令和の時代の、外資系金融とキャリア戦略を考えてみた

1. 外資系金融は20年後も安泰か?

サラリーマンの世界では年収水準は最強で、金融のプロというカッコいいイメージもあるのか、現在では非常に人気の高い外資系金融だが、果たして、20年後も30年後も安泰であろうか?

遠い将来のことは誰もわからないが、外資系金融も不安はある。
クレディスイス、ドイツ証券等、外銀の世界では欧州系がリーマンショック以降、継続的に苦しんでいるので、実質的な転職先がじわじわと減って来ている。ゴールドマン・サックスとかモルガン・スタンレーのトップティアにいれば、そこでコケても、ティアの低い外銀に逃げるという手もあった。しかし、逃げ場が無くなる、或いは、弱体化すると、終身雇用の世界では無いので、不安が残る。

また、外銀と比べると、相対的にWLBは良好で、リストラリスクも低目の外資系アセマネ業界も近年注目度は高まって来ているが、こちらも不安はある。そのうち最大のものは、パッシブファンドのシェア拡大の流れと、アクティブ・ファンドの手数料低下の懸念である。

もちろん、両方とも無くなるということはないだろうが、終身雇用の国内系大手企業と比べるとリスクが高いので、その点について、バックアッププランを考えておく必要があるだろう。

2. 外資系金融キャリアで成功したと言えるには?

外資系金融は、総合商社や大手金融機関とは異なり、終身雇用や年功序列ではなく、リスクは高い。このため、生涯賃金が商社や金融を上回らないと成功とは言えないだろう。

そうすると、とりあえず、「生涯賃金10億円」が、外資系金融キャリアで成功したと言える最低線ではないだろうか?

何故なら、5大商社の生涯賃金は7億円以上、大手金融機関のそれは5億円以上はあるだろうから、リスクを考慮すると生涯賃金10億円位は欲しいからだ。
(なお、「5大商社の生涯賃金はそんなに高いのか?」と聞かれることが割とあるので、説明しておく。40歳から定年までの20年間で2千万×20年で4億円、30代の10年間が平均年収1500万円として1.5億円、20代の7~8年で1億円、退職金が3~4千万円として、合計6.8~6.9億円。これは、海外駐在のアップサイドを含めていないので、定年までいたら、7億円以上は行くのではないだろうか?)

この「生涯賃金10億円」というのは、外資系金融でもそれほど簡単なものではない。
例えば、年収5000万円を20年間、年収3千万円を33年ほど継続できて、ようやく10億円である。外銀の場合でも、リーマンショック後のボーナス水準を考えると、VPに昇格するのは当然として、40歳位まで頑張らなければならない。また、外資アセマネの場合においては、年収5千万はハードルが高めなので、仮に年収3~4千万レベルだと60歳まで働き切る位のイメージだ(なお、退職金制度がある会社も多いので、このレベルまで働けると、その分、生涯賃金は多くなる)。

こう考えると、外資系金融キャリアで成功するのは決して楽ではない。

3. 外資系金融キャリアで成功するための留意点

①少しでも長く働ける様にいろいろな手を打つ

外資系金融の場合、年収水準が高いので、数年長く働くことが出来ると生涯賃金がかなり違って来る。年収5千万なら2年で1億、年収3千万強なら3年で約1億。とにかく、少しでも長く働けるようにすることが重要だ。

これについては、いろいろあるが、仕事に関しては面倒でも業務・専門性の守備範囲を拡げておくことだろう。それは、顧客・プロダクトの両方について言える。

例えば、外資アセマネのセールスについて考えると、機関投資家ビジネスだけでなく、リテール(個人向けの公募投資信託)案件も経験しておくとか、プロダクトについては、オルタナ系のビジネスを幅広に経験しておくといった具合である。そうすると、中途採用の面接で、フィットするポジションが増えるので、転職による生き残りの可能性を高めることが可能だ。

また、外資系金融の社員にとって転職は当たり前かも知れないが、転職が得意な人と要領の悪いタイプとがいる。転職が得意なタイプというのは、豊富で正確な転職情報を多く持っている人で、マメに常日頃から多くのエージェントや同業他社の人から情報収集しているような人達である。また、これは仕事にも通じるのだが、自分の見せ方、プレゼンテーションが得意という点も重要である。

以上の様に、外資系金融というキャリアを選択するのであれば、上記の様な工夫をして、少しでも長く働けるように頑張っておきたい。

②出来るだけ貯めておく…2億円目標

生涯賃金が同じでも、金融資産の金額は同じではない。
この点、これから外資系金融キャリアを考える人は、特に意識しておく必要がある。

外資系金融だからといって、理想的なお金の貯め方が出来ている人は必ずしも多くない。
その理由の1つは、運用に対する規制である。外資系に限らず、金融機関(特に証券会社、アセマネ)の役職員は、株式投資等に対する規制(業界/社内ルール)が厳しく、また、内部監査や外部検査等においてもこの点はチェックされる。このため、証券投資は行わず、資産の大半が預貯金という人も少なくない。

もう1つの理由は、結構お金を派手に使うのが好きな人が多いからである。(これはどちらかというと外銀にあてはまるのかも知れないが)。
もちろん、ストレスが貯める仕事であるので、時には派手に使って発散することも大事だが、それをやり過ぎると、収入に比して十分な資産形成が出来ないことになる。

そこで、金融資産の目標額を決めて、それに向けて、コツコツ積立投資をするのが望ましい。そして、金融資産の目標額は「2億円」が望ましい。何故なら、2億円もあれば、FIREの基準となる運用利回り4%を想定すると、リタイアした際に、年間800万円程度を確保することが可能だからだ。1億円だと400万円なので、これでは心許ない。

もっとも、2億円の金融資産を作るのは大変だ。毎月30万円を5%で運用できたとして、20年間で1.2億円強だ。これに退職金やRSUとかを足しても届かないかも知れない。

いずれにせよ、過度な贅沢は避け、若い時からコツコツ貯めていくことを心掛け、実践することが必要だ。

③失敗した場合の十分な挽回策を考える

どんな世界でもそうかも知れないが、いくら頑張っても、運の要素はあり、相場環境や上司等の事情で、途中で外資系金融キャリアから外れてしまうこともある。

そういった場合に、きっちりとしたキャリアの立て直しができるよう、様々なオプションを用意しておくことが必要である。

もっとも多いのは国内系金融への転職であろう。
少しでもいいポジションを取るためには、国内系金融に強いエージェントとの接触が重要になるし、いろいろな情報収集をする上で、国内系金融の友達も作っておきたいところだ。

また、外資系金融から離れると、その分、時間的、精神的な余裕はできるので、副業で頑張るという手もある。そのためには、SNSでの情報発信とか物販系のスキルが必要となる。そういったスキルは外資系金融キャリアだけでは得られないので、個人コンサルを受けるなどして、切り替える必要があろう。

以上の様に考えると、外資系金融キャリアで成功するのは決して楽ではない。
生涯賃金10億円の達成度という観点からは、ひょっとすると、商社で副業と運用を頑張った方が堅いかも知れない。

それでも、スキルを付けたい、金融プロフェッショナルとして成功したいという方は、こちらもご参照下さい。

<外資系アセマネへの転職の場合>
https://note.com/takatsu2019/n/n5d11f3b047da

<まずは国内系金融専門職への転身を考える場合>
https://note.com/takatsu2019/n/n836b54fc5ec6

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