序. 早稲田、慶應の就活生にとって「とりあえずメガ」は正解か?
①メガバンクの行員の第二新卒市場における評価は高いが…
5~6年前の好況期においては、メガバンク各行は新卒市場で大量採用をしていた。今では、メガバンクの新卒採用数は当時の1/3以下に減少したが、それでも、早慶、MARCH等の有名大学から多くの学生がメガバンクに就職する。
メガバンクは信頼性が高く給与水準も良い。そして、金融や企業会計の基礎を就職できるとあって、第二新卒市場の評価も高く、若い時は転職しやすいという特徴がある。
このため、やりたい仕事が特に見つからない有力校の学生達が、「とりあえずメガ」という考え方をするようになるのも理解出来なくはない。
②しかし、長期的なキャリアを考えると、本当に「とりあえずメガ」でいいのか?
メガバンクに入校すれば、仮に合わなくても第二新卒では他業界にも転職し易いし、まずまずだと思えば定年までは保証されないにせよ生涯賃金は高い。こう考えることができれば問題は無いが、長期的なキャリアを考えると、いろいろと問題はある。
まず、メガバンクは総合職においてコース別採用を行っている。また、コース別採用でなくとも、ボスキャリルートで留学経験者を実質的に別採用している。このため、入口でオープンコースで入行すると、途中で、海外/国際部門、市場部門、企業金融部門等の花形部署に異動するのが昔よりも狭き門となっている。
また、メガバンクは東大、京大、一橋、阪大等、有力国立大学からも大量採用していて、伝統的に学閥志向が強い(特に財閥系)。そうなると、社内での出世競争が厳しく、早慶クラスでも勝ち抜くのは大変だ。
そして、上記とも関連するが、専門職に就けずにリテール部門になると、全国転勤のリスクがある。その場合、30歳を過ぎると、転職によって金融専門職(IBD、アセマネ等)に就くのは非常に難しくなるし、総合コンサルも未経験の30代は基本的に採ってくれないだろう。
今はまだ大丈夫かも知れないが、10年後、20年後、終身雇用が今よりは揺らいでいる可能性はある。そうした中、特段の専門スキルが無いと厳しい状況に置かれるリスクもある。
③金融志望の場合、メガ以外の銀行や、他業態も見た方がいいのではないか?
上記の様に、長期的なキャリアを考えると、メガバンクを選択するリスクはある。
そこで、メガバンクよりは銀行としての格・知名度・年収は若干落ちるかも知れないが、専門スキルの習得を重視するという選択肢もある。
また、メガバンクの子会社的な位置付けという問題点はあるが、スキル、WLB、社内競争等を踏まえて、リース会社やカード会社にするという選択肢もある。
さらに、政府系/系統金融機関や、外資系生保、VC、フィンテックという切り口もある。
以下、そういったメガバンク以外で、何らかの魅力を有する金融機関について紹介する。なお、おすすめ順ではなく、順不同である。
2. 新生銀行 ~コース別採用が狙い目~
新生銀行は、不動産ファイナンス、ベンチャー投資、プロファイ業務に特徴があり、傘下にアセマネや信託子会社も有する。年収は、10年目で900~1100万、40歳で1100~1300万位が目安でメガより若干劣る。しかし、WLBに優れ、社内競争環境は緩やかである。
早慶クラスでメガバンク志望の学生にお勧めなのが、ストラクチャード・ファイナンスコースである。3年後、5年後を考えると、メガバンクのリテール部門にいるよりも高い市場価値を狙うことが可能である。
他にも、新規事業関連等、いろいろなコース別採用が用意されているので要検討だ。
https://www.shinseibank-recruit.com/information/index.html
<新生銀行に関する過去記事>
https://career21.jp/2019-04-18-092153/
3. あおぞら銀行
あおぞら銀行も、新生銀行と同様の魅力がある。確かに、メガバンクよりも知名度・給与水準では劣るものの、WLB、社内競争等を踏まえると十分に魅力はある。
あおぞら銀行の場合も、コース別採用が魅力である。コーポレートファイナンス業務、
国際関連業務、スペシャルティファイナンス業務、マーケット業務から選択して応募が可能で、配属先が保証されるのは非常に大きい。難易度は高くなるが、メガバンクの専門職コースよりは内定を取り易いので、挑戦する価値はあろう。
https://www.aozorabank.co.jp/recruit/graduate/info/course.html
<あおぞら銀行に関する過去記事>
https://career21.jp/2019-05-17-172402/
4. 三菱UFJ信託銀行、三井住友信託銀行
いわゆる2大信託銀行については、多くの早慶の学生が入社している。このため、穴場感は無いかも知れないが、メガバンクを真剣に志望するのであれば、併せて信託銀行も検討してみるべきだろう。
信託銀行は地味目な存在だが、証券運用、不動産運用、各種信託業務、プライベート・バンキングと様々な専門業務に従事できるし、年収は40歳の本社課長で1400~1500万と悪くない。証券運用部門だと外資アセマネへの転職も可能だ。
もっとも、残念なのは、昭和の時代から、配属ガチャでハズレくじも混ざっていること。この点は、メガバンクと同じである。
5. 信金中金 ~地域金融・中小企業金融に関心が高い人には魅力~
早慶クラスの学生で、メガバンクを真剣に検討しているのであれば、農林中金や商工中金あたりはカバーしているかも知れない。
ただ、信金中金となると、結構マニアックかも知れない。
信金中金は、東京駅近くの八重洲に本店を構える。業務は、信金のサポートと運用の2本立て。年収は、30歳の調査役で約800万、40歳で1000~1100万位で、給与水準という点においてはメガバンクには劣ってしまう。
しかし、年功序列が強く、激しい出世競争を好まず、中小企業のサポートや地方創成に関心がある穏やかなタイプには向いていると思われる。地方勤務が嫌いでなければ、こういう選択肢もあるだろう。
もっとも、採用人数が少ないので必ずしも簡単に内定が採れるわけではなく、相応の準備が必要になろう。
<信金中金に関するブログ記事>
https://career21.jp/2019-05-17-100031/
6. 三菱HCキャピタル(旧三菱UFJリース)
メガバンクを志望している学生が、リース業界に対象を拡げるのは抵抗感があるかも知れないが、魅力もある。
三菱HCキャピタル(旧三菱UFJリース)は。B to BでWLBに優れ、年収もメガには及ばないが30歳で700-800万、10年目位には1000万円到達が可能である。そして、出身校的にはMARCHがメインであり、早慶の学生にとっては、新卒での内定の取り易さや入社後の社内競争を踏まえると、メガバンクよりも魅力はあるのではないか。
但し、親銀行からの天下りがあるので、部長以上への出世が難しいのが欠点か。ただ、合併後どうなるかが気になるところだ。
<三菱HCキャピタルに関するブログ記事>
https://career21.jp/mufg-leasing/
7. JCB ~カード業界はどうか?~
金融志望の学生もカード業界までは視野に入れていないケースも少なくないだろう。だからこそ、穴場と言える。早慶クラスの学生の場合、狙いは業界トップのJCBだろう。
JCBの場合、年収に関しては、5年目で650~700万、30歳で800万、30代半ば以降に大台到達、40代で1200万というイメージである。メガバンクと比べると劣るが、悪くはない水準だ。
20卒については、東大・一橋はゼロでMARCHが結構多い。年俸ではメガに劣るが、マーケティング、決済、フィンテック等の面白い仕事もあるし、転職先として外資カード会社もある。親銀行からの天下りが残念な点は、三菱HCキャピタルと同様である。
<JCBに関するブログ記事>
https://career21.jp/2019-05-17-122610/
8. アフラック ~特に女性におすすめ~
早慶でメガバンク志望だと、生損保では日本生命や東京海上日動火災はマークするだろうが、アフラックまではチェックしない場合も多いのではないか?金融機関の場合、規模とステータスが連動するところがあるので、上位校の学生は規模に囚われがちだ。
しかし、アフラックは外資系と国内系の両方の要素を備えており、特に女性は検討する価値はあろう。
アフラックは、年収水準は30歳で800万前後、30代半ばで1000万到達、40歳の課長で1100-1300万と、国内生保トップには敵わない。しかし、退職金・年金に加え、家賃補助や持ち株会の奨励金等福利厚生は手厚く、WLBも良い。産休やリモワなど特に女性が働きやすい環境のようだ。
外資系と言っても、新卒段階で必ずしも英語力が求められる訳でも無いので、併願することは十分可能だろう。
<アフラックに関するブログ記事>
https://career21.jp/2019-05-14-130510/
9. VC:ベンチャーキャピタル
新卒でVCというとかなりマニアックだ。昔から国内系大手としては、ジャフコや大和企業投資が有名だ。
起業が浸透するに連れ、VCの注目度もじわじわと高まってきた。独立系VCの場合、パートナーになるとかなりのアップサイドの可能性もあり人気は高い。しかし、ごく僅かしか採用しないし、コネも多い。このため、中途でVCに入るのは結構ハードルが高い。
起業に関心が高い学生は、新卒段階で当たってみる価値はあるだろう。
<独立系VCに関するブログ記事>
https://career21.jp/2018-12-12-081754/
10. フィンテック系
5~6年ほど前には、フィンテックが注目され、ロボアドバイザーのウェルスナビはIPOまでたどり着けた。しかし、それ以外はあまり目立った成功事例は見られない。一時期、決済系のフィンテック企業が注目されたが、収益性が低く、今どうなっているのだろうか?
仮想通貨も、コロナ下において相場は一時非常に盛り上がったが、仮想通貨交換業界については、まだまだ先行きが見えない状況にある。
このため、今からフィンテック系の仕事に新卒で就きたいという学生は多くないと思われるが、関心があれば狙うのは楽天のフィンテック部門ではないだろうか?何故なら、楽天の場合は、ECビジネスや金融事業が強く、勝ち組のポジションにあるし、他の部門への異動の途があるからだ。
「とりあえずメガ」という発想自体は間違っているとは思わないが、メガバンクを辞める若手は結構多いし、30歳を過ぎると思ったような転職力は無いはずだ。このため、新卒段階でも、他の金融機関もいろいろと検討しておきたい。