序. 年収1000万円は今でもサラリーマンにとっても大きな目標か?
東京では年収1000万円では、それほど贅沢な暮らしはできないという。
しかし、サラリーマンで年収1000万円以上は約5%しかいない。地方と東京とでは、年収1000万円の価値に違いはあるかも知れないが、今でも年収1000万円は大きな目標になるだろう。
そこそこの大学を出て、大手企業に就職しさえすれば、定年までには年収1000万円には到達できるかも知れない。
しかし、今の若い人達は若い時の給与水準に拘る。また、終身雇用制度とセットの年功序列型賃金も将来存続している保証はない。そうなると、年収1000万円への到達可能速度(到達可能年数)が気になるところである。
1. 外銀(外資系投資銀行)
サラリーマンで年収1000万円に到達するのは、外銀(外資系投資銀行)だろう。
外銀のIBD、グローバルマーケッツ部門といったフロント部門であれば、1年目で基本給が1000万円位ある。これに年1回のボーナスが加わり、初年度から1000万円超えとなるのである。
もっとも、外銀を含む外資系金融機関の場合、部門・職種によって年収水準は異なる。このため、オペレーションやITのようなミドルオフィス、人事・経理・法務コンプライアンスの様なバックオフィスについては、フロント部門よりも年収水準は低い。
だいたい基本給が600-700万円で、ボーナスが100-200万円程度だとすると、1000万円に到達できないケースが多いだろう。
また、外資系金融には外銀の他、外資系運用会社(アセマネ)もあるが、アセマネの場合は外銀よりも年収水準は低い。基本給(ベースサラリー)とボーナスを合わせても年収1000万円には到達できないケースが多いと思われる。
2. キーエンス
外銀の次に年収1000万円に早く到達できるのはキーエンスであろう。
キーエンスの場合、初年度から年収700万円位が期待できるトップクラスの高給企業であるが、入社2年目くらいに早くも1000万円に到達可能である。国内企業としては、異例の早さである。
キーエンスではその後も着実に昇給をし続け、30歳時点では年収2000万円も可能な日本一の高給企業と言っていいだろう。
しかし、大阪本社で転勤のリスクがあり、汎用的なスキルが付きにくいと思われていることから、就活難易度・就職偏差値においては、国内トップではないところは興味深い。
<キーエンスの年収、キャリア等について>
https://career21.jp/2018-11-20-094949/
3. BCG等の戦略コンサルティング・ファーム
マッキンゼー、BCG、ベイン、ATカーニーといった戦略コンサルティング・ファーム(いわゆる戦コン)は、外銀と同様に就職難易度は最高水準であり、ハイスぺ学生にとっての憧れである。このため、外銀には劣るものの、給与水準は非常に高い。
給与水準は企業によって微妙に異なるが、例えば、BCGの場合、初年度の年収は700万円程度である。そして、2年目以降にシニアアソシエイトになると800万円以上となり、だいたい3年目位には年収1000万円に到達可能と言われている。
https://gaishishukatsu.com/company/3/salary
昔は、マッキンゼーやBCGは、新卒は1学年5-10人程度のごく少数しか採用しなかったが、最近は40人程度に新卒採用枠が拡がっているようだ。無事入社出来てもその後の競争が厳しいが、転職能力は高く、魅力的な就職先と言えよう。
4. 5大商社
就活難易度で国内系最高峰の5大商社の昇給ペースは早い。
初年度こそ年収400-500万円程度で、特別高くはないが、入社2年目にはボーナスが2回もらえるので約700万円位に跳ね上がる。そして、3年目になると、約900万円になる。
年収1000万円に到達できるのは、入社4年目位だろう。(残業代やボーナスの水準によって微妙に異なる。)
商社冬の時代の頃は、これほど昇給ペースは早くはなく、大手金融機関とほぼ同じようなペースであったが、今ではかなりの差がついてしまった。
就活生は初任給や若い時の給与水準を重視するので、5大商社の人気が高いのは理解できる。また、年功序列・終身雇用のカルチャーであるので、入社さえできればほぼ全員が4年目で大台に到達できるのが特徴である。
5. 東京海上日動火災、野村證券等の大手金融機関
東京海上日動火災、野村證券、日本生命といった国内系金融機関の業界トップ企業は、生涯賃金で見ると国内系企業ではトップクラスであるが、昇給ペースはキーエンスや5大商社に適わない。
東京海上日動火災や野村證券の場合、年収1000万円到達は入社6~7年目位であろうか。この点は、残業代やボーナス水準によって個人差はあるようだ。何とか20代のうちに、大台に達成できるというのがポイントであろう。
6. メガバンク
メガバンクは基本的に給与水準が高い。最初数年間の給与はそれ程でもないが、役職が付くと給与水準は一気に上がり、30歳で年収1000万円到達が可能である。
もっとも、三菱UFJ銀行は特別なスキルを有する場合には、他の総合職社員よりも高い給料も可能な制度を新設した。そうでもしないと、外資や商社等に採りたい学生を持っていかれてしまうからである。
また、みずほ銀行は2021年にも複数回のシステム障害の問題が生じており、三菱UFJや三井住友に差を付けられてきている。今のところ、3メガバンク間で顕著な給与差は見られないが、将来はどうなるかわからないので、各メガバンクの業績格差は要注意だろう。
7. 政府系金融機関
就活・転職の世界で使われる「政府系金融機関」という言葉は曖昧で、系統金融機関も含んだ使われ方もする。
広義の政府系金融機関ということで見ると、日銀、日本政策投資銀行(DBJ)、農林中央金庫、商工中央金庫あたりは高給である。他方、国際協力銀行(JBIC)は若い時の給与水準は相対的に低めである。
こういった金融機関は安定性、ステータス性などの理由から、メガバンク以上の就職偏差値を誇るが、年収1000万円までの到達速度はメガバンクよりも遅く、入社10年目位と言われている。もっとも、生涯賃金ベースで見ると、メガバンク以上だったりもするので、給与や福利厚生の水準は決して悪くはない。
8. 東京ガス、日本郵船などの事業会社
国内系の事業会社では、東京ガス、大阪ガス、日本郵船、商船三井あたりの給与水準は悪くない。ただ、昇給ペースについては、商社や大手金融機関ほどは早くない。
年収1000万円に到達できるのは、入社12-13年後の30代半ば位が目安だろうか。もっとも、残業代やボーナス水準によっては、東京ガスや商船三井では入社10年目位で大台到達という人もいるようだ。
こういった企業は、安定していて、WLBが良いとされているので、トータルで考えると魅力的な企業だと言える。
9. トヨタ等の高給メーカー
金融、商社、コンサルと比べると、メーカーの給与水準は低い。
日本のトップ企業のトヨタの場合、メーカーの中では給与水準はトップクラスであるが、年収1000万円到達は入社15年目位であろうか。35歳だとなかなか厳しそうである。
他に高給メーカーとしては、キリン、サントリー、味の素、AGC、富士フィルムなどがあるが、大台到達は最速でも35歳位ではないだろうか?
メーカーが産み出すプロダクトへの関心が高ければ、給与水準自体は特に気にしない人もいるかもしれないが、このままだと、優秀な理系を文系企業に持っていかれてしまうかも知れない。
今の日本の大手メーカーのカルチャーだと、年功序列・横並び色が強く、従業員の給与に差を付けにくいところはあるかも知れないが、将来優秀な社員を離さないためには何らかの対応が求められるだろう。
最後に
日本企業の場合、終身雇用・横並び色が強く、年収水準は業種・企業によって決まり、社員間の給与格差は大きくない。しかし、終身雇用や年功序列制度が崩れていくと、同一企業内の社員間格差が拡大する可能性はある。
また、副業・兼業も緩和の方向にあり、副業で稼げるか否かによって年収が違ってくる可能性もある。
短期的に給与水準は大きく変化しないだろうが、10年、20年先はどうなるかはわからない。年収1000万円までの到達年数を含む給与水準は、重要な企業選びのファクターであるが、稼げる社員になるにはどうすればいいか、また、副業で稼ぐにはどうすればいいかということも併せてキャリアプランを練る必要があるだろう。
※年収1500万円までの到達年数については、こちらをご参照下さい。
https://career21.jp/nenshu1500/