1. 外資系金融マンは不動産投資がお好き?
外資系金融マンの場合、国内系金融機関として定年(60歳)までの雇用が保証されるわけでは全くない。
従って、しっかりとした資産形成と資産運用を行う必要があるのだが、一般的に投資用不動産を好むのではないだろうか?
意外かも知れないが、外資系金融マンはあまり有価証券投資を行わない。それは、自己投資ルールが厳格で、原則として売買の都度、事前承認が求められる。そして、売りと買いの間に6か月間の待期期間が必要とされ、一般投資家よりも不利な状況にあるからだ。
また、外資系金融マンは普段投資の世界にいるため、自己の相場観で投資をしたところで、それほど簡単に儲けることはできないものだと認識していることも理由かもしれない。
このため、投資用不動産をメインの投資対象とすることが多い。
<外資系金融のサラリーマンの資産運用について>
https://career21.jp/2019-05-09-091852
2. 投資用不動産の初心者として、不動産屋に相談に行った。
私の場合、不動産は保有しているし、過去に売却経験もある。
また、銀行借入も活用している。
しかし、投資用不動産については保有したことが無いし、具体的に検討したこともない。
自宅を除き、現在保有している資産のポートフォリオは、ほとんどが銀行預金と個人向け国債。それ以外は、若干のRSU(株式ボーナスとして支給された分)と、確定拠出年金位しか無い。要するに、キャッシュを産み出す資産は保有していないのだ。
そこで、将来も踏まえた上で、少しくらいはキャッシュを産む資産を保有してもいいと考え、勉強の意味も兼ねて、東京都中央区にある財閥系不動産販売会社のとある支店を訪問してみた。
このため、以下の話は、不動産屋のポジショントーク的なところもあるかも知れないので、その点はご留意下さい。
3. 初めての投資用物件購入に当たって、理解しておくべき基本的事項
投資用不動産といっても、様々なので、「初めて投資用不動産の購入を検討している初心者」という前提で、相談してみた。
いきなり、一棟買いとか、郊外のハイリスク・ハイリターン型物件に投資をするわけにも行かないので、とりあえず最初に検討すべき、手堅い物件ということを前提として相談したのである。
①予算について:とりあえず2,000~3,000万円
東京で、とりあえず購入する投資用不動産としての予算は、2,000~3,000万円位が無難ではないかということだ。
流動性の高さや、空室が生じた場合の賃借人の探しやすさを考えると、東京都23区内の駅から徒歩10分以内、築年数10~15年の1R物件が無難ではないかということだ。
②銀行借入について:住宅ローンとは金利水準が違う
投資用物件について、銀行借入を使うか否かによって、投資戦略は違ってくる。
現在の様な超低金利の環境下だと、借入を使った方が得な気もするが、必ずしもそうでは無いという、
その理由としては、住宅ローン金利とは異なり、投資用不動産の借入金利は2%程度が目安となるからだそうだ。(2020年3月19日時点の話)
住宅ローンのように1%を切るような超低金利では借りられない。これが大きな違いだ。
もちろん、中には1%台の金利で借りられる人もいるが、とりあえず2%位は想定しておいた方が良いということだ。
また、とりあえずキャッシュで買えるのであれば、銀行借入を使わない方がいいのではないかというのが不動産屋の話である。
もっとも、期間としては20年以上の長期借入は可能だし、頭金も2割位あれば審査には普通に回るということなので、慣れてくれば、銀行借入の使用範囲が狭いわけでは無さそうだ。
③物件について:とりあえず都心3区が堅い?
とりあえず、最初に投資を行う物件としては、都心3区がいいのではないかということだ。
都心3区とは、千代田区、中央区、港区を指す。
もちろん、これらに限定する必要は無く、郊外の目黒、世田谷、杉並あたりでも構わないのだが、ある程度、その地域に詳しいエリアが良いということだ。
そして、築年数で10~15年、1Rタイプ、駅から10分以内の物件が、流動性が高く、賃借人も探しやすいということだ。
都心3区で、このスペックを満たす物件を予算2,000~3,000万円で探しましょうということだ。
④利回りについて
投資用不動産の場合、単純利回り(表面利回り)と、そこから必要経費(固定資産税、管理費等)を控除した実質利回りとがある。チラシ等で記載されているのは、単純利回り(表面利回り)であることが多い。
(詳しくはこちらをご参照下さい。)
https://mansionkeiei.jp/column/28784
上述の、都心3区、駅から徒歩10分以内、築年収10~15年、1R、予算2,000~3,000万円の物件を想定すると、単純利回りは5%台が目安となるという。
その不動産屋によると、5%台前半なら見つかるが、6%を超える物件は難しく、その場合には築年数が古かったり、駅から遠いというような物件になるという。
そして、管理費、修繕積立金、固都税等の必要経費が共益費等を含む賃料収入の2割位と見込まれるので、実質賃料だと、4%というのが1つのターゲットとなるそうだ。
なお、これには売買の際の、初期費用(登記費用他)は含まれていない。
4. ケーススタディ
実際に、その某財閥系不動産販売会社のセールスが、実際に扱っている物件をいくつか紹介してもらった。
そのチラシを見ると、以下の様な条件の物件が散見される。(2020年3月19日訪問時)
〇価格:2,200万円台
〇立地:千代田区内、最寄り駅から徒歩4分
〇築年数:築16年
〇建物:鉄筋コンクリート、中高層、20数㎡の1R、バルコニー有
〇賃料:約9万円
〇(表面)利回り:5%弱。管理費、修繕積立金、固都税控除後の実質利回りは約4%
これ位のスペックの物件であれば、常時購入可能とのことだ。
なお、一般的には、価格については交渉可能で、市況やオーナーの状況によっては若干の値引きの可能性はあるということだ。結局その際は、実質利回りを巡っての交渉になるのだという。
5. 感想
世界的な超運用難のご時世、実質利回りが4%というのは悪くないようにも見える。
しかし、ここでの利回りは、空室になった場合を想定して計算したものではないので、空室が生じた場合にはダウンサイドがあることに留意しなければならない。
また、いくらで売却できるかによっても大きく投資成果が異なって来るので、そのあたりの投資判断が難しい点は、株式やREITと同様である。表面的な利回りに惑わされることなく、その将来的な価値を読まなければならないのである。
都心3区の場合だと、将来、大規模開発による価値上昇の可能性が無いとも言えないが、それはある程度価格にも織り込まれているし、そういう恩恵を受けるのは、ピンポイントの立地なので、そのあたりも勉強が必要だと感じられた。
投資用不動産というのは、相応の魅力のある資産クラスの1つなのであろうが、不動産屋のいいなりになっていては儲けることは難しいであろう。
投資をするには、その前に十分に学習した上で、複数の不動産屋を回って十分に物件の吟味を行う必要があるのは当然であろう。