1. 法政大学法学部の概要
法政大学法学部は定員804人、法律、政治、国際政治の3学科から構成される学部である。
2019年入学の、男女比率については、57:43で、男子学生の割合がやや高くなっている。
偏差値については、パスナビ情報によると、57.5~62.5となっており経済学、経営学部、国際文化学部とほぼ同じくらいのレンジとなっている。
https://passnavi.evidus.com/search_univ/3050/campus.html
なお、法学部のキャンパスは市ヶ谷にあり、近年では圧倒的に都心立地が好まれ、その意味では立地には恵まれていると言えよう。
2. 法政大学法学部の就職について
①大学の公式HPによる開示について
2018年度の法政大学法学部の卒業者数は約800名である。
そして、そのうちの32名が進学する。卒業者に占める進学者の比率は4%であり、私立文系学部においては特に高くはない。
この点から、法科大学院への進学者の割合は特に高くはなく、予備試験での実績を踏まえると、法曹志望者はそれ程多くは無さそうである。
就職における特徴は、例年、公務員の割合が高いことである。
大体、毎年就職者のうち、約15%が公務員になるようである。
民間企業就職者のうち、金融・保険がトップシェアであり、就職者の18.3%を占めている。
続いて、サービス業が11.7%、製造業が11.7%、情報・通信が11.3%、卸・小売りが9.2%となっている。
公務員も含め、比較的業種においては分散されているようだ。
https://www.hosei.ac.jp/careercenter/syushoku/gakubu/hogaku/
②具体的な就職先について
法政大学法学部の公式HPの具体的な就職先の開示は十分とは言えない。
主な就職先が以下の通り列挙されているが、各社毎の就職者数等は開示されていない。
キーコーマン東京本社、サントリー食品インターナショナル、アサヒビール、東レ、日本たばこ産業、トヨタ自動車、本田技研工業、川崎重工業、凸版印刷、村田製作所、富士通、日立製作所、三菱電機、三井住友銀行、三菱UFJ信託銀行、りそなグループ、みずほFG、三菱UFJ銀行、三井住友信託銀行、日本生命保険、東京海上日動火災保険、明治安田生命保険、損害保険ジャパン日本興亜、三井住友海上火災保険、大和証券、日本政策金融公庫、ジェーシービー、JR東海、JR東日本、JR西日本、日本航空、ANAエアポートサービス、ソフトバンク、NTTドコモ、NTT東日本、日本放送協会、読売新聞東京本社、ベネッセコーポレーション、日本通運、JTBグループ、法務省、農林水産省、総務省、財務省、厚生労働省、東京高等裁判所、最高裁判所
3. 法政大学法学部の就職に対する評価
上記のリスト掲載企業だけだと、就職者全体のほんの一部しかカバーできていないのでも、評価することは難しい。
但し、金融・保険がトップシェアであることもあり、メガバンク、大手信託銀行、大手生命保険、大手損害保険、大手証券に広く実績があり、大手金融機関については相応のプレゼンスがありそうだ。
この点については、法政大学経済学部、経営学部といった経済系の学部と共通していると思われる。
サービス業については、民間企業では金融・保険に次ぐシェアだが、日本放送協会、読売新聞東京本社、JTBグループが上記のリストに掲載されているが、それ以外は不明である。
製造業については、キッコーマン、サントリー食品インターナショナル、アサビヒール、東レ、JT、トヨタ、ホンダ、村田製作所、日立等、大手の人気企業での就職実績がある。
情報・通信については、ソフトバンク、NTTドコモ、NTT東日本が上記リストからは読み取れるが、それ以外の状況はよくわからない。
就職力を判定する上で、普遍的に人気が高く、入社難易度が国内系企業の中では最も高いと考えられる総合商社への就職状況が参考になる。
この点、2018年度の法政大学全体からの総合商社への就職状況は、
三井物産2名、住友商事1名、丸紅1名、双日1名の5人のみである。学部別の内訳は不明である。これは、MARCH全体の課題かも知れないが、商社への就職者はあまり多くない。
人気の総合系コンサルティング・ファームについては、大学公式HPのリストからは就職者が見当たらなかった。もっとも、法学部という学部の性質上、経済系の学部程にはコンサルが人気であるとも限らないので、この点は必ずしも課題であるとは言い切れない。
4. 法政大学法学部の就職における課題
まず、課題としては2018年度における業種別トップシェアの金融・保険セクターについてどう考えるかである。
これは、法政大学法学部だけの問題ではないが、早慶、MARCH、関関同立といった有力私立大学の文系学部において、全般的に金融機関のシェアが低下してきている。
その背景としては、アベノミクスの好況期において、メガバンクを中心に大量の新卒採用が行われてきたが、超低金利による収益の低下や実店舗や人員の余剰化の問題が生じ、銀行が近年大幅に新卒採用者数を抑制し始めたからである。
大手生損保や大手証券会社については、銀行ほどには顕著に減らしていないが、特に証券業界は手数料ゼロ化や顧客の高齢化といった構造的な問題点の影響もあり、今度は新卒採用者数を削減していくリスクがある。
大手生損保についても、少子高齢化で縮小していくであろう国内市場がメインであるので、長期的には楽観視できないだろう。
そう考えると、今までの様には大手金融機関には入社が難しくなるので、情報通信、製造業、その他サービス業務、或いは、法学部であれば公務員や法律系資格職も検討する必要が生じるのではないだろうか?
その場合においては、法学部としての何らかの強みを活かしたいところである。
他大を含めた法科大学院や予備試験のサポート、公務員試験の強化、司法書士・行政書士・社労士といった法律系資格職の紹介といったものがその一例である。
また、大学や学部を問わず、グローバル経験者である帰国子女や留学経験者は就職において競争力を有している。従って、留学制度の強化とか語学教育の支援といったサポートも有用ではないだろうか?
今後も少子化の流れは止められないであろうから、将来優秀な学生に入学してもらうためには、MARCHの中でも何かしらの就職支援策が求められるところである。