1. 終身雇用が当然の大手生保でも転職に興味を持つ時代?
昨年の秋、大手生保の40代の管理職から転職について相談を受けた。
大手生保で40代なら、定年まで今の会社で働く以外に選択肢は無い気もするが、転職を考えるようになった経緯について尋ねてみた。
聞いてみると、先ず先行き不安が挙げられると言う。
もちろん、リストラとかという不安はなく、自分の代は定年までは逃げ切れるとは思っているのだが、年収が頭打ちか、若干減少傾向にある。そして、役職定年があることを考えると、あまり明るい将来が見えないのが不安なのだという。
もう1つは、運用部門にいた同期が、外資系運用会社又は国内系運用会社で専門職として働いているので、自分も機会があればそういう仕事をしてみたいということだ。こちらは無謀だと思えるが、生保の転職マーケットはよくわからないので、金融機関特化の大手エージェントに相談してみた。
2. 40代の大手生保管理職の転職における選択肢
金融機関の転職に強いエージェントに相談してみたところ、証券や銀行と比べると少ないが、最近では40代の生保勤務の人の転職希望者も以前よりは増えてきているという。現実的な転職の選択肢としては、以下のようなものがあるとのことだ。
①外資系運用会社
40歳を過ぎて、初めて外資系に転職するのはカルチャーフィットの観点等から難しいとされている。しかし、英語対応が可能で、現在運用部門に勤務中であれば可能性はあるという。もっとも、その場合のポジションは年齢的にSVP/Directorクラスであるため、求められる条件が厳しく、単に運用部門に在籍しているだけでは不十分で、相応の実績が必要とのことである。
②国内系運用会社
国内系エージェントによると、頭が痛いのは、十分な業務経験が無くても国内系なら転職できるのではないかという期待を持った人が時々いることだ。
過去に運用部門に在籍したことが無い、過去にあったとしても大昔に数年の経験のみというような場合には、国内系運用会社からは全く相手にされない。ところが、運用会社は生保からすると子会社の位置付けなので、軽くみているのかも知れない。いずれにせよ、十分な業務経験が無いと、国内系運用会社への転職はまず無理だ。
現在生保の運用部門に在籍している人で、40歳を過ぎて外資に行くのは大変そうなので、国内系運用会社への転職を検討する人もいる。しかし、これもそれほど簡単ではない。それは、能力とか経験値の問題ではなく、ポストの数の問題である。
国内系運用会社は大手金融機関の子会社的な位置付けにあることが多い。このため、執行役員とか部長クラスが、親会社から天下って来る場合が多い。加えて、親会社の合併に伴い、子会社である運用会社も合併しているケースがあるので、リストラが無い日本においては、管理職ポジションがダブつくことになる。このため、国内系運用会社は部長や課長等の管理職ポジションは間に合っていて、わざわざ外部から採ろうという気にはならない。
もっとも、最近ではオルタナティブプロダクトとかITに強い人材に対するニーズが強まっており、このようなスキルがあれば40代でも転職可能ということである。
③外資系生命保険会社
具体的には、アフラック、アクサ、メットライフ、プルデンシャル、チューリッヒ、マニュライフといったところである。アフラックは新卒重視であるが、中途採用も行っているとのこと。募集職種としては、運用以外にも、経理、人事、法務コンプライアンス、IT、営業企画・営業管理系と幅広い。
また、英語力が求められないポジションもそれなりにあるので、ここであれば可能性はあるだろう。
もっとも、留意すべきは年収水準である。
課長(マネージャー)レベルの年収水準は、1000~1300万円程度であり、国内系大手生保の課長クラスと比較すると若干低い水準であり、わざわざ転職する妙味は無い。また、マネージャーより1ランク上のポジションでも1400~1700万円位であり、2千万超えは非常に難しい。
ただ、外資系と言っても、それほどハードワークじゃないし、リストラリスクも高くはない。
④その他国内系生保他
損保系子会社の準大手生保、楽天生保、ライフネット生命、SBI生命等がこのカテゴリーである。ただ、準大手にしてもネット系にしても、給与水準は大手生保よりも当然低い。ただ、部長とか高いポジションとか肩書に拘るのであれば、選択肢となり得るだろう。
⑤フィンテックベンチャー
今ではすっかり騒がれなくなったが、コロナ前にフィンテックベンチャーが注目された時期もある。インシュアテック系のベンチャー企業は無くもないが、エンジニアとか、生保免許取得に関して当局対応ができる人材など、40代の場合には、一定の専門知識が求められるので、上記③や④のカテゴリーと比べると、かえって内定を取るのは難しかったりもする。
3. まとめ
40代の大手生保の管理職が転職可能なところは、外資系生保、準大手やネット系生保等、無いこともない。
しかし、年収や安定性、勤務時間等を考慮すると、あえて転職するメリットは特に無いのではないだろうか。
やはり、大手生保で40代まで働くと、最後まで会社に残って、年収を上げたければ副業で頑張るしか無さそうだ。