早稲田大学文学部の就職と課題。文科構想学部と比較するとどうか?

1. 早稲田大学文学部の就職状況

①早稲田大学文学部の就職に関するデータ

早稲田大学の場合、全学部で5名以上就職している企業・官公庁につて、学部別に詳細に開示をしてくれている。
https://www.waseda.jp/inst/career/assets/uploads/2019/07/2018careerdata.pdf

これに基づいて、早稲田大学文学部から3名以上就職した企業をマニュアル作業で抽出すると、以下の通りである。

(就職者数 531人) (就職者数 772人)
文学部 文科構想学部
富士通 3 2
三菱UFJ銀行 4 4
東京都 5 6
三井住友銀行 3 0
みずほFG 4 3
東京都23区 6 7
東京都教育委 3 1
ニトリ 3 3
日本生命 3 3
三井住友信託銀行 4 3
第一生命 4 6
電通 3 1
明治安田生命 3 6
ベネッセ 3 3
アフラック 4 1
小松製作所 3 0
ジュピターテレコム 3 0
KADOKAWA 3 2
そごう・西部 3 0
集英社 3 2

(出所:早稲田大学HP 「2018年度 学部・研究科別就職先ランキング ※就職者5名以上」より、外資系金融キャリア研究所が抜粋)

②早稲田大学文学部の就職の特徴

早稲田大学文学部の就職者数は意外と少なく、2018年度については531人である。
全体的な特徴としては、経済学部系の学部と違って、特定の業種に集中しておらず、分散・ロングテール化が見られることである。例えば、上記のリストの3名以上の就職先の人数を合計しても70人であり、全就職者の13%しかカバーできていない。

それでも、大手金融機関には一定数就職しており、メガバンク合計で11名、日本生命、第一生命、明治安田生命の大手生保に合計10名、三菱UFJ信託銀行と三井住友信託銀行を合わせて6名、その他、アフラックに4名、野村証券に2名、東京海上日動火災に1名、三井住友海上火災に2名と、幅広く就職している。

また、人気のマスコミ業界については、電通に3名、博報堂に2名というのが光る。
さらに、KADOKAWAに3名、集英社に3名、日経新聞に1名、共同通信に2名、朝日新聞に2名、ADKホールディングスに1名と文学部らしさを出していると言える。

なお、最も人気が高く難易度も高いとされる五大商社については、三井物産2名のみとなっている。この点については、若干残念な気がするが、そもそも商社狙いの学生は文学部を志向しないとも考えられ、やむを得ないのかも知れない。

他方コンサル業界については、何故か大量採用のアクセンチュアこそ0名であるが、アビームコンサルティングに1名、EYアドバイザリー&コンサルティングに1名、PwCコンサルティングに1名、ベイカレントコンサルティングに1名の実績がある。こちらも、文学部からコンサル志望の学生というのもあまり多くは無さそうであるが、総合系ファームであれば早稲田の文学部からは可能性は十分あるのではないだろうか。

全体としては、文学部という性質上、商社、コンサル、金融という人気業界を志望する学生の比率は相対的に低いと推察され、見映え的には、政治経済、法、商、国際教養と比べると若干劣るかも知れない。しかし、マスコミでは一定の存在感を示しているし、ロングテールだが、多くの者は大企業に就職している。従って、早稲田大学文学部の就職状況は良好であると評価できると思われる。

2. 早稲田大学文化構想学部の就職状況との比較

①早稲田大学文化構想学部の就職状況

文化構想学部の就職状況の特徴は、文学部と同様に業界的に分散していることだと思われる。そして、必ずしも、金融、商社、コンサルという人気業種を追求する学生が多いとは限らない点も類似していると思われる。

なお、就職者数という点については、文学部が531人に対して、文化構想学部は772人と、約1.5倍位となっている。

上記の文学部との比較表に掲載されている企業以外で、文化構想学部から4名以上の就職実績がある企業をピックアップすると以下のようになる。

文科構想学部(就職者数 772人)
NTTデータ 9
NHK 8
セプテーニ・ホールディングス 7
楽天 6
三菱UFJ信託銀行 6
電通デジタル 6
東京海上日動火災 5
大和証券 5
アビームコンサルティング 5
NTT東日本 5
三井住友海上火災 5
凸版印刷 5
住友生命 5
ヤフー 4
サイバーエージェント 4
SCSK 4
ベクトル 4

(出所:早稲田大学HP 「2018年度 学部・研究科別就職先ランキング ※就職者5名以上」より、外資系金融キャリア研究所が抜粋)

ここでの特徴は、IT系、ベンチャー系が目立つことである。
NTTデータの9名をはじめ、セプテーニ7名、楽天6名、ヤフー4名、サイバーエージェント4名、ベクトル4名、SCSK4名と、かなりの存在感があり、ヤフーやサイバーエージェントといった人気ITベンチャー企業への実績は評価されると思われる。

また、NHKに8名、キーエンスに5名、電通に1名、KADOKAWAに2名、集英社に2名といった就職実績も光る。

②早稲田大学文化構想学部の就職における課題

上記の通り、早稲田大学文化構想学部は、人気企業を含む、幅広い業種に卒業生を送り込んでおり、一定の就職力は評価できるのではないだろうか。

学部の性質上、金融、コンサル、商社といった人気業種に学生を誘導する必要は無いだろう。しかし、何らかの学部としての方向性はあったほうが学生や企業に対してアピールできるのではないかと思われる。

特に、学部としては国際性を標榜しているので、もう少し外資系企業や日本のグローバル企業の割合を増やしてもいいかも知れない。

比較的新しい学部であるので、今後の就職力の強化に期待される。

3. 2021年8月27日加筆:21卒の就職状況についてのアップデイト

①文学部21卒の就職状況のアップデイト

2021年7月中に、早稲田大学公式ホームページにおいて、2021卒の就職状況が更新された。

早稲田大学文学部の21卒の就職者数は489人と他学部と比べて少ない。主な就職先については、大手金融機関を見ると、三井住友銀行ゼロ、三菱UFJ銀行ゼロ、みずほFG4名、三井住友信託銀行1名、三菱UFJ信託銀行1名、東京海上日動火災3名、三井住友海上火災1名、日本生命3名、明治安田生命2名、大和証券1名、野村證券1名である。メガバンクが非常に少なく、文学部ということもあり、金融機関は相対的に少ない。

近年大量採用が目立つ総合コンサルについては、アクセンチュアに2名、アビームに2名が就職している。

国内系企業で最も人気が高いと思われる5大商社については、残念ながらゼロ名となってしまった。

電通・博報堂については、博報堂1名のみとなっている。

他方、東京都23区職員、横浜市職員、千葉県職員等の公務員になる者は、比較的多い。

全体的に文学部は公務員の割合が高く、民間企業でも特定の業種に拘ることなく非常に多くの業界に分散しており、ロングテール化していることが特徴である。

経済系学部ではないので、必ずしも難関企業・人気企業を志向しないというのが学部の性質上うかがえるが、本人の希望であれば問題ないだろう。他方、文学部に入学したものの、商社、コンサル、大手金融機関を目指したいという場合には、周りに志望者が少なく情報収集が難しいと思われるので、政治経済学部や国際教養学部の学生と交流することを意識すべきだろう。

②文化構想学部21卒の就職状況のアップデイト

文化構想学部の21卒の就職者数は708名である。メガバンクの就職状況は、みずほFG2名、三井住友銀行1名、三菱UFJ銀行ゼロ名と、文学部同様多くない。他方、NTTデータ9名、NRI4名、富士通8名、楽天3名、日本IBM3名とIT系企業では一定のプレゼンスを示している。また、流行りの総合コンサルについては、アクセンチュア6名、アビーム6名と経済系学部と同様に多い。しかし、5大商社については、三井物産2名のみとなっている。

文化構想学部も文学部同様、金融機関には過度に集中しないが、IT系や総合コンサルを見ると、かなり経済系学部に近い傾向を示している。ただ、政治経済学部、国際教養学部、法学部、商学部と比べると、人気企業への就職者数は少ない。こういった企業を目指す場合には、他学部や他校の学生と積極的な交流をし、情報収集を十分行うことが必要であろう。

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