前回、初心者向けの投資用不動産について相談するために、不動産屋を訪問した。
最初に投資をするには、堅めの物件がお勧めで、その際の(表面)利回りは5%台が基本であるという話であった。
<前回、投資用不動産の相談に行った際の記事>
https://career21.jp/2020-03-19-151820
しかし、堅めの物件ではなく、リスクを取って利回りを増やそうという狙いの場合、具体的にどういった物件があるのか気になるところである。
そこで、今回、また別の都心にある財閥系不動産販売会社を訪問した。
このた、以下の話は、不動産屋のポジショントーク的なところもあるかも知れないので、その点はご留意ください。
1. 首都圏で利回り10%の物件は厳しい。ハイリスク型物件の目安は8%?
首都圏の物件で、リスクを取った場合、どれ位利回りを高めることが可能なのか?
利回りが二桁の物件を求めることは可能なのか?
この点について、某財閥系不動産販売会社の営業マンに聞いてみた。
すると、首都圏の場合だとハイリスク型と言っても利回り二桁の物件を探すのは難しいということであった。
もちろん、探せば見つからなくもないが、立地、築年数、駅からの距離、設備等、かなりのヤバめの物件になってしまうということである。
首都圏で、普通に見つかるハイリスク型の物件の場合は、利回り8%が目安になるという。
都心3区で駅から徒歩10分以内、築年数10~15年の物件の利回りが5%台とすると、
そこから、都心までの距離(駅の魅力)、駅までの距離、築年数、設備・広さ、環境等を落として行けば、その分利回りは上がる。
ただ、多くの条件を落とし過ぎると、その分、賃借人を見つけることが極めて難しくなってしまうので、ハイリスク型の物件でも、標準的なタイプだと利回り8%を念頭において探すのがいいのだという。
2. ケーススタディ
実際に、その某財閥系不動産販売会社の営業マンが、実際に扱っている物件をいくつか紹介してもらった。
そのチラシを見ると、以下の様な条件の物件があった。(2020年3月26日訪問時)
<物件A>
〇価格:900万円
〇立地:川崎市内、田園都市線沿線(鷺沼以外)、最寄り駅から徒歩7分
〇築年数:築28年程度
〇建物:鉄筋コンクリート、中高層、20数㎡の1R、バルコニー有
〇賃料:約6万円
〇(表面)利回り:8%
<物件B>
〇価格:890万円
〇立地:川崎市内、田園都市線沿線(鷺沼以外)、最寄り駅から徒歩7分
〇築年数:築30年程度
〇建物:鉄筋コンクリート、16~17㎡の1R、バルコニー有
〇賃料:約5.5万円
〇(表面)利回り:約7.4%
なお、物件Bの方が表面利回りは低くなっているが、こちらの方が物件の質が高いというわけではない。これらの価格は、オーナーの売却希望価格に過ぎず、物件Bについては交渉による値下げの余地はあるという。
3. 首都圏のハイリスク型の高利回り物件の特徴
①都心3区の堅めの物件と比べて、価格が安い
都心3区の、駅から徒歩10分以内、築年数10~15年の良好な物件の場合、20㎡台の1Rであっても、1戸あたりの価格は2,000万円を上回る。
他方、今回紹介してもらった、郊外のハイリスク型物件だと、1戸当たりの価格は1,000万円を切る物件がほとんどで、大体700~900万円のレンジである。
②物件が古い
都心から離れる程、物件の利回りは高くなる。とは言え、中央線や東急沿線の物件の場合だと、環境や利便性は悪くなく、取るリスクは限定的かも知れない。
しかし、リスクファクターとしては、物件の築年数がかなり古いということが指摘できる。
物件Aも物件Bも築年数が30年前後となっており、かなり古い印象は否めない。
特に、築年数が30年を超えてくると、賃借人を探すのが難しくなるので、この点は要注意という。
③物件が狭い
こちらは、上記②とも関連するのだが、この種の1R案件は、とにかく狭いという点が指摘できる。
物件Aは20㎡以上あるが、市場に出回っているのは、物件Bのような16~18㎡のものが多いそうだ。21世紀になって造られた1Rマンションは20㎡超が基準になっているようだが、バブル期やバブル崩壊初期の頃に大量供給された1R案件は、20㎡に満たないものが多かったということだ。
当然狭ければ、その分、条件は悪くなるので空室リスクは高まるということだ。
④設備が壊れるリスクも想定する必要がある
物件が古ければ、当然設備も古く、あちこち修理を要する箇所が増えるものだ。
典型的なのは、給湯器で、これを取り換えると20万円位はかかるという。そうなると、この種の1Rだと3ヵ月分以上の家賃が飛んでしまうことになるわけであって、このあたりのリスクも想定しておく必要があるということだ。
4. コロナショックの首都圏投資用不動産に与える影響
コロナショックは、当然、株式市場に大きな影響を与えているが、流動性の低い不動産の場合には、それが直ちに価格に反映されるわけではない。
とは言え、当然、コロナショックの影響は首都圏の投資用不動産市場にも影響があり、一部のオーナーが投げ始めているケースもあるという。
もっとも、だからと言って、2割以上安く買えるということはなく、投げると言ってもせいぜい5~10%程度のディスカウントで買えるかどうかという程度である。借入に依存していない体力のあるオーナーの場合、今のタイミングで投げ売りしたりはしないそうだ。
ただ、買い手の動きは急激に止まってきているようであり、上手く交渉すれば、それなりに良い条件で買うことも可能だという。
このあたりは、コロナショックに対する見方次第で、これから先はそれ程大きく悪化しないという相場観であれば、買い易い環境にあるようだ。
5. 感想:リスク・リターンのバランス的に、あまりお買い得感は無い?
築年数が30年前後で郊外の物件の場合、再開発とか人口流入によるアップサイドは望めない。むしろ、売却時には価格が購入時より下がっていることを想定し、それを如何に賃料の累積分で回収できるかという計算になるのだろう。
この点、都心3区で築年数が十数年の物件の利回りが5%台であることを踏まえると、利回りの差の3%はあまり魅力的でないように感じられた。
もちろん、1戸当たりの価格が1,000万円を切るのは買い易くて魅力だが…
むしろ、不動産販売会社の営業マンの言葉で印象に残ったのは、都心3区の中でも人気ナンバー1の港区の物件だと、この環境下でも売り自体がなかなか出てこないし、出てきても直ぐに買い手がつくということだ。
やはり、どうせ買うなら、良い物件という印象を持ったが、どうなのだろうか?
次回は、港区の物件についても調べてみたい。