サラリーマンが年収アップを実現する方法。転職だけではなく在籍中の会社でも可能?

サラリーマンが年収アップを実現する方法と言うと、すぐに転職が思い浮かぶかも知れない。しかし、転職しなくても現在在籍中の会社でも年収アップを実現する方法はある。結果的に転職することになったとしても、現時点での年収が転職時の年収を決定する際の参考になるので、年収アップが可能であるならば実現しておいた方がいいだろう。

1. 現在在籍中の会社での年収アップを実現する方法

①労働時間を増やす(残業代を稼ぐ)

もっとも単純にサラリーマンが年収アップを図る方法としては、残業時間を増やして残業代を稼げばよい。しかし、最近では働き方改革ということで、残業することが難しくなってきた。また、現実的には企業によっては残業代がきっちりと支払われないケースもあるだろう。

従って、この方法は単純ではあるが、戦略的にはあまり良い方法ではないかも知れない。

②評価を上げる(賞与や昇給)

転職を考える前に、まずは今の会社で頑張れないかを考えることは重要だ。
優良企業の場合は、頑張って評価・査定が上がれば、それが賞与や昇給・昇格につながり、年収アップが実現できる。

日本の大企業の場合は、頑張って評価を上げたところで、年間せいぜい数十万円位しか変わらないという見方もある。

他方、日本企業は年功序列であるので、それなりに真面目に働けば、昇格が見込めるという特徴もある。外資系の場合は、タイトルの1ランクの違いが日本企業以上に大きい場合がある。従って、転職時に課長未満と課長で、マネージャークラスで転職できるか否かに影響することがある。また、全くタイトル無しの平社員で転職するのと、係長・課長代理のタイトルがついているかで差がつく場合もある。

従って、転職することに決めたとしても、転職前にタイトルや年収を高めておいた方がいいので、今いる会社で頑張って評価を上げるというのは意味がある。

③高収入・高評価が狙える部署への社内異動を狙う

日本企業の場合は、部署や職種によって給与水準が大きく異なることは無いかも知れない。
しかし、金融機関の場合には、事業会社よりも部門による給与格差が大きい場合がある。
また、IT系人材は引く手あまたなので、厚遇する必要も生じている。

三菱UFJ銀行が特別なスキルを有する学生には、他の新入社員よりも高給を確約する制度も設けている。今後、この傾向は拡がっていくことが予想される。

このため、わざわざ転職しなくても、今の会社で高収入・高評価が狙える部門への異動を狙うというのはキャリア戦略上非常に重要だ。

ジョブ型雇用というキーワードが流行り始めているが、今後は会社名だけではなく、部門や職種が年収を左右するようになるだろう。当然、そういう部門にいると、市場価値が高まり、転職した場合には更なる年収アップも可能となろう。

もっとも、日本の大企業の場合、部門超えの社内異動は非常に難しい。そういった花形部署は多くの社員が希望するからだ。また、現在いる部署が社内的に弱い部署であると、個々の社員は優秀でも希望はかないにくい場合もある。

特に金融機関の場合、IBDやグローバルマーケッツ等においては新卒段階からコース別採用を導入しており、総合職のオープンコースで入社した場合には途中でその手の部門へ異動するのは非常に難しくなっている。

このため、頑張って花形部署への社内異動を図ることは大切だが、難しそうであれば、転職を考えた方が良い場合もあるだろう。

④歩合制に変える

同じ会社でも、歩合制度に切り替えてもらえることができれば、業績次第では大幅な年収アップも可能だろう。

M&A仲介、歩合外務員、保険セールス、不動産販売等の営業職においては、歩合制度を用意している会社がある。自信があれば、歩合制で挑戦するのもいいだろう。

もっとも、一般的に歩合営業で成功できる社員はほんの一握りであることが多いので、成功できるかどうかについては慎重に検討した方がいいだろう。

なお、ベンチャーや中小企業の様な小規模な会社であれば、企業としての歩合制度は無くても、経営者との距離が近いので交渉で給与体系を変えてもらえる場合もある。

⑤副業・兼業

働き方改革の一環として、副業・兼業が注目されている。一部のIT企業だけではなく、副業・兼業緩和の流れは今後拡大して行くだろう。

しかし、サラリーマンをやっていると、副業といっても何をやればいいのかよくわからない。少し前は、ブログを始めてアフィリエイトをやれば簡単に月数万円程度のお小遣いが稼げる良い時代もあったが、2019年頃のGoogleアップデイト以降、そう簡単には行かなくなった。

ただ、サラリーマンが給料以外に収入を得るのは意味がある。自立というほど大げさなものではないかも知れないが、給料以外で収入を得ることができると嬉しいものである。従って、何でもいいので、先ずは月2~3万円程度の副業収入を目指せばいいのではないか?

クラウドワークスやランサーズ経由でライティングや動画編集の様なものでもいいし、ネットとは無関係な塾や家庭教師の副業でも構わない。或いは、メルカリやヤフオクで物を売るのが得意であれば、仕入れも始めて「せどり」やECに進めて行くのも面白い。

月に2~3万円から始めて、次は5万円、そして10万円と拡大していくことができれば、独立も視野に入って来る。サラリーマンがいきなり起業を始めるのはリスクが高いが、副業を利用してお試しで小さく始めてみればよい。

まだまだ周りに副業でそれなりに稼いでいるサラリーマンは少ないだろうが、だからこそ、早めに始めておきたい。

⑥資産運用

資産運用には、株や債券に投資をする有価証券運用と、アパート経営などの収益不動産の運用とがある。サラリーマンの場合は、なかなか投資をするような経済的な余裕は無いだろうが、有価証券投資も月々1万円からの積立投資は可能である。若い頃は、儲けるのではなく、将来に向けて金融リテラシーを高めるような目的で始めてみてもいいだろう。

2. 転職によって年収アップを図る方法

サラリーマンの年収アップの手段として、転職がすぐに思い浮かぶだろうが、転職にもいろいろなパターンがあるので、整理しておきたい。

①外資系企業への転職

外資系企業というと高年収のイメージが沸くかも知れない。
確かに、外資系金融機関、外資系コンサルティング・ファーム、外資系IT企業については、国内系の同業の企業よりも概して高給である。

しかし、製薬会社や保険会社の場合は、必ずしも外資系企業の方が高給とは言えない。また、外資系消費財企業は国内系の同業よりは高給かも知れないが、国内系の金融、商社、マスコミ等と比べるとそれほど高給でもない。

ただ、外資系企業の場合は一般に終身雇用が保証されているわけではなく、パフォーマンスが悪いとクビもあり得るので、相対的にリスクは高い。このあたりを考慮した上で、外資系企業に転職すべきか否かを考えた方がいいだろう。

②同じ業界で業界順位が高い企業への転職

同じ業界で同じ職種であれば、転職のチャンスは十分にある。そして、一般的に業界上位企業の方が給与水準は高い。このため、年収アップを目指して業界順位が高い企業への転職を狙う戦略は悪くない。

例えば、地銀からメガバンク(或いは新生銀行、あおぞら銀行)、三菱UFJモルガンスタンレー証券から野村證券への転職、パーソルからリクルートへの転職をすると、年収アップは実現可能だ。

もっとも、日本企業の場合は、昇格・出世においては生え抜き重視である。このため、転職カードを切って、業界順位が上の企業に行くと年収は上がるかも知れないが、出世の点では不利なところもある。今の会社で出世をした方が生涯賃金は高い場合もあり得るので、この点は十分に検討すべきだろう。

③同じ業界で異なる職種を求めての転職

日本の大企業の場合、部門超えの異動は難しい。特に金融機関のIBDや市場部門の様に、コース別採用を実施している会社では、社内の競争も厳しい。

そこで、自分の希望する職種に就くことを求めて、他社に転職をする戦略もある。例えば、メガバンクや大手証券会社のリテール部門から、運用会社(アセマネ)への転職を狙ったり、メガバンクのリテール部門から、新生銀行やあおぞら銀行の市場部門への転職を試みるケースである。

こういった場合、年収アップは難しいが、転職先で経験を積めば将来外資系に行ける可能性があれば、長期的には大幅な年収アップも可能である。従って、市場価値の高い職種を求めての転職は戦略的に重要な意味がある。

もっとも、同じ業界内でも、当該職種の業務経験が無い状態での転職は難しいのが難点である。どうしても、やりたい職種に就きたいのであれば、私費でMBA留学をしてキャリアをリセットした方が手っ取り早いケースも少なくない。

④業界を変えるための転職(給与水準が高い業界への転職)

給与水準は業界によって決まる。従って、給与水準が低い業界から高い業界に転職すると、年収アップは簡単に実現できる。例えば、介護、外食、塾、ホテル、流通系の業界から、金融、商社、コンサル、マスコミなどに転職すると年収水準は大幅に上がるだろう。

ただ、課題は、業界超えの転職は必ずしも容易ではないということだ。経理、人事、IT、法務といった職種の場合は、同じ職種での転職を前提とすると可能性はまだあるが、業種も職種も無関係であれば採用する理由は無い。

この点、高学歴だったり、語学が堪能だったりすると、未経験でも第二新卒で業界超えの転職が可能な場合もあるので、早めに挑戦した方がいいだろう。

⑤ベンチャー企業への転職

既上場のメガベンチャーを除く、狭義のベンチャー企業の場合、給与水準は低い。マネージャークラスでも500-600万円、CXO等の経営幹部でも800万円~1000万円程度であることが多い。

大企業から転職すると年収アップは難しい。結局ベンチャー企業への転職で年収アップが実現できるとすればストックオプションであろう。ただし、ストックオプションをもらったところで、上場できないと単なる紙切れに過ぎない。そして、自分が在籍中に当該ベンチャー企業が上場できる確率は非常に低い。

ベンチャー企業の場合、成功者は非常に注目されるハロー効果があるので、これに引っ張られる人もいる。しかし、確率的には低いことは間違いないので、年収アップのためにストックオプションでひとやま当ててやろうとは安易に考えない方がいいだろう。

3. サラリーマンが年収アップを考えるにあたっての留意点

①長期的な視点(生涯賃金)

日本の大企業の場合、退職金、企業年金、住宅補助等の福利厚生が充実している会社が多い。従って、年収だけ見ると多少のアップとなっても、退職金や企業年金を考慮すると、実質的には年収ダウンのケースもある。

また、日本の大企業の場合は年功序列によって昇格がある程度見込める。転職した企業での昇格や昇給が見込めないと年収は横ばいのリスクもあり、結局は年収アップに繋がらないケースもある。

特に、退職金や企業年金は税制面においても優遇されているので、ここは非常に重要な点である。給与面だけではなく福利厚生やその後の昇格・昇給の見通しも考慮した上で、転職は検討すべきである。

②リスクを考慮

転職時には年収アップに繋がっても、それが長期的に継続できないと意味が無い。
例えば、外資系金融は高給で知られているが、その分、リストラやクビになるリスクも高い。また、終身雇用が事実上保証されているわけではない。

従って、外資系金融に転職する場合には年収アップは当然で、少なくとも、5年、10年のスパンでどれくらい稼げるかを検討した方がいい。

例えば、国内系大手信託銀行の40歳の課長は、「年収2000万円では外資に行く意味が無い」と言っていた。その課長は年収が1400-1500万円位あるので、外資系に行くなら、ある程度の期間年収3000万円位が見込めないと、リスク面を考慮すると意味が無いということである。

外資系に限らず、国内系企業でもオーナー系の場合は社長の裁量で特別高い給与を出してもらえるケースはあるが、社長が交代すると追い出されるリスクもあるので、転職時にリスク面の考慮は重要である。

③将来の独立に繋がるか?

サントリー新浪社長の「45歳定年制」は物議を醸したが、将来的には終身雇用が維持される保証が無いのは事実である。形の上では定年は60歳だったとしても、役職定年が前倒しされたり、賞与や手当が削られると実質的には定年は前倒しされてしまう。

年金2000年問題や、人生100年時代ということを考慮すると、70歳位までは働き続けることを想定する必要があり、そのためには、会社に頼らずとも独力で稼げる能力を身に着けたいところである。

そのためには、前述の副業を磨くという手があるが、転職することによって将来の独立にプラスになる経験やスキルが得られるかという視点も必要になるかも知れない。

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