【志望動機】アセマネ(資産運用会社)の就活と対策【自己PR】

1. アセマネ(資産運用会社)の人気化

アセマネ(資産運用会社)の人気・難易度がここ数年で急速に高まっているようだ。
少し前までは、地味目で何をやっている会社かよくわからないイメージが強く、内定を取るのはそれ程難しくなかったように思われる。

しかし、最近の就活生のスキル重視の価値観から、金融専門職が全般に人気であり、アセマネも人気化してきたようだ。また、アセマネの場合は、基本的に勤務地は東京がメインなので、東京に住み続けることができるというのも魅力のようだ。

2. アセマネに内定できる学生のスペックとは?

アセマネが急速に難化する理由として、その採用人数の少なさがある。
業界最大手の野村アセットマネジメントやアセットマネジメントoneでさえ、新卒採用枠は数十人程度である。大手金融機関傘下のアセマネでも採用枠が10人に満たない場合もある。

このため、たとえ少数でも優秀な学生の一部がアセマネ業界に流入するだけで一気に難易度が高まってしまうのだ。

アセマネに内定している就活生のカテゴリーとしては、以下のものがある。
(1)理系の院卒
(2)外国人留学生や帰国子女等のグローバル要員
(3)その他

(1)の理系の院卒は、DXブームの環境下、あらゆる業界で人気が高いが、アセマネ業界でも同様である。また、アセマネの場合にはクォンツという投資にかかる計量的な投資・分析を担うポジションがあるので、そこは事実上理系のポジションとなっている。

(2)の(日本に来ている)外国人留学生や帰国子女はグローバル要員としての役割が期待されている。グローバル人材は、商社、IT、メーカーでも人気であるが、アセマネ業界も取り扱い商品には外国で運用されるものの比率が高い。そうなると、海外の運用会社と交渉やコミュニケーションをしたり、英語の資料から情報収集をする機会が多いので、英語が堪能な人材に対するニーズは強い。

上記以外の場合は、一般的に(3)その他枠を巡った競争となる。
これにはいろいろな内定パターンがあり、学生時代から自己投資を行い証券投資に精通しているタイプ、企業財務・IR分析が得意でIBDやリサーチ職とかとも併願してくるタイプ、金融の知識はそれほどないが一般的な就活スキルに長けているプロ就活生タイプ等いろいろである。

結論的には、この(3)その他枠を狙っても、現時点ではまだまだアセマネ内定のチャンスは十分あると思われる。

3. アセマネは把握しにくい業界である:アセマネ業界に対する理解不足?

① アセマネ業界は何故理解しにくいのか?

何故、現時点ではアセマネに内定できるチャンスが十分にあるかというと、就活生のアセマネに対する理解が不十分で、志望動機、自己PR等、面接での対応において満足いくレベルに達した学生は少ないからである。

学生がアセマネ業界について十分な理解が出来ない理由としては、まず、アセマネは大手金融機関の非上場の子会社であることが多く、IR情報等の各企業を理解するための情報がつかみにくいからである。

また、アセマネは個人向けのビジネス(公募投資信託)も行っているが、その販売は銀行や証券会社を通じてのB to Bビジネスである。このため、直接的に口座を開いて取引する銀行・証券会社とは異なり、業務のイメージをつかみにくいからである。

反対に、ほとんどの学生がアセマネ業界・アセマネ業務を十分に理解できていないので、そこを十分に把握できれば一気に抜け出すことが可能なのである。

② アセマネ業界に対するよくある誤解の例

就活生がアセマネ業界に対して持っている誤解としては以下の様なものがある。

(1)アセマネは必ずしも学歴・スペック重視のエリート業界ではない

上述の通り、アセマネ人気が出てきたのは最近の話である。伝統的には、大手金融機関の子会社的な位置付けにあり、給与は親会社の8掛け位で、出世に関しては親会社からの天下りでポストを占められてしまうという課題があった。このため、人気面では、銀行や証券の専門職よりも大きく劣っていた。

そのため、商社や大手デべなどと比較すると、MARCH・関関同立、地方国立の場合もきっちりとした対策を取れば十分商機はあると言える。

(2)アセマネの行う「運用」の概念が難しい

学生のイメージするアセマネ業界の「運用」とは、ファンドマネージャーが株式や債券をリサーチし、銘柄選択を行い、売買するというイメージであろう。

確かに、日本株や日本の公社債についてはその通りである。
しかし、現在は外部委託・再委託と呼ばれる運用形態が非常に多い。これはどういうことかと言うと、外国株式、外国債券等の海外物の運用については、日本のアセマネが直接運用するのではなく、外資系の運用会社に運用をアウトソースしているということである。

例えば、アメリカの公社債の運用を行うには、言語や銘柄理解の観点から、アメリカ人がアメリカ国内で行うのが合理的である。このため、日本のアセマネが取り扱っているプロダクトは、このケースだと、アメリカの公社債運用が得意な会社にアウトソースするのである。

そうなると、「運用」という業務であっても、実態は海外で行われている運用の管理的な仕事になってしまう。

わかりづらいところであるが、重要なところなので、OB訪問等を通じて十分理解する必要がある。

(3)運用>営業?

これも多くの学生が有する典型的な誤解である。
確かに、昔はアセマネでは運用職が幅を利かせていたが、現在ではこれは当てはまらない。運用ビジネスの運用資産規模が増え、海外プロダクトの比率が増えて行くと、どの海外プロダクト(或いは海外の運用会社)を選択し、どのように販売していくかということがより重要になってくる。

そうなると、販売する物は外(他社・海外)から持ってこれるので、販売力がアセマネ各社の収益力を左右することになり、営業の力がどんどん強まってきた。

実際、外資系のアセマネのポジションを考えても、営業職の方が運用職よりも探しやすい。
したがって、アセマネ業界でのキャリアを考える上で、運用につかなければ成功できないということは無く、営業職も十分魅力的な職種である。

4. ESテンプレートの問題点

今の就活生は少なくとも15-20社位エントリーするといい、そうなると、ESの作成負担が大きい。また、ESのテンプレートを参考の上で作成した方が無難と考えるケースも少なく無いようだ。それはある程度仕方が無いと思う。

しかし、ESのテンプレートは過去の内定者のESが参照されているようだが、アセマネの場合は、そのクオリティが非常に問題である。ESも重要かも知れないが、内定の判断基準としては、学歴、スペック、OB訪問の評価、面接での評価等の多くのファクターがあり、ESの占める割合は一部に過ぎない。

例えば、理系の院卒とかグローバル要員、証券会社のIBDやGMとの併願しているハイスぺ学生の場合、ESは大したことが書かれていなくても、それ以外の評価で内定している可能性がある。反対に、スペック的には高くは無いが、業界研究が十分なされ、金融市場の豊富な知識を持つことによって内定したタイプの学生のESはまだ見たことがない。

このため、適切なES(志望動機、自己PR等)を書くことができれば、多数のテンプレES依存の就活生を抜き去ることが可能なのである。

例えば、よく見かける就活生のESの志望動機で、以下の様な項目があるが、いずれも非常に表面的で面接で突っ込まれたら対応が難しい。

①日本の個人投資家を投資に強くする系

日本の個人金融資産に占める預貯金の割合が半分以上と高く、なかなか貯蓄から投資への流れが進まないことを取り上げたいのであろう。また、証券会社のリテール系の志望動機を流用している可能性もある。

これを問題視すること自体は結構なのだが、問題は「具体的にどうやって?」と突っ込まれたら適切な回答が難しいことである。貯蓄から投資へ流れは、1998年の金融ビッグバンの頃から、政府や金融業界が旗振りをしてきたのであるが、20年以上経っても全く解決できていない難題である。金融業界においても、さんざん議論がなされ、いろいろな対応をしてきたが上手く行かなかった。それに対して、面接官をうならせる回答は非常に難しい。

個人投資家をサポートするという志望動機を上げるのはいいが、その場合には、運用会社のウェブサイトや商品とその販売用資料を把握することが前提となる。しかし、そのためにはかなり周到な準備が必要となる。「どうやって?」と聞かれたときに、具体的なイメージが沸かないと、志望度の低さが露呈してしまう。

②ESG投資で日本を良くする系

ESGというのはアセマネ業界においても非常に重要性が高まっていて、ビジネス的にも面白いテーマとなっている。

ただ、ESGというのは非常に難しいテーマであり、先日、日経新聞でも「名前だけの」ESGファンドの問題点が指摘されていた。

何故難しいかというと、ESGといっても製造業以外でここで差別化するのは非常に難しい。特に、金融、マスコミ、IT等のような有体物を扱わない業界は、環境と直接関係が無い。もちろん、武器、麻薬、ギャンブルとも無縁である。そうした中、例えば、三菱UFJ銀行と三井住友銀行についてESGにおける差異を見出すのは非常に困難である。

従って、これを志望動機で書くと、面接で突っ込まれると対応が非常に難しい。
従って、苦し紛れにESGを志望動機に引っ張るのは非常にリスキーである。

③運用会社の運用資産規模・取り扱いプロダクトを指摘

これは、アセマネ業界に限らず、他の業界でも見られるパターンかも知れないが、「御社の様な凄い会社で働いてみたい」というものである。

アセマネ業界も規制業種であり、大手の場合、提供しているサービスやプロダクトは似たり寄ったりである。このため、規模や取扱商品の凄さを指摘しても「何故当社」ということに繋がらないし、そもそも、「何故アセマネ」ということすら説明できない。規模感や取扱商品の品揃えについては、親会社である、銀行・証券・保険の方が上ではないだろうか。

5. 志望動機についてはシンプルに考えれば良い

アセマネというか、金融専門職の場合は、商社やメーカーのように志望動機を徹底して深掘りされることは無さそうである。志望動機以外にも、専門職としての知識やその素養が重視される。

従って、アセマネの場合には、志望動機はシンプルに、①金融市場(相場)が好きである、②アセマネ業界の将来性の2点に言及すれば十分だと考えられる。

①金融市場(相場)が好きである

これは内定獲得目的とは別に、実際にアセマネやその他の金融専門職を目指す場合にも本音ベースで必要だと思われる。金融専門職の場合、ずっと金融市場が日々の業務に絡んでくる。従って、日経平均株価や外国為替に全く興味が無いようでは、将来も楽しくないと思われる。自動車に興味がない人がトヨタに、ビールに興味がない人がキリンに行っても楽しくないのと同様、ここはポイントだと思われる。

志望動機を膨らませるためにお勧めなのは、実際に証券会社に口座を開いて、1万円でもいいので有価証券投資をしてみることである。投資信託なら1万円から購入可能である。そうすると、自ずと相場に対する関心度が高まって来るし、面接でも実際に証券口座を持っていることが伝われば、モチベーションの高さがうかがえる。また、証券会社に口座を開けば、各種のマーケット情報や関連コンテンツが入手しやすくなる。

また、金融市場への関心度の高さについては、学業とも結びつきやすい。
証券分析関係の講義やゼミがあれば非常に良いし、企業財務やその他会計系の学業ガクチカと結びつけることも可能だ。

もっとも、運用職志望でなくとも、自分なりの「日経平均予想」と「おすすめ銘柄」位は用意しておきたい。この点については、本選考前にOB訪問をしてレビューしてもらえば自信も付くだろう。

②アセマネ業界の将来性

誰でも衰退業界よりも成長業界で働きたいだろう。
この点、少子高齢化に伴い国内金融業務の将来の見通しが厳しい中、アセマネ業界はまだまだ成長する余地があると言える。

実際、メガバンク、大手証券会社、大手保険会社の中期経営計画を見ると、重点分野として資産運用ビジネスを挙げる企業は多い。背景としては、世界的な金利低下の傾向と運用難に対するソリューションが求められていること、オルタナティブ・プロダクツのニーズ拡大、世界的な富裕層基盤の拡大などが指摘できる。

これについては、自分が説明しやすい様に情報を整理したり、OB訪問でフィードバックをしてもらえばいいだろう。

6. アセマネ就活で差別化するための材料

アセマネはマニアックな業界で、人気が出てきたのもここ数年のことなので、商社の様に就活必勝法的なコンテンツが十分にない。従って、アセマネ就活を有利に進めるための材料は現時点では沢山ある。

まず、アセマネのプロダクトである投資信託を事前に調べていない学生が非常に多い。プリウスやアルファードを知らないでトヨタを受けるというのは有り得ないことだが、アセマネの世界では各社の売れ筋商品まできっちり調べる学生はほとんどいないのではないか。従って、事前にしっかりと調べて、売れ筋投信の販売用資料・レポートに目を通し、自分の意見を持っておくと非常に良い。

また、業界全体の課題として、①毎月分配型投信、②テーマ型投信をどうするかという問題がある。これらの商品については、当局或いは外部からの評価が厳しいところであるが、営業戦略上非常に重要な商品なので、一般的な考え方を調べて上で、自分自身のアイデアを持ちたいところだ。もっとも、ここまでやれる学生は皆無に近いと思われるので、この域まで準備ができればそれだけで内定のチャンスもあるだろう。

さらに、Webマーケティングというのもアセマネ業界の課題である。各社ともに自社ファンドを中心とする膨大な量のコンテンツを揃えているが、それらが自社商品の売上向上に繋がっていないのが現状である。AI、DXが進歩すると、オンラインでのマーケティングの役割が高まる可能性がある。ここは学生視点で各社のWebサイトを見て、感想や改善点を指摘できればかなりの加点対象となるだろう。

他にも、オルタナ商品を深堀するとか、富裕層金融ビジネスの観点と結びつけてアセマネビジネスに言及するなど、差別化できる切り口はいくらでもある。

最後に 本当にアセマネ業界に関心があれば、まだまだチャンスはある

アセマネ業界の関心度が高まったとは言え、金融専門職として、IBDやGMの滑り止め的な位置付けだったりするケースも多い。そういう場合は、特殊な業界なので真面目に準備をするのは結構な負担になるかも知れない。

他方、本当に相場や投資に関心があり、将来的には外資系アセマネ或いはヘッジファンドで稼いでみたいと思う学生にとっては、上記の様な対策をしっかりやれば十分内定を取れるチャンスはあるだろう。

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