1. 安定収入&WLB高めの企業+副業キャリアが注目される?
ドコモ、NTTデータ等のNTTグループ、或いはKDDIといった、安定収入と比較的良好なWLB(ワークライフバランス)が確保できる環境で、副業で稼いでいくというキャリアが注目され始めたようだ。
給与水準だけであれば、大手金融機関や商社、コンサルの方が良いのだが、こういったところは仕事がハードであるというイメージがある(特に流行りの総合コンサル等)。
また、大手金融機関でもリテール部門は少子高齢化に伴う国内市場の縮小とIT化の進展に伴う将来的な人員過多という不安がある。
そうであれば、収入水準では金融やコンサルには負けるが、その分は良好なWLBの環境下、副業で稼いでカバーした方が良いのではないかという発想だ。
確かに、副業で稼げる様になると、心理的な会社への依存度が減って心理的にゆとりが持てるし、70歳まで働く時代と言われる中、定年を気にすることなく収入をキープできるという期待が持てる。さらに、副業が上手く行けば、独立・起業も夢ではない。そう考えると、このキャリアプランには魅力がある。
2. しかし、本業での年収差は小さくはない…
ドコモやKDDIで安定収入を確保しつつ、副業を育てて稼いでいくというキャリアプランは魅力があるのだが、これが本当に正解と言えるかは5年、10年待たないとわからないだろう。何故なら、このキャリアプランは新しいもので、本当に実現できるのかといった点は、成功事例が蓄積されてからじゃないと何とも言えないからである。
この点、まず懸念されるのは、例えば、大手金融機関とドコモの年収格差はそれほど小さくないからである。
例えば、30歳時点での年収イメージは、メガバンクの場合は約1千万円だが、ドコモは600万円台であろう。そして、40代前半でそれぞれ管理職に昇進すると多少差は縮まるだろうが(メガで1400-1600万、ドコモで100-1200万位か?)、いずれにせよ小さくない年収差が存在する。
仮に、メガとドコモの年収差が年300万位だとすると、月々の差は25万円。
毎月25万円を副業で稼ぐのは不可能ではないが、かなり大変である。これはちょっと頑張って実現できるというレベルでは無いので、この点に留意する必要があろう。
3. 安定した本業+副業のキャリアモデルのチェックポイント
このキャリアモデルのカギは、副業で実際に稼ぐことができるかにある。
したがって、転職でも就活でも、大手金融機関にするかドコモ/KDDI+副業かで迷う場合には、以下の点を事前にチェックしておく必要があるだろう。
①そもそも、どんな副業で稼ぐかを詰めているか?
副業にもいろいろなタイプがある。
もっとも単純なのは、作業系、時間切売り型だろう。家庭教師・塾講師・添削等の教育系、ランサーズやクラウドワークスのweb作業系(ライティング、動画編集系他)、或いは、会社の承認が別途要るかも知れないが飲食店やコンビニの週末バイトもある。
また、物販という副業もある。
月間数万円位のレベルでは、メルカリでもいいかも知れないが、もう少し副業収入を増やすには、仕入れを行って「せどり」に展開する方法もあるし、また、ECサイトを起ち上げて本格的に収益拡大を狙う手もある。
さらに、サラリーマンの副業というと、情報発信系をイメージする人も多いだろう。
少し前までは、ブログでアフィリエイト収入を狙うというのが流行りであった。ただし、Googleアップデイト以降、以前の様には稼げなくなってしまった。
そこで、YouTubeを始めるサラリーマンも要るし、Twitter経由で有料noteを販売するとい方法もある。また、女性で、美容・ファッション・雑貨小物系が得意だと、Instagramの案件で稼ぐチャンスはあるだろう。また、SNSで多くのフォロワー獲得に成功すると、そこから物販に繋げる手もある。
ただ、情報発信系は少額であっても稼げるようになるまで手間と時間がかかるので、本当にやる気が無いとなかなか稼ぐのは難しい。
以上の様に副業にはいろいろあるので、まず何をやって稼ぐのかを明確化しておきたい。
②副業でいくら稼げるのか?
上記①とも関連するが、副業でいくら稼ぐつもりかについても考えておく必要がある。
例えば、月に5万円でいいのなら、作業系が手っ取り早い。メルカリと単発日給バイトを週末やれば、数万円は稼げる。また、学生バイトの延長レベルだが、家庭教師・塾関係の副業でも達成可能だろう。
しかし、月に5万円であれば、副業を考慮したキャリアプランを選択する意味がほとんどない。何故なら、金額的にも高収入業種との本業の年収差は大して埋まらないし、将来稼ぐためのスキルも身に付かないからである。
そうなると、情報発信系を始めることになる。
これは時間切売り型ではないものの、PVやフォロワー数を獲得するために充てる時間や労力の負担は作業系以上に大きい。ブログ、Twitter、Instagramで収益化の基盤を作るには、少なくとも1年位の継続が必要であるが、毎日数時間をコンテンツ作成に充てるのは決して楽ではない。
もっとも、ブログで月間数万PV、Twitterのフォロワー数が1万位になると、月10万円というのも視野に入って来るだろう。
ただ、情報発信系の良いところは、収益基盤が出来て、一定の金額を稼げる様になるとモチベーションが沸き、その調子で進めて行くと更なるアップサイドが見えることだ。TwitterやInstagramで1万人のフォロワーを3万、5万と増やしていくと、月の収入が20万、30万も見えて来る。
副業で月に30万円は一つの節目である。
何故なら、月に30万円あると、本業無しでも最低限の生活ができるからだ。
従って、ここから更に副業収入を増やしていくと、次は独立・起業というものが視野に入ってくる。
このレベルまで到達できると、このキャリアプランは十分成功したと言える。
③いつまで稼げるか?
本業収入+副業収入のトータルの収入で勝負をするキャリアの場合、留意しなければならない点は、その副業で「いつまで」稼げるかという点である。
典型的なのがYouTuberで、彼らは今年1億円稼げても、2年後は全く稼げなくなるかも知れないと言われている。ブログのアフィリエイトも同様で、5年以上前は月に100万円以上稼いでいた人がGoogleアップデイト以降、月収が1/3になったというのはよくある話である。また、有料noteをTwitterで販売するという収益法が注目され始めているが、こちらも5年先はどうなるかわからない。
この点は、本業での将来の不安(金融リテール市場の縮小、総合コンサルの人材過多等)以上に、より深刻に考える必要がある。
情報発信系の副業月収が本業のそれを上回ったとしても、すぐに独立を考えるわけにはいかないのである。3年後、5年後まで冷静に検証しておく必要がある。
4. 最後に
本業一本ではなく、本業+副業の合計で考えるキャリアプランは非常に魅力的だと思う。
サラリーマンが会社だけに依存することなく、自らの収益力を得ることができるというのは大きい。また、業種や職種によるが、本業と副業との間での相乗効果も期待できる。そして、70歳まで働く時代においては定年後も稼げるスキルを有するのは非常に好ましい。
ただ、副業で稼ぐのは結構大変で、十分時間もかかるし、本業と両立するのは大変である点については十分認識しておくべきだろう。