総合商社の中途採用。その魅力、問題点、難易度、対策について考える

1. 総合商社も中途採用を毎年実施している

総合商社の就活生における人気は非常に高く、国内企業の中では最難関では無いだろうか。コロナ以降は特に難易度は高まっているようであり、それなりの対策を立てても内定を取るのは難しい。

しかし、総合商社は全て中途採用を実施している。
これは、就活時点で叶えられなかった夢を実現できるチャンスである。

採用方法は各社様々で、三菱商事や三井物産の様に、春と秋に募集を掛ける会社や、住友商事や伊藤忠の様に通年採用している会社もある。なお、三井物産は通年採用(厳密には四半期ごとに募集)に制度改定をする模様である。

<三菱商事キャリア採用>
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/recruit/career/

<三井物産キャリア採用>
https://career.mitsui.com/recruit/recruitingcenter/requirements/03.html

<住友商事キャリア採用>
https://sumitomocorp-career.com/

グローバルな優良企業は随時募集をしているし、HPだけではなく、リファーラルやエージェント等様々な採用ルートから優秀な人材を確保しようとしている。この点、三菱商事や三井物産の様に決まったタイミングでしか応募できないというのは非常に残念であるが、将来的には改善されていく可能性はあるだろう。

2. 総合商社に中途採用で入社する魅力

①総合商社の非常に恵まれたサラリーマン生活を享受できる

総合商社に中途採用で入社する魅力は、給与、福利厚生、ステータス、海外勤務の機会、スケールの大きい仕事、終身雇用という、日本企業では最高水準の恵まれた環境で働くことができる点である。例えば、年収という点を見ると、5大商社の場合は入社4年目位で1000万円に到達し、30歳では1200~1500万円、40歳では1800~2000万円というトップクラスの給与水準である。新卒では実現できなくても、中途採用で入社できれば、こういった好条件を享受することができるのである。

②配属ガチャを回避できる

総合商社に限らず、日本の大企業の場合、入社時点の部署や職種が確約されないケースが大半である。これが、学生の間で「配属ガチャ」と呼ばれる日本企業の特有の評判の悪い制度である。

しかし、中途採用の場合は部門別で採用するので、この配属ガチャの問題を回避することができる。これは部門・職種に拘りがある人にとっては非常に魅力的である。

3. 総合商社に中途採用で入社することの問題点

中途採用で入社することの問題点があるとすれば、出世・昇格という点においては、新卒組が有利であるということである。これも総合商社に限った話ではなく、ベンチャー系やオーナー系企業を除く、日本の大企業の場合は一般的に当てはまる話である。

もちろん、オフィシャルに、中途採用は出世において不利ですということは示されないが、それは役員や主要ポストの人事を見れば何となくわかる。

中途採用での入社を狙う人は、出世に関してそれほど拘りは無いかも知れないが、気になるのであれば総合商社の中の人に聞いてみるのが良いだろう。

4. 総合商社の中途採用の難易度

気になる中途採用の難易度であるが、就活時とは採用のルール・判断基準が異なるので、その人の特徴次第だろう。

就活時においては、業務経験が無いことを前提としたポテンシャル採用なので、学歴・体育会・グローバル経験・ビジネス経験といったスペックが重視される。

他方、中途採用においては、当該部門が求める「業務経験」「スキル」が非常に重視され、相対的に学歴の重要性は後退し、体育会とかゼミの実績といった業務に関連しない項目についてはあまり重視されない。

また、選考方法についても、新卒採用と中途採用は異なる。中途採用の場合、転職活動に関する情報は秘密であるという建前なので、他の候補者と顔合わせをするような、GDとか集団面接は無い。従って、GD等のスキルは要求されない。

このため、高学歴・体育会・帰国子女・成績優秀で、就活テクニックに長けていても、各事業部門が求める業務経験やスキルを備えていなければ不利である。

反対に、学歴には自信が無く、非体育会・非帰国子女・学業実績無しでも、しっかりとした業務経験とスキルが備われば大いにチャンスはあるだろう。

就活時においては、外銀・MBB組が併願するなど、本当にトップの学生が商社に応募する。しかし、中途採用においては、外銀・MBB組に限らず、国内系トップ企業のエース級の人材は、あえて商社に転職するメリットも無いので、商社の中途採用市場には参入しないのではないだろうか。(外銀・MBBで疲弊した人材はライバルになるかも知れないが…)

その意味では、人によっては新卒時よりもチャンスはあると見ることもできるだろう。

5. 総合商社の中途採用で内定を獲るための対策

①当該部門に掛かる業務経験が最重要

中途採用で内定を獲るためには、どういった対策が必要か?
それを考えるにあたっては、どういった人達が採用されているかを調べればいいだろう。
中途採用で入社した人達の経歴等については、各社のHPのキャリア採用のところで紹介されている。この点、三井物産のHPに数多くの事例が紹介されていて参考になるだろう。

<三井物産にキャリア採用で中途入社した人達の経歴>
https://career.mitsui.com/recruit/midcareerstory/

これを見ると、電力会社⇒資源部門、自動車会社⇒自動車部門、不動産投資⇒コーポレート投資関連、税理士⇒コーポレート財務経理、弁護士⇒法務、というパターンなので、やはり、当該募集部門で求められる業務・スキルに関連する業務経験が最重要ということである。これは、商社に限らず、中途採用の場合は求人部門が求める業務についての経験・スキルが最重要なのであるが、この点は同じであろう。

もっとも、外資コンサルというのはITコンサルなのか戦略コンサルなのかは明らかではないが、比較的業務関連性は緩く捉えてもらえるかも知れない。

若手(第二新卒)の場合は、直接的な業務経験は求められないケースもあるが、商社の場合においては難しいのではないだろうか?

②もちろん、面接対応も重要

総合商社の中途採用は、新卒よりはましかも知れないが、かなりの高倍率であるのは間違いない。例えば、三菱商事の場合、書面(ES&職務経歴書)審査に加えて、WEBテストまで実施されるのは、候補者を絞る必要があるからであろう。

従って、当該部門に関する業務経験があっても、そこからの競争を勝ち抜かなければならない。そこで、面接での出来が重要になるのは新卒採用と同様だろう。

この点については、当該部門がどういった人材を求めているか、面接ではどういうことを聞かれるか、また、その問いにはどう答えるべきかを予め調べておきたいところである。

これは、商社の当該部門の人に聞くのが最も堅く、大学の動機や先輩のツテを頼るのが良いだろう。当該部門の動機や先輩がいなければ紹介してもらえばいいだけの話だ。一応、商社マンを目指すのであるから、それぐらいの行動力が無いとお話にならないだろう。

もちろん、応募している商社の当該部門の人に話を聞くわけにも行かないだろうから、住友商事に応募しているのであれば、伊藤忠や丸紅の同じ部門の人に話を聞けばいいのではないだろうか。

③どうしても商社に入りたければ私費MBA経由という手もある

どうしても商社に入りたいが、現時点での職業では業務関連性やスキルの点において弱いという場合、私費MBAで卒業後に商社に入るという手もある。欧米の大学に限らず、香港・シンガポール等のMBAでもチャンスはある。最後の手段として念頭に置けばいいだろう。

  • ブックマーク