とりあえず、ベンチャー企業は勧めない?
ベンチャーのカテゴリーであるにも関わらず、当初からネガティブなコメントで申し訳ないのですが、就活生や転職希望者から、ベンチャー企業へのキャリアについて相談されたら、「止めておいた方がいい」と答えます。
そのような質問をしている時点で、何が何でもベンチャー企業で働いてみたいという意思は無い訳ですので、「止めておいた方がいい」というのが手堅い回答かなと考えます。
その理由は単純で、ベンチャー企業に行くことは、ハイリスク・ローリターンであると考えられるからです。
そもそも、ベンチャー企業に行くというのは比較的最近の選択肢だろう
20世紀の時代においては、ハイリスクかつ薄給激務のベンチャー企業は、ハイスペック就活生やエリートサラリーマンの就職・転職の対象にはなり得ませんでした。
しかし、1999年の東証マザーズの設立、ベンチャー投資資金の拡大といった事情によって、ベンチャー企業でストック・オプションをもらって成功するということが選択肢の一つに加わりました。
しかし、ベンチャー企業に行って成功できる可能性は高くない…
ベンチャーキャピタル等のベンチャー企業に対する投資資金が拡大し、IPO以外にもM&AというEXITの方策が拡がっているので、ハイスぺ就活生やエリートサラリーマンもベンチャー企業を選択してもいいのではないかとも考えられます。
しかし、ストック・オプションというのは必ずしももらえるわけではありません。もらえたとしても十分なリスクに見合った対価と言えるかどうかもわかりません。
大型案件になればなるほど、VCや事業会社の出資比率が高くなり、創業者等の持ち株比率が薄まる傾向にあります。そうなると、付与してもらえるストック・オプションのパイも潤沢ではなくなります。
また、日本のカルチャーだと、「ベンチャーは企業理念に共感した者が集まるところで、カネにがめつい奴など要らん!」というような考えもあるため、入社時においてストック・オプションに関する話し合いが十分にできないという事情もあるかと思います。
さらに、最近では、ベンチャー創業者はIPOではなく、上場前にM&Aで株式を売却するケースが増加しています。そういった場合、ストック・オプションをもらっていても行使できるとは限りません(それは個別的な取り決めによります。)。
そして、これが一番重要なのですが、そもそもベンチャー企業がIPOやM&Aで成功裏にEXITできる可能性というのはもともと高くありません。
ベンチャー企業に就職・転職して、その企業に将来が無いと判断した場合には、元在籍していた業界・企業に復帰することを考えるのでしょうが、残念ながら、ベンチャーで失敗した経験は大企業や外資系企業からは全く評価してもらえず、履歴書・レジュメの汚れとなるだけです。
日本では、ベンチャー企業に挑戦した経験は評価対象とならないのです。
しかし、将来的にはベンチャー企業が日本の産業界を牽引していくことが期待される
以上のように、令和元年の秋の時点では、果敢にベンチャー企業でチャレンジしても、それが成功キャリアになる確率は慎重に考えた方が良いと思われます。
しかし、少子高齢化で国内市場の縮小化が不可避であり、日本企業は海外で稼ぐか、新規事業で稼ぐことが将来強く求められるようになります。
既存の大企業の場合、新規事業創造能力についてはあまり期待できないため、そこはベンチャー企業に期待されるところであります。
終身雇用の廃止、働き方改革という雇用に関する大きな変化の中、将来的にはベンチャー企業が日本の産業界をリードしていくことは望ましいことであり、将来はそのような世の中になっているかも知れません。
従って、長期的な視点で、ベンチャー企業で働くというキャリアについて観察し、情報提供をしていきたいと考えています。
なお、最後に、東大の起業サークルTNKに関する過去記事をご紹介します。TNKは難関の面接試験があるものの、他大学の学生も参加が可能なので、是非挑戦してもらいたいと思います。
<東大起業サークルTNKについて>
https://career21.jp/2019-03-29-133045