1. サラリーマンが年収1500万円に到達すること
どんな職業であっても年収1000万円というのは大変だ。東京の様な生活コストが高いところでは、年収1000万円では思ったような暮らしができないという意見もあるが、だからといって年収1000万円の価値が無いということにはならない。それを実現するためには、かなりの努力や時間が必要となるだろう。
ましてや、年収1000万円を超えて年収1500万円をサラリーマンが実現することは更に大変だ。大企業の中でもトップクラスの企業に就職して、更に、管理職にならないと実現することは難しい。
ただ、企業によっては10年もかからずに年収1500万円が実現可能なところがあり、それらについて以下でまとめてみた。就職や転職の際、ご参照ください。
2. 外銀
サラリーマンで年収1500万を最速で達成可能なのは、外銀(外資系投資銀行)であろう。外銀の場合、部門別採用を行っているので、IBD、市場部門とミドル・バックオフィスとでは大きく給与水準が異なる。
このため、最速で年収1500万円を達成可能なのは、IBD、トレーディング・セールスといったフロント部門である。
外銀のフロント部門の場合、初年度で年収は1000万円を超える。そして、2年目になると、1500万円以上が見込まれる。
これは、サラリーマン以外の高収入な職業である弁護士や医師と比較しても十分早いと思われるが、新卒で外銀のフロント部門から内定を取るのは非常に大変である。そして、入社後も非常に厳しい社内競争とハードワークが不可避であり、3年後のアソシエイト昇格時には少なくも半分以上は退職している厳しい世界である。早く稼ぐためには、相応の努力や苦労がついてくるのである。
3. BCG等の戦コン、外資系アセットマネジメント、キーエンス
①BCG等の戦コン
外銀の次に年収1500万円に早く到達できるのは、BCG等の戦コンであろう。コンサルは一般的に高給であるが、その中でも特に高給なのは、BCG、マッキンゼー、BainのMBB
とATカーニーあたりである。総合コンサルや、戦コンといってもDI(ドリームインキュベーター)、コーポレート・デイレクション、経営共創基盤等の給与水準はそこまでも高くはない。
BCG等の戦コンの場合には、早ければ入社3~4年目で年収1500万円に到達が可能であろう。もっとも、BCG等の戦コンの場合も外銀同様に、新卒として内定を取るのは非常に難しいし、入社後は非常に厳しい社内競争にさらされる(いわゆるup or out)ので、日本企業の様に年功序列で自動昇給するわけではない点について留意が必要だ。
②外資系アセットマネジメント
外資系アセットマネジメントの給与水準は外銀と比べると劣るが、それでも一般的にはかなりの高給である。
ただ、外資系アセットマネジメントの場合は、Goldman Sachs Asset Management(GSAM)、JPモルガン・アセット・マネジメントのような投資銀行系やFidelity、ブラックロックの様な最大手しか新卒採用は実施していない。このため、限られたケースではあるが、入社4~5年目位になるとボーナス次第だが年収1500万円を達成することも可能となる。
③キーエンス
キーエンスは国内系の企業の中でトップの高年収企業である。初任給は700万円、2年目で年収1000万円に到達。4~5年位にはボーナス次第で年収1500万円には到達可能であろう。
キーエンスの場合は、上述した外資系企業とは異なり、少なくとも最初のうちは年功序列で昇給していき、離職率も外資系企業と比べると遥かに低い。このため、一旦入社すれば、年収1500万円を達成できる可能性は相対的に高いのが特徴である。
給与水準という点に関して見ると、国内系企業ではトップのはずだが、入社難易度については商社や国内系IBDや電通・博報堂の方が難しい。これは、大阪本社で転勤があることが敬遠されたり、汎用性のあるスキルが付きにくいという点がトップ就活生からは好感されないようだ。しかし、これは入社難易度の割には非常に待遇がいいということなので、狙い目の企業と見ることもできる。キーエンスに対する就活や年収の詳細については、以下の記事をご参照下さい。
<キーエンスのブログ記事>
https://career21.jp/2018-11-20-094949/
4. 商社、野村證券IBD他
①商社
就活において商社は国内系最難関である。年収だけで見ると、上記のキーエンスの方が高いが、入社難易度については商社の方が難しく人気は高い。
商社の中でも5大商社、更に、三菱商事、三井物産、住友商事の財閥系が特に高給で知られている。業界トップの三菱商事だと、入社8年目の30歳時点で年収1500万円も可能のようだ。少なくとも、入社10年目においては、財閥系商社であれば年収1500万円に達すると見られている。
商社の場合は、典型的な日本型企業であるため、年功序列・横並びの評価が強く、新卒入社をすれば年収1500万円に到達できる可能性は非常に高い。この点は、外資系と比べると非常に恵まれた点である。さらに、海外駐在をすると様々な手当てが付くし、家賃は会社負担となるので、20代でも家賃を含めた実質年収は2000万円以上にもなるという厚遇である。
もっとも、商社の年収に占めるボーナスの割合は比較的高いので、業績次第では年収1500万円到達時期が遅れるリスクはある。
②野村證券IBD他
野村證券等の大手証券会社は全般的に給与水準が高い。野村證券は業界トップ企業であるため、特にその中でも高給だが、それでも商社のような早さで年収1500万円に到達するのは難しい。
但し、野村證券の中でも、IBDやグローバル・マーケッツ部門においては新卒時点で一般的な総合職とは別採用になっており、昇給ペースも早い。
このため、IBDやトレーディング部門等においては、最速でVPに昇格できれば商社同様に入社8~10年目での年収1500万円到達は十分可能である。
もっとも、IBDが他の部門より優遇されているのは、IBDの収益性との関係で社内的な批判もあるという。このため、今後は従来の様な給与水準が維持されるかは不透明なところもある。また、商社と同様に、ボーナスの比率が高いので、業績によっては想定される時期よりも年収1500万円到達が遅れるリスクもある。
5. 東京海上日動火災
東京海上日動火災は昭和の時代からのエリート企業である。当然給与水準も非常に高い。年収1000万円については30歳時点でほぼ全員が到達可能である。
しかし、年収1500万円となるともう少し時間がかかる。早くても、入社14~15年目の課長昇格時点であろうか。
ただ、気がかりな点は、東京海上日動火災の年収水準は長期的に下がっていることである。日動火災と合併したからか、国内市場メインの損保という業界が理由なのかは定かでないが、将来的にこの昇給ペースが維持されるかは不安な点がある。
もっとも、東京海上日動火災の場合、給与水準だけでなく、退職金、企業年金その他の福利厚生も非常に充実している。また、損保ビジネス自体は少子高齢化に伴う国内市場の縮小が危惧されるものの、業績は安定している。それに、生損保の中では海外事業の拡大や新規事業への対応が進んでいる。トータルで考えると、まだまだ東京海上日動火災は魅力的な企業と言えるのではなかろうか。
6. メガバンク
銀行は昔から一般的に給与水準は高い。そして、国内系の銀行の中ではトップのメガバンクの給与水準は特に高い。商社よりは劣るが、30歳時点では年収1000万円に到達する。この点は大手証券会社や大手千損保と同じようなペースである。
ただ、年収1500万円となると、そこから結構時間はかかる。早くても到達時点は、40歳前後であろうか。もっとも、メガバンクの場合、社内競争はそれなりに厳しく、30歳を過ぎると同期での差は拡がっていく。このため、全行員が40歳で年収1500万円に到達可能な訳ではない。
また、三菱UFJ銀行については、DX、クォンツ、戦略財務会計、富裕層金融といった専門職種については新卒時点で別採用を行い、一般の総合職よりも高い初任給の付与も可能な制度を作った。将来少子高齢化とITの進展によって国内リテール部門のあり方が大きく変容することが予想されるが、そうなると、10年後、20年後は今以上の社内の給与格差が拡大する可能性がある。
従って、メガバンクに入社する場合、従来の様な年功序列に期待すべきではなく、どういったスキルをつけて行内で生き残れるかまで考えるべきであろう。
最後に ~将来は副業でどれくらい稼げるかも影響するか?~
以上は、会社からの給与収入に限定した話である。今後、兼業・副業が大企業においても緩和されていくことが予想される。既に、商社では丸紅が、メガバンクではみずほ銀行が副業を解禁している。
そうなると、副業でいくら稼ぐことができるかによって、実質的な年収1500万円への到達速度も違ってくる。日本の優良企業の場合、年収1000万円までの到達速度は早くても、そこからの伸びが遅い傾向にある。例えば、メガバンクのケースだと、30歳で1000万円に到達した後、500万円増やすのに10年位かかることになる。
しかし、副業で月に十数万円位稼ぐことが出来れば、5年間前倒しで、35歳時点で年収1500万円も到達可能である。
さらに、高い給与に加え副業で稼ぐことによって、余裕ができると不動産や有価証券投資に振り向けることも可能となる。そうなると、持っている財布の数が増えていくことになるので、トータル年収では同じ会社の給与収入1本のみの人との差は大きく開くことになる。
将来的には、会社からの給料だけではなく、副業や投資による収入までも視野に入れた対応ができるエリート・サラリーマンが真の勝者になれるのかも知れない。