メガバンクの若手行員のIT業界への転職について。例えば、メルカリはどうか?

1. メガバンクからIT業界への転身の可能性

メガバンクの若手は転職市場では非常に人気が高い
そして、専門職採用ではなく、リテール部門に配属された若手行員の中には、メガバンクでのキャリアに不安を感じ、他業種への転身を考える者もいるだろう。何故なら、少子高齢化やIT化の進展によって、リテール部門の将来性には不安があり、また、証券、アセマネ、海外、市場部門への異動は容易では無いからである。

メガバンクの若手は、一般的に高学歴である者も多く、社会人としての基礎知識や金融経済に関する基本的な知識は、銀行の教育研修体制によって習得されている。また、近年ではホワイト化されてはいるが、基本的にはハードワークがもとめられる世界であるので、総合コンサルあたりもメガバンクの若手には注目しているようだ。

ただ、メガバンクからIT業界への転身の可能性はどうだろうか?
典型的な堅苦しい規制業種を抜け出して、裁量の幅が相対的に大きいと考えられるIT業界に転身したいと考える若手行員がいても不思議ではない。

そこで、メガバンクから、IT業界に転職できるのか、出来るとすればどういった職種があるのかについて考えてみたい。

2. IT業界の中では、メルカリを例に考えてみたい

IT業界といっても、メガベンチャーからスタートアップまで様々であり、また、業種も様々である。そこで、今回はメルカリを例に考えてみたい。メルカリの場合、求人情報の詳細に関して、業務内容や求められる経験・スキルの詳細な説明がされているからである。

また、募集している業務の種類も、ITエンジニアやデザイナーを対象としたものだけではなく、文系を対象にした職種も広く募集されているからである。

<メルカリの求人情報>
https://careers.mercari.com/jp/job-categories/

3. メルカリの募集職種とメガバンク行員の転職の可能性

上記リンクを参考に、メガバンクの若手行員が採用されそうな職種について検討する。

①募集職種の全体像

募集職種については、やはり、エンジニア系が圧倒的に多い。
エンジニア、社内IT、データアナリスト、デザイナー、ITセキュリティ、IT企画・開発系と、文系の行員にとっては対象外の職種がズラリと並ぶ。

しかし、メルカリの場合、コーポレート部門、セールス、広報・マーケティング系の職種も幅広く募集している。

特に、メルカリの場合、傘下にフィンテック部門のメルペイがあるので、金融系の業務経験やスキルがあれば有利な募集職種もありそうだ。

②銀行員が内定を取れそうな職種について見てみると…

求人の多くはITエンジニア対象ではあるが、文系向けの職種も結構ありそうだ。
そのうち、銀行員が内定を取れそうな職種を抽出してみると、
・内部監査/リスク管理
・事業開発/企画系
・経理/財務系
・法務
・マーケティング/広報
・人事系
・営業系

もっとも、各種コーポレート部門の求人については、ハードルが高く、例えば法務部門を見ると「弁護士資格必須」とか「知的財産に関する業務経験」というのが必須とされており、「未経験者歓迎」という雰囲気は一切無い。このため、メガバンクの法務部門に在籍していなければ書面も通過できないだろう。マーケティング/広報については、「Marketing Administrator」という職種であり、研究開発云々と書いてあるので、これは対象外のようだ。

ただ、人事関係については、「第二新卒」対象だが、可能性のあるポジションもあるようだ。新卒採用の経験があることが必須条件とされているが、これはリクルーター経験で何とかなるかも知れない。ただ、歓迎条件として、エンジニア採用経験があるとか、グローバルな採用経験があるということが書かれていて、ハードルは低くは無さそうだ。ただ、スペックが高く、英語力があれば可能性はあるかも知れない。(もっとも、高学歴で英語も出来れば、メガバンクの中でも可能性はありそうだが…)

③結局、可能性がある職種はどれか…

募集職種は多いものの、募集の詳細を見てみると、広報、人事、法務等はかなり難しそうだ。
結局、メガバンクの若手が内定できる可能性があるのは、以下の3つの職種では無いだろうか?

・内部監査/リスク管理
・経理財務
・法人営業

もっとも、経理財務は銀行員にフィットしそうだが、「事業会社」での経理財務経験が求められ、歓迎条件として、公認会計士やMBAが挙げられているので、銀行業務+α、例えば、USCPAあたりは持っておきたい。メガバンクの中でも、本社のコーポレート・ファイナンス部門であれば可能性はあるだろう。ただ、そういったメガバンクの中でもエリートの行員がわざわざメルカリに転職したいとも思えない。

その点、もう少し可能性が高そうなのが、法人営業である。
この職種はメルペイ部門での募集になるので、メガバンクであれば業務における親和性がある。結局、自社の金融サービスを大企業に対して売り込むのが仕事であるので、法人営業に自信があれば挑戦する価値はあるだろう。もっとも、メガバンクで本当に法人営業の力があれば、グループ内で機関投資家営業への異動を狙うとか、アセマネへの転身を図るとか、或いは、M&A仲介で勝負するとか、メルカリよりも稼げそうな選択肢はある。

そして、最も可能性がありそうなのが、内部監査/リスク管理である。
こちらも主としてメルペイ部門での募集なので、銀行業とは親和性がある。いろいろな職種があるようだが、基本的に金融機関の内部監査、コンプライアンス、リスク管理の仕事と似たようなイメージである。ただ、メガバンクの若手が内部監査とかコンプライアンス部門には配属されないだろうから、このあたりの業務経験とか知識をどう表現するかが課題になるだろうが、高学歴かつ法学部卒であれば、可能性はあるかも知れない。

④まとめ

メルカリでは、文系も対象としたコーポレートや営業部門の募集が豊富にあり、しかも、メルペイ部門の募集職種であれば、銀行員にもチャンスはありそうに見える。

ただ、コーポレート部門でも即戦力を求めており、「未経験者歓迎」の雰囲気は全くない。
そこが、メガベンチャーで人気の高いメルカリの特徴で、募集を掛ければそれなりの人が集まるから、こういった募集ができるのであろう。これは、即戦力を求めても人が集まらない零細ベンチャーとの違いである。

結局、法人営業か、ピンポイントで内部監査が最も可能性が有りそうということになり、メガバンクだからといって、簡単に内定が取れる部門は多くは無さそうだ。

4. メガバンクの若手のキャリアについて

①金融以外となると、人気企業の場合は「専門性」が問われてしまう

若手のメガバンク行員は転職市場では人気なのだが、それは、とりあえず大企業/上場企業、中堅企業、ベンチャーについてである。ベンチャーと言っても、DeNA、ヤフー、メルカリといった人気のメガベンチャーの場合、大学名とメガバンクの名前だけでポテンシャル採用をしてもらえるわけではない。

結局、メガバンクとしての業務経験については、多少大風呂敷を広げたところで限界がある。英語とかUSCPAとか、何かしらのプラスアルファのスキルを身に付けないと、人気の事業会社への転身は簡単ではない。

だからといって、学歴とメガバンクだけでチヤホヤしてくれるグレードの会社については、入社後の昇給ペースとか得られるスキルが落ちてしまうリスクがあるので、要注意である。

②総合コンサルでは人気が高いが…

IT系企業があえて文系のメガバンク行員を採るメリットは特にない。
他方、ITコンサルが実質的なメイン業務である総合コンサルについては、事情が少々異なるかも知れない。何故なら、メガバンク若手の、学歴、自頭、ハードワーク耐性を評価してくれるからだ。

もっとも、相応の準備をすれば総合コンサルには転職できるかも知れないが、入ってから生え抜き組との競争に勝てるかどうかはわからない。ハードワーク業界という点では共通しているかも知れないが、終身雇用や年功序列が全く無い厳しい世界なので、その点は十分留意し、転職するにしてもバックアッププランは準備しておくべきだろう。

③やはり基本線は金融業界で頑張って見ること

メルカリの募集情報を見ても、金融機関での業務経験を活かすことは難しい。
狙うとすれば、結局、フィンテック絡みのメルペイ部門だろう。

そう考えると、せっかくメガバンクに入ったのだから、将来のキャリアを考えるにあたっては、金融業界をベースに考える方が無難だろう。

まずは、社内異動のチャンスは無いか、また、他の国内金融(アセマネ、カード、リース等)業界への転職の可能性は無いか等について十分選択肢を検討すべきだ。これについては、大手エージェントや金融特化型のエージェントに登録して、可能性を探ってみるのがいいだろう。

できることなら、金融業界の給与水準や安定性を享受したいからである。
何となく、メガバンクが面白くないからと言って、やみくもに他業界に活路を求めても、かえって悪い結果(年収、ステータス、市場価値等)になるリスクがあることに留意すべきだろう。

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