40代でメガバンクから外資系金融機関に転職できた事例と理由

1. 40代で外資系に転職をするのは難しい

業種を問わず、40代で転職をするのは難しい。日本の場合、年功序列と終身雇用が浸透しているため、管理職のポジションは詰まり気味だからである。40代以上の場合、管理職ポジションでの転職が前提となるので、空席を見つけることは難しい。

外資系企業の場合は、事情は異なるかも知れないが、従業員の大半は日本人であるので年功序列と無縁ではない。「年上の部下を持ちたくはない」という考えの部門長は少なくないので、年を取るほど、転職は難しくなる。

また、既に外資系企業の中で転職をしているのであれば良いが、国内系企業に長く勤めていて、40歳を過ぎて初めて外資系企業で働くとなると、カルチャー的にも合わないのではないかという不安も持たれがちである。

このため、40代で国内系企業から外資系企業に転職をすることは一般的には難しい。しかし、40代でメガバンクから外資系金融機関に転職することができた人もいる。そこで、以下、そのポイントを紹介したい。

2. 40代でメガバンクから外資系金融に転職するためのポイント

①ニッチな業種・職種を探す

40代で外銀に転職することは非常に難しい。何故なら、外銀の場合は平均年齢が若く、40代で残っているのは幹部社員クラスが多い。そこに、メガバンクから参入していくことは厳しい。

それでは、外銀と比べて外資系運用会社(アセマネ)の場合は平均年齢が高く、日本に進出している企業数も多いので、可能性があるのではないかという見方もある。しかし、外資系運用業界の場合、同じ外資系運用会社か外銀、或いは、国内系運用会社の出身者を優先するために、メガバンクから新規参入することは難しい。

そうなると、狙いはニッチな業界・ポジションとなる。具体的には、外資系銀行(商業銀行)、外資系不動産ファンド、外資系生命保険会社等である。こういった業界は、給与水準が外銀や外資系アセマネに劣るという事情もあり、外資系からの参入は少ない。他方、外資系企業であるので英語力が求められるため(外資系生保の場合は求められないケースもあるが)、英語ができない国内系金融機関の者は応募しにくい。このため、ここにチャンスが生じるわけである。

また、業種的にはバックオフィス、経理財務、コンプライアンス、人事、総務、内部監査等が狙い目であるが、特に、コンプライアンスや内部監査系は比較的求人が多い。

こういったところを探せば、40代のメガバンクの行員も転職のチャンスはある。もっとも、そのためには数多くの転職エージェントに登録し、転職の機会を逃さないようにすることが求められる。当然、リクルートやJAC等の国内系だけでなく、ロバートウォルターズ、モーガンマッキンリー、マイケルペイジなどの外資系エージェントにも登録する必要がある。

②転職時における年収については欲張らない

外資系商業銀行、外資系不動産ファンド、外資系生命保険会社と、マイナーな業界を狙う場合、気になるのは年収水準である。外銀や外資系アセマネであれば、それなりの年収アップが期待できるが、こういった外資系金融機関の年収水準が気になるところである。

結論的には、大幅な年収アップは期待できないものの、現状維持であれば十分可能性はある。これも、メガバンクでの現状の年収にもよるが、40代であれば、1400~1800万円位はもらっているだろう。

外資系商業銀行の場合であれば、シニア・マネージャーレベルで1500~1800万円位は期待できる。そうなると、現状維持か若干の年収アップは可能である。

現状維持だとわざわざ外資に転職する意味は無いのではと思うかも知れない。確かに、メガバンクで出世コースに乗っていて、部長以上が可能であれば、わざわざマイナーな外資系金融に転職する必要は無いだろう。しかし、そういった銀行員はほんの一部に過ぎず、多くの銀行員は40代半ばになると行内でのアップサイドは期待しにくい。また、銀行の場合、52~53歳位になると出向する年代となる。

そうであれば、一旦外資系金融に転職して管理職になると、50代後半位までは働ける可能性はある。また、外資系の場合、一旦入社して、外国人のボスから評価されれば、年収数百万円アップや昇格の可能性はある。外資に馴染む人であれば、外資系商業銀行や外資系不動産ファンドでMDになって、50代になって年収2000万円以上を実現している人達もいる。

このように、転職時に現状維持以上の年収をキープできれば、入社後はメガバンクにいるよりもアップサイドを期待できると見ることもできる。

もちろん、外資系の場合は終身雇用では無いのでリスクもあるが、メガバンクの場合も60歳まで現状の年収が保証されるわけではないので、このあたりの考え方はその人次第である。

このままメガバンクでくすぶるよりも、外資系金融でもう一度挑戦してみたいという人はいるだろう。また、同じ挑戦をするといっても、大幅に年収が下がり、リスクは非常に高いベンチャーへの転職と比べると、変化は大きくないと言える。

③海外勤務経験があること

外資系金融機関のシニアな管理職の場合、海外拠点の外国人のボスにレポートするケースが多い。外国人の直属のボスは昇格・賞与等において非常に強い決定権を持っている。従って、外国人のボスに気に入ってもらえることが重要だ。

そうなると、単に英語が得意なだけでは不十分で、外国人や同僚とのコミュニケーション能力の高さも求められる。このため、海外勤務或いは留学経験があり、グローバルなカルチャーに慣れていることが望ましい。

もっとも、このあたりは慣れの問題もあるし、英語が得意ではなくてもコミュニケーション能力が高い人もいるので、その人次第とも言える。

外資系生命保険の場合には、必ずしも高度な英語能力が求められない場合もあるが、そういったポジションは競争力が高くなりがちである。また、外資系金融に転職するということは、その後もどこかに転職する可能性はあるので、なるべく多くの転職の機会を探し出すためにも英語はやっておいた方がいい。

④新しい環境に馴染める柔軟性

長年国内系企業に勤めた後、外資系企業に転職すると様々な面でカルチャーの違いにとまどうことは多い。外国人とのコミュニケーションも問題もあるが、それ以外にも、仕事の進め方や考え方も日本企業のそれとは異なることも多い。

外資系企業と言っても、日本の拠点の従業員の大半は日本人であるので、そこには英語力の問題は生じない。日本人の同僚と上手く仕事を進められないと、評価を高めることは難しいし、居心地も良くない。そういった事態を回避するためには、こちら側から外資系企業のカルチャーに溶け込む必要がある。そういった柔軟な対応が得意な人であれば、40代からでも外資系企業で活躍することは可能であろう。

3. 「45歳定年制」と40代からの外資系企業への転職

2021年9月、サントリー新浪社長の「45歳定年制」に関する発言が炎上した。
しかし、これは従業員に向けた発言ではなく、経営者の組織である経済同友会での発言である。経営者の中には、これに賛同する声も少なくない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/abe561e39b18911ecc93dce2a971e6074c051c35

45歳定年制が将来実現するかどうかは別として、60歳まで年収を維持しながら働き続けることは既に難しくなっている。55歳~57歳になると、役職定年に該当し、肩書は剥奪され年収は2割位削られる。役職定年が50歳~55歳と前倒しになるに連れ、定年60歳というのは骨抜きになってしまう。

また、コロナウイルスの影響で、特定の業界は非常に大きな影響を受けている。このため、40代の社員にも早期退職制度を適用しているケースも見られる。こういった早期退職制度のターゲットにされてしまうと、制度としての定年は60歳でも、特定の社員にとってそれは意味をなさなくなる。

いずれにしても、40代のサラリーマンは、たとえエリートであっても、50代、60代の自分のキャリアを真剣に考える必要がある。副業を起点に独立・起業を目指したり、ベンチャー企業の経営者を経由するといった途もあるが、大幅な年収ダウンを伴うリスクもある。

この点、外資系企業への転職が可能であれば、同じ業界において年収の維持・向上、昇格を図ることも可能となる。

地道にエージェントに登録して、粘り強く探せば上記の様なニッチな外資系のポジションを見つけることは可能である。メガバンクの場合も、将来は決して楽観できるわけでは無いので、こういったキャリアを模索してみてもいいだろう。

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