-150154/
また、就活塾は選抜コミュニティの様に外銀、戦コンといったハイスぺ学生のみを対象とするわけではなく、大手金融、大手メーカーから一般的な大企業までを対象に、様々な学生を対象にしている。
就活塾は教室を持たないオンライン指導中心の小規模な個人経営のところも多く、ネット検索すればわかる通り、非常に多くの業者が存在している。
2. そもそも就活塾は必要か?
①学生から就活をネタにお金を取るのは胡散臭くないか?
正直、私は当初は就活塾は胡散臭いと思っていて、あまり良い印象はなかった。何故なら、お金が無い学生から、就活をネタに安くない金額(金額はいろいろあるようだが、15万円位が平均的な金額だそうだ)を取るのは疑問だったからだ。
②それでも、就活塾が必要な理由
今の就活は、昔と違って、対策をしなければならないことが多い。ESを提出し、面接では志望動機、ガクチカ、自己PR等が問われ、また、中途採用では有り得ない、ジョブやGDといった集団競技まである。学歴、体育会やゼミのコネ、語学力や資格、ビジネス経験といったスペック、面接でのフィット感だけでは採用してもらえなくなっている。
このため、非常に多くのテクニカルな対応が必要なのだが、こういったことを教えてくれる先輩や若手OB/OGが身近にいるとは限らない。また、難関企業を志望する場合には、そもそも自分の大学のOB/OGがほとんどいないケースもある。
また、ESや面接対策のためには、その前提として、自己分析をして志望企業を選定し、そのためのガクチカを揃えるといった作業も求められ、指導してくれる先輩やOB/OGがいたとしても、長期間に亘り、1から10まで指導してもらうことは期待できないだろう。
そうなると、自己分析からES/面接対策まで一気通貫でサポートをしてくれる就活塾が有用になって来る。
③特に、外銀、戦コン、商社の様な難関企業内定のためには必要か?
日本の場合、残念ながら、GAFAのような好待遇の巨大企業が生まれておらず、外銀、戦コン、商社といったところにハイスぺ学生の人気が集中している。
外銀の場合は、企業財務や投資理論に関する知識等が面接やジョブで問われ、戦コンではケース面接やフェルミ推定の知識が求められたりする。商社の場合は、お決まりの、「何故商社」、「何故当社」、「何やりたい」、「何故あなたを採用する」といったことが問われ、一貫性を持って説得力のある回答が求められる。
ハイスぺ学生間の高いレベルでの競争となるので、これらの業界の経験者達に就活塾で直接指導をしてもらえれば、有利になるだろう。
外銀や戦コンの場合、選抜コミュニティに加入すれば良いのだが、少人数しか採用しないので入会することは容易ではない。それでも、外銀や戦コンに入りたい場合には、就活塾を頼らざるを得ないということになる。
④時間が無い場合の駆け込み寺的な役割
高学歴でグローバル経験も有るが体育会等で忙しく、気が付けば3年生の冬休みになっていたという場合がある。そういった時は、何をどうやればいいかわからないし、教えてくれる人が見つかりそうでも、とにかく時間が無い。そういった場合には、短期集中的な指導が求められ、頼れるところは就活塾しか無いというケースもあるだろう。
⑤就活塾と、自分に投資をするという意味
就活塾はお金の無い立場の学生を対象にするビジネスなので、けしからんと思っていたのだが、必ずしもネガティブとも限らない。何故なら、人間はお金を掛けないと本気にならないからだ。社会人向けのビジネススクールを展開しているグロービスでも、企業の研修・福利厚生の一環として会社のお金で参加している人達はあまり熱心では無いという。ところが、全6回で約13万円の講義料を支払って受講する学生は投資を回収するために本気で学習する。就活塾も、学生が身銭を切って投資をすればその分本気になるという効果はあるだろう。(親に出してもらうと話は別だが…)
また、公認会計士試験や司法試験の予備試験の塾・予備校の場合も、多くの者が結果として合格できないが、何十万円という授業料を投資しているので、就活塾もこれと変わらないという見方もある。
従って、十数万円程度であれば、良い企業に就職できれば一ヵ月程度で回収できる金額なので、就活塾を利用する意義はあるかも知れない。
3. 就活塾にはどういったところがあるか?
①就活塾の選定基準
就活塾は個人経営の小規模な業者が多く、全容は把握しにくい。また、就活生や対象企業のターゲットもピンキリである。
外銀、戦コン、商社、メガバンク等の大手金融、キリン、サントリー等の人気メーカー等の広い意味での人気企業を対象とした場合、私は以下の3条件を満たした就活塾を選択すべきではないかと考えている。
(1)代表者自身が転職経験者であること
就活塾は主な社員が代表者のみの個人経営のところが多い。このため、就活サポートの質は代表者自身の経験やスキルに大きく左右される。今日では、新入社員の約3割が3年以内に辞めてしまうという。外資系企業はともかく、終身雇用が基本である総合商社でさえも10年後には3割は退職するようになったという。
そうなると、希望の会社に入社しただけでは成功と言えず、その後の転職可能性やキャリアプランを踏まえた上でのアドバイスが必要となる。
この点、自らが転職経験が無いのであれば、転職を踏まえたキャリアプランまで提供することは期待し難い。従って、代表者自身に転職経験があることが望ましい。そして、国内系と外資系企業の両方を経験していればなお良いだろう。
(2)生徒を志望の企業から内定を勝ち取らせた実績が十分にあること
プレーヤーとしての優秀さと、コーチとしての優秀さは別物である。代表者本人に難関企業内定や入社の実績があっても、生徒に適切な指導ができるとは限らない。このため、過去に生徒を志望企業に内定させたという実績が求められるところである。したがって、設立から間もない就活塾の場合、過去にどれくらいの実績があったのかチェックする必要があるだろう。
(3)無料相談や無料説明会の機会が与えられる
就活塾の受講料は幅があるようだが、15万円位が目安だという。特に収入源の無い学生にとっては少なくない金額なので、事前に期待できるサービスが提供されるのか確認すべきだろう。この点、無料相談とか無料の事前説明会を提供してくれる就活塾は結構あるようなので、事前に活用したい。
②就活塾の紹介
上記の3つの条件を充足するところで、私が実際に代表者と話したことがある就活塾を2つ紹介したい。なお、この2つが最もお勧めというわけではないので、他に良さそうなところを発見できれば比較してみて、自分に合った方を選択すれば良いだろう。
また、いずれも個人経営なので、代表者の好き嫌いや相性はあるので、その点も考慮して決定することが望ましい。
(1)就活塾SPARK Career
ここはTwitterを通じて発見して、興味を持ったので代表者の寺尾氏にインタビューをすることが出来た。寺尾氏は東北大学経済学部を卒業後に損保ジャパンに就職され、主に国際部門でキャリアを積み、香港やニューヨークで駐在を経験した。その後、欧州系のビジネススクールに留学し、MBAを取得後、外資系金融機関で勤務をされている。この就活塾は兼業であるので、キャパシティには制限がある。
SPARK Careerの特徴は、早慶からMARCH・関関同立の学生を対象に、大手金融機関(メガバンク、大手生保、大手損保、大手証券等)、総合系コンサル、大手メーカー(外資系、製薬、大手食品他)への内定を目指す。選抜コミュニティの様に外銀、戦コンのような超難関企業では無く、一般的な大手の人気企業が対象だ。
就活サポート方法としては、集団講義や映像講義ではなく、最初から個別指導を毎週提供する方法であり、指導の細かさ・丁寧さが強みとなっている。
上場企業から内定がもらえなかった場合の全額返金保証制度といったユニークな制度があり、無料相談制度があるので、興味があれば無料相談を受けるのが良いだろう。
(2)アルファ・アドバイザーズ
アルファ・アドバイザーズは就活だけでなく、留学サポート、起業相談、転職サポート、キャリア戦略相談まで、広くキャリア全般についてのサービスを提供している。また、創業後12年にも亘る豊富な実績が強みだ。
創業者・代表者である入住氏は、慶應義塾大学法学部を卒業後、住友商事に入社。財務畑でキャリアを重ね社費留学でシカゴ大学MBAに留学。留学中に退職を決意し、私費留学に切り替えてシカゴMBA卒業後はゴールドマン・サックス証券IBDに就職。このため、自らが商社と外銀での業務経験を有するため、商社と外銀の就活や転職サポートに強いのが特徴である。
私も、独立に向けてのキャリア戦略コース(受講料約5万円)を受講したが、独立に際して①誰をターゲットにするか(Who)、②どういったサービスを提供するか(What)、③どのような提供方法で差別化するか(How)、④やりたい仕事と収益性は一致しないのでどうやってバランスを取るかについて理路整然と指導を受け、IT周りやロジ周りの留意点を含め、非常に充実したアドバイスをもらうことができた。このため、就活指導も高水準のものが提供されるのではないかと思料される。
アルファ・アドバイザーズでは、1本あたり30~90分の比較的長時間の動画をほぼ毎日YouTubeで発信しているので、これを見るとイメージが湧くのでは無いだろうか。
アルファ・アドバイザーズは代表者が外銀IBD出身ということもあり、直球勝負で、「それでは無理」と明確な意思表示をされるので、好き嫌いは分かれるところだろうが、事前に30分までの無料相談をやってくれるので、とりあえずこれを受けてから判断すればいいのではないだろうか。
<アルファ・アドバイザーズ>
https://www.alpha-academy.com/
最後に
今の就活はやるべきことが非常に多い。早い段階から十分な準備が出来たり、選抜コミュニティに入会できれば良いが、優秀なメンターを見つけられない場合や、とにかく時間が無い場合には就活塾も選択肢の1つにはなり得るだろう。その際には、自分の目的にフィットしたところを複数探し出し、事前に無料相談なり無料説明会を受ける等して慎重に決定すべきだろう。