MARCHから商社に内定した就活生が教えてくれた企業研究の方法

序. ガクチカばかりを気にする学生が多いが、実は企業研究で差が付く?

ガクチカを気にする就活生は非常に多い。留学経験、体育会での華々しい活躍、起業経験といった大きなガクチカを持つ学生はごく一部であり、大半の学生はバイト、サークル、ゼミといった普通のガクチカしか無いのが通常である。

「ガクチカは大きさではなく、深さだ!」的なコンテンツを、あちこちの就活メディアで見かけるが、先輩達の就職先を見ていると、それを単純に信じ込むのは難しい。

しかし、非留学、非体育会、非起業系実績の、普通のバイトのガクチカで超難関の5大商社に内定したMARCHの学生はいる。もちろん、そういった学生は情報収集、企業研究、OB/企業訪問、文章力/プレゼン向上策を非常に熱心にやっているので、普通のガクチカだけで商社に内定できた訳ではない。

ただ、その中で、企業研究を徹底的にやると大きく差別化できる可能性がある。企業研究はほとんど全ての就活生がやっていると言うのだろうが、採用側から見ると、多くの就活生の企業研究は満足のいくレベルに達していないはずだ。

そこで、以下、MARCHから商社に内定した学生から聞いた企業研究の方法についてまとめてみた。

1. IR情報を十分に読み込んだ上での企業分析

①決算説明資料や会社概要の基本的な理解

企業研究ということで、新卒採用ホームページや就活生向けのパンフレットを読む就活生は多いだろうが、ああいったコンテンツは見映え重視の企業が作り上げたイメージ的なコンテンツである。企業の実態やビジネスモデルが正確に反映されたものではない。

そこで、企業のホームページの会社概要やIR情報にある決算説明資料を読み込む必要がある。

IBDやファンドマネージャー志望者等は別として、就活レベルだと細かいところまで理解する必要はないが、少なくともその企業は、どういった商品・サービス、事業部門がどれくらい稼いでいるのかを知っておく必要がある。例えば、商社の場合、エネルギー・天然資源、輸送機、化学品、インフラ、食料、不動産、ITその他の売上・利益の割合がどれくらいあるのかを知っておく必要はあるだろう。

また、その企業の基本的なビジネスモデル、誰(どのような顧客)に、何(財、サービス)を、どのように販売して利益を上げているのかを把握しておきたい。

②中期経営計画の読み込みと理解

企業がIR情報で公開している中継経営計画は非常に参考になる。企業の現状と課題、そして、それに対する打ち手が簡潔に書かれているからだ。

しかし、「当社の現状の課題と、それに対する打ち手は何ですか?」と質問されて答えることはできるだろうか?実際は、正確に即答できる就活生は非常に少ないだろう。中期経営計画に目を通していても、それを理解して、更に面接でアウトプットをできるようになるにはかなり読み込む必要があるからである。

ただ、自分が就職するかも知れない企業については、その現状、課題と対応策を知っておくべきだろうし、採用側もそれを求めている。何故なら、企業としては将来自社の課題解決策を実行したり、戦略を構築できるような人材を求めているからだ。

③自分自身の考え(自分が経営者になった場合の視点)

これは、IR情報に基づく企業研究の最終段階である。中期経営計画は、企業が考えた課題と解決策である。これに対して、就活生が自分自身の考えを持てることが出来れば最強だ。

要するに、「君が社長だったとすれば、何やりたい?」という質問を想定したものである。商社内定者でも、この問いに的確に即答できる(要するに予め準備できている)人は少ないのではないだろうか?

反対に、ここまで準備しておけばかなりの差別化が可能である。自分自身の考えの妥当性については、予めOB訪問等で検証しておくことが可能である。スペック、ガクチカに自信が無い場合には、この企業研究で逆転できるチャンスと言える。

2. ライバル企業、関連業界の企業分析

①同業界のライバル企業、近接する関連業界等の企業分析の必要性

充実した企業研究に際しては、当該企業だけではなく、同業界のライバル企業も研究し、その異同を語れるようになっておきたい。そうすれば、「(同業界の)他社でもいいのでは?」というよくある質問に的確に対処できるようになるはずだ。

例えば、メガバンクであれば、三菱UFJ、三井住友、みずほの3行全てについて、経営資源や戦略に関する特徴についてIR情報を通じて予め整理しておくことが求められる。

さらに、同業界だけでなく、関連業界の企業分析も必要となる。
例えば、商社でプラントやりたいというのであれば、日揮や千代建の様なエンジニアリング企業や、JBICの様な金融機関まで会社訪問をすることが求められる。また、商社やメガベンチャーで自動運転関連ビジネスをやりたいというのであれば、トヨタや本田も会社訪問をしていることが必要だ。

そうすると、より深い業務の理解とモチベーションをアピールすることが可能になる。

②関連業界の違いを正確に語れるか?

これは、金融機関特有の話かも知れないが、関連業界の違いを正確に語れるように準備しておきたい。これは、そんなに難しい話ではないが、以下の様な質問に対して、口頭で即答するためにはそれなりの準備が必要となろう。

・銀行と信託銀行の違い
・銀行と証券会社の違い
・証券会社とアセマネの違い
・生保と損保の違い

また、「信託とは何か?」「投資信託とは何か?」という基本的な説明は何となくわかっていても、口頭で即座に説明することは難しい。反対に、ここで正確に即答できると、かなり印象が良くなるので、本命の業界や企業においては確認しておきたい。

3. 企業と自分自身とのフィット感 ~志望動機への落とし込み~

この段階は、狭義の企業研究とは言えないかも知れない。何故なら、企業だけではなく、自分自身の話も関係して来るからだ。

ただ、企業研究の真の目的はこの段階まで完遂することだ。いくら優良企業について完璧な企業研究が出来たとしても、自分の価値観ややりたいことと合わないのであれば行く意味はない。また、企業側からすると、いくら学生が優秀であったとしても、企業とのフィット感がズレていると採りたいとは思わないだろう。

結局、企業の将来の方向性と、自分自身の将来のキャリアの方向性が一致していること、これを如何に上手く伝えることができるかということである。これが出来ると、説得力のある志望動機が出来る。

例えば、三菱商事の場合、「経営マインドをもって事業価値向上にコミットする人材」輩出を目的としているので、「将来、プロ経営者になりたい」とか「企業経営に従事したい」というキャリア観であれば、その方向性は一致していると言える。

もっとも、それは他の商社でも可能であるので、如何に三菱商事が最もフィットすると伝えることが出来るかが次の課題となる。そのためには、三菱商事と他の商社との異同を正確に踏まえることが前提となるので、徹底した企業研究が重要なのである。

その上で、自分なりの回答が出来れば、OB訪問や他業界で成功している社会人にぶつけて見て、どんどん練って行くことになる。

MARCHから普通のガクチカで商社から内定を取ろうと思えば、こういったレベルの企業研究が重要な武器となる。

学生の場合、企業での業務経験がまだ無いので、資料やデータを読むだけではなかなか企業の実態をイメージすることは難しい。しかし、以前の様な余裕が無くなった日本企業は、即戦力に近い人材を欲しがり、就活段階でも企業に関する知識を問うようになってきたようだ。この企業研究においては、全体的なレベルは高くないので、ガクチカに自信のない就活生は注力する価値があると言えよう。

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