金融専門職内定の就活生が、30代で年収2千万円の三菱商事に興味を示さない理由

1. 非常に優秀な金融専門職内定の就活生が何故か三菱商事には全く興味が無い…

非常に優秀な就活生がいて、彼は当初からの希望通り、年明け早々に大手国内アセマネの内定を取り、翌月には国内証券IBDの内定を取った。

彼は、帰国子女ではないが留学を経験し英語は堪能で、就活も早くから金融専門職(アセマネ、IBD)に絞り込み、証券自己投資やファイナンスの勉強をしっかりこなし、夏季インターンでは幅広く応募をして面接やWebテ対策も万全であった。

このため、予定通りの就活無双が出来たのだが、時期的にはまだ早かったので、私は彼に「三菱商事とか内定取って悩んでみたら?」と提案してみた。

しかし、彼は三菱商事等の総合商社には全く興味が無いので、早期に就活することにした。資源高の環境下、好業績で年収水準がどんどん上昇する商社の中でも、三菱商事は特にブランド力も圧倒的である。三菱商事に応募をして、面接等を通じて商社を知ることは良い経験なので、余力があれば挑戦する価値は十分にあると思っての提案だったのだが、なぜ彼は全く興味を示さなかったのだろうか?

2. 金融専門職内定の就活生が三菱商事に興味が沸かない理由

本命は金融専門職でも、力試しに商社を受けるという学生はいるので、なぜ彼の場合、三菱商事でも興味が沸かないのか、その理由を聞いてみた。

①三菱商事に入社しても、結局、外資金融に行きたくなるのは明らかだから…

彼曰く、「三菱商事は就活界隈だけでなく、一般的にも非常に知名度が高く、ナンバー1ともてはやされます。しかし、ナンバー1というのは「国内企業の中で」ということで、外資も含めると、外銀や戦コンが非常に気になります。三菱商事に入社したとして、『自分達はナンバー1だ』というプライドは持ちつつも、だからこそ、上しか見なくなり、外銀や戦コンが気になります。実際、外銀や戦コンに落ちて三菱商事という人もいるでしょう。もちろん、生涯賃金ということで、リスク面も加味すると、必ずしも、外銀や戦コンの方が三菱商事よりも上とは言い切れません。でも、そういうことはわかっていても、外銀や戦コンを忘れることができず、入社しても転職を考えるでしょう。僕はコンサルには興味が無いので、気になるのは外資金融ですが、転職をするのであれば、最初は商社に行くよりも、国内金融専門職に就いた方がいいでしょう。」

これは割とよく聞く話で、「モルガンスタンレーと三菱商事、両方内定して三菱商事に行くと、3年後に後悔する」というパターンである。三菱商事から内定を取れる学生は優秀かつパワーもあり、上が見えると、そこを目指したくなるということだろうか。

コロナ前だと、三菱商事は40歳で2千万というイメージであったが、その後の資源高等で給与水準は、今では35歳で2千万円に到達するとも言われている。外銀だと35歳で年収5千万円以上も可能だが、それは生き残れた場合の話である。そのための労働時間、ストレス、リスク等を勘案すると、決して悪くは無いのだが、若くて優秀な人は満足できないのだろうか?

②いざという時、逃げ場がありません…

①に続けて、金融専門職を就活無双した優秀な学生は、更なる理由を述べる。

「それから、商社の場合、『スキルが付かない』というのが弱みと言われています。でも、転職をしなければ、この点は特に問題にならないと思います。ただ、積極的にキャリアアップの転職を狙わない場合でも、いざという時に、逃げ場が無いのは辛いと思います。三菱商事の場合、ブラック企業では無いので、労働環境が酷い職場と言うのは無いでしょう。それでも、業務内容、上司、同僚等の事情で、『辞めたい』と思った時に、転職出来ないのは困ります。もちろん、年収等の希望条件を下げれば、転職先は見付かるのでしょうが、年収が半減という状況になると、転職を諦めて我慢しなければなりません。それを考えると、三菱商事に限らず、転職しにくいというのは避けたいと思ってしまいます…」

なるほど、積極的なアップサイド狙いの転職オプションが無いというのは妥協できるにしても、消極的な事情からの転職オプションが無いというのは困るということか。

③「あと、僕はアフリカとインドは無理です…」

先ほどの②の理由で私としては納得できたのだが、更に、その学生はこう言った。

「あと、僕はアフリカとインドは無理です。いや、中南米、ロシアや中国も厳しいと思います。そもそも、金融専門職志望で、海外と言うと、欧米、香港、シンガポール位しか思いつかない人達は商社は合わないと思います。インドとかだと、危険手当が加わり、実質年収は倍増という様な話を聞いても、行きたくないですね。」

配属先確約コースを選べない商社の場合、いくら優秀だとしても、こういうことを面接で言うと流石に採用されないかも知れない。冒険心を欠くタイプの人材は、商社マンにはカルチャー的に向かないかも知れないからだ。

3. それでも、三菱商事の魅力は大きい理由

年収、安定性、ステータス、全て揃った三菱商事だが、上記の金融専門職内定者が興味が無いという理由は理解できる。特に、②の「いざという時の、逃げ場が無い」と言われると、なかなか説得できないものである。

しかし、そう言われても、長年社会人をやっていると、三菱商事の魅力は大きい。
今回の様な資源高がずっと続くことはないにせよ、代替品が見つかるとは思えない資源を押えている三菱商事は強い。加えて、莫大な利益の額に比して、正社員の数は非常に少ない。毎年の新卒採用者数は120-130名。しかも、10年で3割は辞めるという。それに対して、若干の中途採用による補充はするが、年間10名前後である。すると、残った生え抜き社員は非常に美味しい立場にあり、今後も、高給を維持できそうだ。そして、副業と駐在で貯めた資金を原資に資産運用を真面目にやれば、ますます余裕だろう。

行く気は無くとも、ハイスぺで金融専門職無双をできる恵まれた学生は、非常に良い機会なので、三菱商事にも応募をしたらいいと思うが、どうだろうか?

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