メガバンク勤務の20代がメーカー経理への転職を考えたこと

1. キャリアについて悩みの多い銀行員?

メガバンクは安定しているし、社会的な信頼性は高いし、給与水準も良い。
そして、特にメガバンクの若手は、経済や金融に関する基礎知識を持ち、銀行で厳しく鍛えられているというイメージがあるため、第二新卒を含む転職市場において高評価だ。

もっとも、メガバンクの若手行員の離職率は結構高い。
銀行特有のカルチャーが合わない人もいるが、メガバンクの若手は高学歴が多く、大学同期が多方面で活躍していたりする。例えば、大学同期が商社マンで世界中を飛び回っていたり、外資金融で専門職に就き高給をもらっているのを見ると、キャリアチェンジを考えたくなる場合がある。

また、メガバンクは職種別採用を行っているので、オープンコースの総合職で入社した場合、憧れの市場部門や海外部門に異動するのは結構難しい。そして、早慶クラスの場合、最初の配属先が支店でリテール関係の仕事というのは仕方が無いにしても、2ケ店目もリテール営業となると、「俺はこの先、一生リテール営業か」と感じ、転職でキャリアチェンジを検討したくなるケースは少なくない。

2. ある20代後半のメガの銀行員の転職活動

①若手のメガバンカーは転職市場では人気のはずだが…

ある20代後半のメガの銀行員が転職活動をすることに決めた。
転職活動をしたいと考えたきっかけは、上記の通り、2ケ店目の配属もリテールだったことで、金融専門職とか外資系とかベンチャー系とか、専門的なスキルを活かして活躍したいと考えたからだ。

この銀行員は、なるべく多くの選択肢が欲しいと考えたため、最大手のリクルートエージェントに登録した。また、同時にビズリーチにも登録した。

そうすると、高学歴(早慶)で20代と若いメガバンカーは転職市場で人気があるので、いろいろな案件が送られてくる。

しかし、彼の弱みは、学歴と会社名以外に、これといった職務経験、スキルが無いことである。英語は全くできないし、証券アナリスト(CMA)とかUSCPAといった資格も無い。また、銀行ではリテールの仕事しかしていないので、IBD、市場部門、アセマネ等でアピールできるような業務経験は無い。

このため、国内系証券のIBDとかアセマネの運用部門に応募をしてもレジュメが通らない。また、英語が全然できないので、外資系金融のポテンシャル採用も厳しい。

エージェントからは、アクセンチュアとかベイカレントの様な総合コンサルを勧められるが、特にIT系のコンサル業務には特に惹かれないし、今からスキルや経験ゼロで新卒組に勝てる自信も無い。このため、総合コンサルには応募はしなかった。

②上場メーカーの経理のポジション

金融専門職への転身は難しそうだと彼は悩んでいたところ、ビズリーチ経由で、事業会社に強いエージェントから案件が紹介された。これは、上場している機械系メーカーの経理職のポジションである。

年収は下がるが、20代後半の彼の年収は700万円弱である。メガは30歳の直前位から大幅に年収が増加するので、彼はまだそこまで高給にはなっていない。従って、そのキャリアの将来の展望が明るければ、年収減となる転職もアリだと考え、彼は応募してみることにした。

その上場メーカーとは相性が良かったのか、面接はトントン拍子に進んで行った。
そして、オファーに至ったが、年収は600万円を下回る水準で明らかにダウンである。しかし、一貫して経理の専門家としてキャリアを拓いていける可能性があるし、海外勤務の可能性もあるという。また、今のメガバンクのリテールの仕事を今後も続けることを考えると、メーカー経理のポジションを前向きで考えたいと思うようになった。

3. 高給メーカー勤務の先輩のアドバイス

メガバンクの彼は、銀行員だけあって慎重派で、決して猪突猛進型ではない。
このため、メーカー経理のポジションに興味はあるが即決できず、ゼミの1学年上で高給メーカーに就職した先輩に相談することとした。

すると、メガバンクの彼は若干意外であったが、高給メーカーの先輩のアドバイスは明確だった。

「メガにいた方がいいんじゃないかな。理由は給与水準が違い過ぎるからだ。そこのメーカーは特に給与水準が高くはない。メガだとあと数年で1千万に到達するだろうが、そのメーカーだと40歳でも到達しないだろう。40歳を過ぎて、メガの同期が1400-1500万もらっているのに、自分が800-900万位だと後悔しないか?それに、退職金とか企業年金等の福利厚生も、メガの方が総じて厚遇だ。

もちろん、どうしてもやりたい仕事なら大幅な年収減でもOKかも知れない。ただ、お前はもともとメーカー経理をやりたかった訳じゃないだろう。メーカーの経理の仕事が楽しいかどうかなんて、やってみないとわからないし、給与差を埋められる位の魅力があるとも俺には思えないな。

それに、俺はメーカーだと最高給の部類だが、大手金融機関の7-8掛け位だ。だから、俺も大手金融に行っていた方が良かったかなと考えたりする時もあるんだよ。

今の銀行の仕事が面白くないのは何となくわかるけど、それは他も同じじゃないかな。消去法で、給与が大幅ダウンとなる転職をするのはリスクが高すぎる。それなら、金融機関のランクを落として、自分のやりたい金融専門職を狙う方がまだいいんじゃないか?」

4. 大手金融機関の転職の難しさ

結局、このメガバンクの20代後半の彼は、先輩の話を聞いて、上場メーカーの経理職のオファーは断ることとした(エージェントからはかなり嫌みを言われたが…)。ただ、このオファーを断ったところで、彼の悩みが消えるわけではないが、とりあえず安定した高給を享受しつづけ、その後のキャリアについてはじっくりと考え直すことにした。

大手金融機関の待遇は良いが、仕事のやりがいとか楽しさに関する満足度は必ずしも高いとは限らない。ただ、年を取るにつれて、転職の選択肢は減っていく。どうしてもキャリアチェンジをしたいなら、私費MBAを検討するとか、かなりのエネルギーを費やす必要があるだろう。

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