1. 一般的に50代のサラリーマンの転職は非常に厳しい
昨年来、大手企業における45歳以上を対象としたリストラが話題になった。
日本の場合、今でも年功序列が強い社会であるので、基本的に「年上の部下」は誰も持ちたがらない。
また、労働市場の流動性の低さや人口ピラミッド的な要因から、どこの会社も40歳以上の管理職ポストは詰まり気味であり、40代の転職は非常に難しいとされている。
ましてや、50歳を過ぎると、それに輪をかけて転職は難しいと理解されている。
<50代のサラリーマンの雇用問題>
https://career21.jp/2019-10-24-082002
2. 外資系運用会社の場合、50代でも転職可能な人達がいる?
外資系金融機関のうち、外銀と呼ばれる外資系証券会社の場合、45歳が事実上の定年と言われるなど、40代後半以降で現役の社員はかなり珍しい。
他方、同じ外資系金融機関においても、外資系運用会社(バイサイド)の場合、全体的に平均年齢が高く、50代で働いている人達は珍しくない。
定年までとは言わないが、50代半ば位であれば、部署・職種に関係なく働き続けることは十分可能である。
3. 50代になって転職が可能な外資系運用会社の人達の特徴は?
外資系運用会社で、50歳を過ぎても転職が可能なヒトには、以下のようにいくつかのパターンがある。
①拠点長
外資系運用会社の日本の拠点には、現地法人形式と、支店形式とがあり、法人の場合には社長、支店の場合には支店長(CEO)というタイトルになる。
拠点長の場合は、そもそも拠点におけるトップなので、「年上の部下」にはなり得ない存在なので50歳どころか、60歳を過ぎて現役の人もいる。
拠点長は1社あたり1つしかないポジションではあるが、外資系運用会社の場合は企業数が非常に多いのが特色である。外資系の伝統的運用会社の数だけでも50社以上あるだろう。更に、ヘッジファンドを加えると企業数はもっと増える。
また、毎年何社かは日本に進出してきているので、ポジションの数も増える。狙ってなれるポジションでは無いかも知れないが、全く不可能ではないところが、外資系運用業界の魅力でもある。
②各部門の部長
外資系運用会社の場合、従業員数で見ると、30~100人規模の会社は非常に多い。
そして、営業、運用、バックオフィスと様々な組織があり、部長のポジションは結構多い。
日本の金融機関で部長になるのは大変だが、外資系運用会社の場合だと、部長と言っても部下の数は片手で収まるケースが多く、決して、難しいポジションではない。自分も含めて、せいぜい3~4人のチームのヘッドという位置づけであり、日本の金融機関で言うと、課長位のイメージであろうか?
タイトルでいうと、必ずしもMDであることは無く、SVPとかDirectorという肩書のケースが多いのではないだろうか。
外資系運用会社の場合は、従業員数が少ない小規模な組織であるので、部長の上に本部長とか執行役員といった多重構造になっていない場合の方が多い。部長の上は社長(支店長)というケースが多い。
そうなると、自分が「年上の部下」に該当することは無いので、長く働きやすいのである。なお、部長であれば、海外の本社(或いはAPAC)のボスにレポートすることになるのだが、海外の場合には日本の様な年功序列の概念が希薄なので、海外のボスよりも自分の方が年上であってもそれ程問題にならないのである。
従って、運用部長、営業部長、人事部長、経理部長、業務部長、IT部長、コンプライアンス部長といった部長職であれば、定年までとはいかなくても、50代半ば以降も働き続けることが可能であるし、50代前半であれば普通に転職市場で声が掛かるのである。
③営業職の場合
外資系運用会社の場合、日本株運用部門は別として、それ以外の運用は海外でなされている。従って、海外で運用されているプロダクトを、国内の機関投資家、或いは、販売会社(証券会社、銀行等)を通じて個人投資家に販売するのがビジネスモデルである。
したがって、営業職は稼ぎ頭であるので、50歳を過ぎても顧客との強固なリレーションがある場合には、転職先にそれ程困らない。もちろん、「年上の部下」問題は生じ得るのだが、収益性が重要であるので、しっかり稼いでくれるのであれば、年を取っていることに対する許容性はミドル・バックオフィス等と比べて高い。
また、公募投資信託については、銀行や証券会社を通じて個人投資家に販売するので、数多くの金融機関での社内勉強会や、個人投資家向けのセミナーに駆り出されることが多い。このため、「勉強会要員」という立場の営業社員が一定数必要となるので、年を取っていても相応のコストで働いてくれる営業マンに対する需要はあるのである。
以上のように、部長職になくても、営業職の場合には50歳を過ぎても働くことができるポジションは結構あるのである。
④職人的なスキルが要求される事務系の職種の場合
外資系運用会社のミドル・バックオフィスには、職人的な専門性の高いスキルや経験が必要となる事務系のポジションがいくつかある。
例えば、ドキュメンテーションと呼ばれる、目論見書や有価証券報告書、運用報告書といった投資家向けのディスクロージャー資料を作成する組織がある。ここの仕事は、淡々と書類をミスせずに作ることができればOKであり、年を取っていてもキッチリと仕事をすれば、縦割りに近い仕事なので年齢が問題になりにくい。
また、クライアント・レポーティングと呼ばれる機関投資家向けの資料やレポートを作成する部門も同様である。
さらに、経理部やコンプライアナス部のようなバックオフィスにおいても、経験がモノを言うポジションにおいては、部長よりも年上でも、専門性を評価されて長く働いたり、転職市場でも引き合いが強かったりする場合がある。
但し、上記の様なポジションであっても、同じ位のスキルの人が他にいれば、そちらを優先されることは多い。誰でも、基本的に若い人を好むし、総じて若い人の方が年収が低くて済むことが多いからだ。
従って、競争力は年を取れば低下することは間違いないので、外資系運用会社で長く生き残ろうとするには、ミドル・バックでも部長になっておくことが望ましい。
4. 外資系運用会社は生涯賃金ベースで考えたい
外資系運用会社は、年収水準で比較すると、外資系証券会社(外銀)に見劣りする。
しかし、外銀が45年定年制と言われる中、外資系運用会社の場合は全体的に平均年齢が高く50代半ば位まで、部長になると更に長く働くことも可能である。
従って、生涯賃金ベースで考えると、その間、税制で有利な退職金や企業年金も蓄積されていくので悪くない金額が期待できる。
外資系企業といっても、外資系運用会社の場合にはほとんどが日本人なので、年功序列は強くあてはまる。従って、「年上の部下」にならない様、各部署の部長になっておくことが望ましい。