中途採用なのにESにwebテ有り。三菱商事のキャリア採用について

1. 三菱商事のキャリア採用について

2022年4月、三菱商事がキャリア採用(中途採用)を開始したようだ。
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/recruit/career/

三菱商事は例年春と秋にキャリア採用を実施しており、今年も通常通り、中途採用のチャンスが与えられる。

もっとも、キャリア採用と言っても、一般型とオープン型の2種類があり、オープン型は配属希望部署を指定しない形のものである。このため、実態としては、第二新卒採用に近いものではないかと推察される。

2. 三菱商事のキャリア採用における選考プロセスの問題点

三菱商事の場合、キャリア採用と言っても、一般的な中途採用と異なる以下の様な特徴がある。

①春と秋のみ実施され、通年採用ではない

中途採用の場合、一般的に通年採用で実施され、新卒採用のように決まった時期にのみ実施されるということはない。実際、5大商社の場合も、伊藤忠や住友商事は通年採用を実施している。

<伊藤忠のキャリア採用>
http://career.itochu.co.jp/career/

<住友商事のキャリア採用>
https://sumitomocorp-career.com/

これは、応募する立場からすると不便であるし、採用側から見ても、良い人材を常に探し求めているとは言えず、問題ではないかと思われる。

②中途採用にESやwebテを実施すること

三菱商事のキャリア採用では、まず、ホームページから登録し、職務経歴書に加えてESを提出させ、さらに書類選考を通過した候補者はwebテストを受けさせられ、それに合格後にようやく面接となる。

これは、新卒における採用プロセスである。
中途採用の場合、一般的には、エージェント或いはHP経由で職務経歴書を提出する形なのだが、これに加えて、ES、更にはwebテまで課すとなると、応募者側からすると非常に面倒くさい。

採用側の理屈としては、面倒な手続きの負担があっても応募したいという候補者のみ来ればいいという発想かも知れない。

しかし、三菱商事がわざわざ中途採用で求める人材は、各業界・企業においてトップクラスの優秀な人材であるはずだろう。そういった人材は、社内でも厚遇されているだろうし、外資金融、戦略コンサル、外資IT他、非常に多くの選択肢があるはずだ。

このため、本気でそういったトップクラスの人材を採りたいと思うのであれば、他社が課さないような応募の為の条件は撤廃した方がいいのではないだろうか?

3. 三菱商事のキャリア採用の位置付けは?

三菱商事のキャリア採用を見ると、上記の通り、一般的な中途採用ではなく、限りなく新卒採用に近い。そうすると、近年、商社の若手社員の退職率が高まっているので、それを踏まえた、新卒の補充の様な位置付けなのだろうか?

外資系ITやコンサルのDXのスペシャリスト、外資系金融の若手社員は最初から、このプロセスでは採るつもりが無いのかも知れない。

他方、三菱商事は新卒採用においては、国内系の最難関企業である。東大や早慶の上位の学生でも、三菱商事から内定を取ることは難しい。従って、新卒で惜しくも三菱商事に入れなかった若手社員にとっては、貴重なチャンスである。採用プロセスは面倒であるが、挑戦してみる価値はあるだろう。

4. 結局、どういった人材が内定を取れるのだろうか?

三菱商事のキャリア採用は新卒採用同様に、非常に狭き門である。
採用人数が非常に少ないからだ。もっとも、新卒採用的な採用プロセスであるが、選考基準は新卒のそれとは異なるものと思われる。

それは、新卒採用は配属部署を確約しない一括採用であるが、このキャリア採用は基本的には事業部門毎の採用となるからだ。このため、「業務経験」「資格・専門スキル」が重視される。

どういった人材が内定を取れるかについては、三井物産のこのキャリア採用の情報が参考になるだろう。

<三井物産のキャリア採用>
https://career.mitsui.com/recruit/midcareerstory/

これを見ると、前職は、電力会社、自動車会社、IT企業、外資系金融、税理士法人、弁護士法人等である。

わかりやすいのは、法務や財務等のコーポレート部門であろう。監査法人勤務の公認会計士や、渉外弁護士は有利であろう。反対に、高学歴・トップ企業のコーポレート部門勤務でも、資格が無いと不利かも知れない。

また、三菱商事や三井物産の様な資源系商社においては、電力・ガス等のエネルギー系の業務経験があればチャンスはあるかも知れない。事業会社だと、エンジニアリング系の企業や、自動車会社も同様である。事業会社の場合には、商社に転職できると年俸は大幅にアップとなるので魅力はあるだろう。ただ、単にこういった事業会社勤務だけでは不十分で、学歴、語学力等のスペックに加え、プレゼン能力も優れていないと簡単には内定は取れないだろう。

最近では、DX関連のニーズが非常に強いので、IT系の専門性を有する人材や、アクセンチュア等の総合コンサル系の人材にとってはチャンスかも知れない。

他には、三菱商事は新卒時においても外銀・戦コン内定者は優遇されるという話を聞くが、外銀や戦コンに疲れ、WLB重視に切り替えたい人には有力な転職のオプションとなるだろう。

5. 最後に ~金融専門職はどうか?~

商社は事業範囲が非常に広いので、スペックが高く、何らかの事業経験や専門性があればチャンスはあるかも知れない。

この点、IBD、トレーディング、アセマネの様な国内系の金融専門職はどうだろうか?
商社の場合、金融事業というのはあまり存在感が無い。また、中途半端にやっても勝てる事業では無いので、金融ビジネスは商社にとって戦略的な重要性はあまり高くないのかも知れない。

また、国内系の金融専門職の場合には、給与水準も高いし、アップサイドを狙いたければ外資金融に行けばいい。そして、商社に転職してしまうと、キャリアが途切れてしまうという問題点がある。

このため、プロジェクト・ファイナンス或いはM&A等については、商社にとってもニーズはあるかも知れないので、このあたりについては今後調べていきたい。

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