1. 巷に溢れるお金持ち系のコンテンツ
「お金持ちになるには」、「年収1億を稼ぐ人の習慣」。
この手のお金持ち系のコンテンツは、書籍やネット上に溢れている。
これらは自己啓発系コンテンツに含まれると考えることもできるだろう。
その場合、無料のネット情報や、1冊千数百円の書籍はまだいい。
しかし、1回10万円とか、半年間で50万円という高額なセミナーも存在し、そこまでお金を掛けても知りたいのか不思議である。
まあ、まじめにコツコツ働いて、贅沢をせずに倹約をしてお金持ちになるという話は聞きたくないから、簡単に、早く、楽して、特殊なスキルも無しにお金持ちになりたいという潜在的なニーズは無くならないのかも知れない。
2. 「年収1億を稼ぐ人、年収300万で終わる人」を読んでみた
私もお金、年収に関するコンテンツが中心のブログを運営しているので、この手のお金持ち系コンテンツは嫌いではない。
最近、人から、「面白いから読んでみろ」と紹介され、この本を見付けて読んでみた。
https://store.shopping.yahoo.co.jp/netoff2/t0011747535.html?sc_i=shp_pc_detail_saleptah
著者の午堂登杞雄(ごどうときお)さんは、1971年生まれの50歳。米国公認会計士の資格を持ち、アーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍され、2006年に著書「33歳で資産3億円をつくった私の方法」がベストセラーになったそうだ。
本書では、年収300万円の人と年収1億円の人との思考や行動を比較し、具体的に紹介している。
例えば、
・300万の人は借金を避けて安心感を手にし、1億の人は借金でチャンスを手にする
・300万の人にとっては労働は美徳だが、1億の人にとっては無能の証
・300万の人は高級車を現金で買うが、1億の人はローンで買う
・300万の人は待ち合わせの5分前に着き、1億の人は30分前に着く
・300万の人は奮発してグリーン車に乗るが、1億の人は普通車の指定席に乗る
・300万の人は新聞を毎日読むが、1億の人は新聞を解約する
・300万の人は必死にメモをとるが、1億の人は頭でメモをする
・300万の人は昇給を目指し、1億の人は起業を目指す
・300万の人は欲望が乏しいが、1億の人は欲望を全開にする
・300万の人は友人が多いが、1億の人は友人が少ない
といったエピソードが60-70個取り上げられ、その解説がなされているという本の構造である。
例えば、グリーン車に乗るか乗らないかとか、メモを取るとか取らないとか、高級車をローンで買うか買わないか等については、全く反対のことを述べている金持ち系コンテンツも存在する。
このあたり、別にどれが確固たる真実というわけでもないので、その点は読者の取捨選択に委ねられるのであろう。
3. 結局、年収1億稼ぐ人の習慣は参考になるのか?
お金持ちに慣れる人は個性の強い人が多そうなので、好み、こだわり、趣味は人それぞれであり、決まったものというのは無いだろう。
また、習慣や好みを真似したところで、それが年収増に直接つながるとは考えにくい。
特に、長財布を使うとか使わないとか、グリーン車やファーストクラスに乗るか乗らないかといった細かい点は、どうでもよいだろう。
まあ、この種のもんは話のネタとしては面白いかも知れないので、エンタメ系のコンテンツと考えれば悪くないだろう。
もっとも、金持ち系コンテンツの媒体や著者に関係なく、共通していることもありそうだ。
それは、お金持ちになるには「レバレッジ」を使うしかないということだ。
要するに、働ける時間は同じなので、単純な時間労働をしていては何時まで経ってもお金持ちにはならず、時間、資金、情報、労働等にレバレッジを掛けることが必要ということである。
例えば、本書では「借金」を恐れるなということが取り上げられている。大きく稼ぐには、借り入れによるレバレッジが必要ということだ。
また、お金持ちになるには労働者ではなく、経営者になれということが本書でも指摘されている。例えば、労働は美徳ではない、出世よりも起業を考えろということだ。サラリーマンをやっていると、基本的に年収1億レベルには到達できないので、起業・独立して経営者になれということだ。人を複数雇うことによってレバレッジを掛けろということだ。
サラリーマンを続けていると、給料をもらうための経費は全て会社が払ってくれる。このため、将来の売上を獲得するために、先にお金(経費)を使うということに非常に抵抗がある。
また、組織の中で、会社のプロダクトを売る仕事をしている。売るべきプロダクトは会社のものなので、自分自身のプロダクトが無い。会社から離れて、自分自身で稼いでみろと言われても、どうやって稼げば良いかわからないサラリーマンが多いだろう。
そのためには、個人経営が可能なビジネス(塾、飲食他)のスキルを習得するために転職して修業をするとか、或いは、ブログ・SNSを使って副業から小さく始めてみるといった対応が必要になる。朝早く起きる、長財布、グリーン車、ノート術といった小手先の習慣を真似るだけでは何も始まらない。
本書の場合、お金持ちになるためのヒントもちりばめられているのだが、そのあたりの優先順位の記載や、体系化については言及されていない。この点は残念なところである。
もっとも、非常に読みやすく、電車の中でも読めてしまえるし、使えるネタも多いので、買って読んでみるのも悪くないだろう。