1. コロナショックにより、採用フリーズは生じているか?
2020年3月20日現在、コロナショックはグローバルで深刻化しており、特に欧州が厳しい状況にある。株価は既に暴落しているし、自粛や閉じこもりによって、経済への影響も懸念される。雇用へのネガティブな影響が懸念される状況だ。
外資系の場合、「採用フリーズ」、或いは略して「フリーズ」という言葉がある。
これは、企業として採用活動を全面ストップすることを意味する。
フリーズが掛かると、事業拡大に係る人員増はもとより、退職者の穴埋めのバックアップ採用ですら止められてしまうため、大変気になるところである。
現状、外資系金融においては、全ての会社においてフリーズが掛かっているわけでは無さそうだ。しかし、オフィシャルにフリーズが掛かっているか否かに関わらず、人員増に関する申請などできる雰囲気では無いだろう。
むしろ、東京勤務の者にとっては、現在進行中の採用案件が止められる前に何とかしたいと苦慮しているところであろう。
このため、当分の間、新規の採用については、どうしても必要なバックアップ以外は、フリーズに近い状況と考えた方がよいのではないだろうか。
2. 過去に全面的なフリーズが掛かったケース。
各企業における業績悪化や、組織改編等の事情により、フリーズが掛かる場合はある。
しかし、リーマンショックの時の様に、全企業一斉にフリーズが掛かると、しばらくの間、転職活動ができなくなってしまうので大変厳しい状況に置かれてしまう。
外資系金融が全般的にフリーズとなっているような状況においては、国内系金融機関も似た様な状況にあるだろう。また、金融以外の事業会社についても積極的な採用活動は期待できない。従って、このタイミングでリストラとかをされてしまうと、どこにも行き様がない状況が生じてしまう。
外資系金融が日本において採用を本格化するようになったのは、1990年代以降なので、まだ30年位の歴史しかないのだが、過去に、全面フリーズの様な状況に陥ったことが3度あった。
(1)ITバブルの崩壊と2001.9.11のテロ事件による不況期
(2)2008.9のリーマンショック
(3)2011.3.11の東日本大震災
リーマンショック以降に社会人になった若手社員は、(1)の不況期についてはよくわからないかも知れない。ITバブルの時はグローバルで好況に沸いたが、その分、反動も厳しく、さらに、2001.9.11のビン・ラディンのテロ事件によって、その後1年間位は採用がフリーズになったのである。
また、リーマンショック程の影響は無かったかも知れないが、2011年の東日本大震災の影響も当然大きく、その後1年間位は、外資系金融機関による採用活動はほとんど止まってしまったと思われる。もっとも、これは日本のみに生じた事象であるので、比較的回復は早かった。(但し、その頃、欧米の景況感が特に良かった訳でも無いので、V字回復というような採用活動の盛り上がりは見られなかったと思う。)
今回のコロナショックの場合は、グローバルで生じている事象なので、過去の例を見ると、1年間位は転職活動が出来なくなることを覚悟しなければならないかも知れない。
3. 外資系金融機関への転職希望者がこの間に準備しておきたいこと
コロナショックは残念であるが、起こってしまったものはどうしようもないし、誰が悪いというわけでもない。
過去の厳しい危機の時も、外資系金融機関の採用は復活しているので、今はその時に備えて十分な準備をする他は無い。
外資系金融への転職は、昔の経団連企業の新卒採用のような、一斉スタートではない。
いつの間に少数の企業が採用をパラパラと再開し、気が付くと、全面的な採用活動再開というパターンである。
そのタイミングは誰も教えてくれないので、情報に強い者と疎い者とで明暗分かれることになるので、全社になるべき相応の準備を今のうちにしておきたい。
①職務経歴書の推敲と改善
就活の時は、ESについてどう書くべきかを大いに気にしただろうし、就活サイトや先輩たちからアドバイスをもらえただろう。
しかし、第二新卒を含む中途採用の場合には、ES、GD、インターン、集団面接といった面倒なものは一切なく、職務経歴書と面接のみである。
それにも関わらず、練られていない職務経歴書が如何に多いことか。
若手で、酷い場合には、家庭教師で生徒の成績が上がったエピソードや、イベントで300人を集客した話が盛り込まれているケースもある。
そもそも、中途採用は、就活とは違って、学生ではなく社会人が行うものであることを認識しなければならない。就活は忘れて、社会人としての転職活動にフォーカスすべきである。
職務経歴書の書き方については、ネットで検索を書ければ、転職エージェントが提供してくれているものが簡単に見つかる。形式的には、あの手のものは参考になるが、それでは十分ではない。
自分のアピールポイントを端的に伝えられているか検証すべきである。
この点、後述するように、複数の転職エージェントと接していると、中には信頼できるエージェントが見つかるはずだ。その場合、転職エージェントにチェックしてもらえば良いだろう。
また、形式面についても、長すぎたり(5p以上)、その会社の中の人しかわからないことを延々と書いていたり、読み手の立場に立っていない職務経歴書は実に多い。
時間がある間に、自分の長所を伝え、簡潔にまとまった職務経歴書を準備しておきたいところだ。
②複数の転職エージェントへの登録
社会人になるといろいろと大変なので、普段から付き合いのある転職エージェントは1~2社しかいない人は結構いる。
しかし、転職エージェントによって得意・不得意はあるし、外資系運用会社の場合には企業数が大変多いので、大手でも1つのエージェントではカバーできる社数に限りがある。
このため、外資系金融を得意とするエージェントや、ピンポイントで得意な企業を持っている個人経営のエージェントと数多く接し、ポジションがオープンになると人より早く動けるようにしておきたい。
また、部長以上に限られるが、ヘッドポジションとかヘッジファンドを狙う場合には、ハイドリック&ストラグルズやラッセル・レイノルズのようなエグゼクティブ・サーチ・ファームには登録しておきたい。いざ、お声が掛かった場合には、オファーをもらえる確率が格段に高いからだ。
<外資系金融と転職エージェントの選び方について>
https://career21.jp/2019-11-06-081334
最後に
今は厳しい状況であるが、次にチャンスが来た場合にはそれを確実につかめるよう、十分な準備をしておきたい。
転職エージェントは、現に動いている案件が無くとも、登録はできるし、面談してもらえるので、今のうちに拡げておくべきである。
また、職務経歴書の書き方一つで印象が大きく変わるので、こちらもこの機に十分に練っておきたい。