景況感悪化、コロナ騒動による採用環境の変化と就活における考え方

1. 景況感悪化、コロナ騒動による採用環境への影響

ここ数年間、採用環境は新卒・中途共に良好な状況が継続してきたと思われるが、消費税増税による景気への影響、突然生じたコロナ騒動によって、採用環境が悪化していくのではないかという不安がある。

2001年のITバブル崩壊と9.11のテロ事件、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災という事象によって、新卒・中途採用市場は大きな影響を受けてきた。

今回、具体的にどの程度の影響があるかはまだ確定しているわけではないが、何からのリスクシナリオを用意しておくことが堅実であろう。

2. 外銀、MBB、国内系金融専門職、商社一本という訳には行かない?

ハイスぺ就活生の志望業界・企業は、相変わらず、外銀、戦略コンサル、国内系金融の専門職、商社といったところに過度に集中している。

高学歴、海外経験、体育会、起業経験等の条件を備えたハイスぺの就活生も、ある程度、幅広に志望業界・企業を考えておいた方が良さそうで、最終的に行くか行かないかは別として、上記以外の企業からも内定を取っておいた方が精神衛生上望ましいと考えられる。

3. 避けたいのは、当初の軸から全く外れた方向転換

留意したいのは、パニック気味になって、当初の軸から全く外れた選択肢に飛びつくことである。

第1のパターンは、ベンチャー・起業路線への転換である。
もちろん、熟考した上で、こういった路線に転換するのは構わない。しかし、ずっと、高収入・社会的評価・スキルに注目して、金融専門職、コンサル、商社等を目指してきたのに、それが厳しくなったことを理由に、安易に方向転換するのはお勧めできない。

第2のパターンは、資格試験への転換である。
金融、コンサル、商社を志望するハイスぺ就活生が方向転換しようと考える資格は、法科大学院進学(或いは予備試験)か、公認会計士であろう。こういった資格は難易度が非常に高く、大学入学直後から専門学校に通って猛勉強している同期も少なくない。そうした中、消去法的な理由で切り替えても、モチベーション的に持たないリスクがある。

ベンチャー企業に行って失敗したり、資格浪人をして合格できなかった場合には、職務経歴上マイナスの履歴しか残らず、就職するよりもリスクが高い点を踏まえる必要があるだろう。

4. それでは、どういったところに志望先を拡げればいいのか?

基本的な考え方としては、第1志望と同じ価値観・方向性で、若干ランクを落とすということである。焦って、全く違うところを探したところで、穴場が見つかるわけではない。ランクを若干落とした企業に行った場合でも、景気は循環するし、若い時の転職力は非常に強い。

従って、次善のポジションで職歴をつけて相応の準備をしておけば、景況感が回復したタイミングで、中途採用でキャリアップを図るという戦略である。

①大手金融機関の場合

ハイスぺ就活生から第一志望とされる国内系金融の専門職は内定が取れる保証は無い。
そこで、どこに拡げるかというと、資産運用業界が考えられる。もっとも、国内系運用会社の場合、企業数は多いが、1社あたりの採用数は10~30人程度と多くない。このため、既に難化するのではないかという見方もあるようだ。

<運用会社について>
https://career21.jp/2019-01-09-072810

運用会社以外であれば、メガバンク、損害保険、生命保険が候補となるだろう。
他方、大手証券会社の総合職はあまりお勧めできない。何故なら、リテール営業があまりにもハードなので、次の準備をやる余裕が出来なくなるリスクがあるからだ。

もちろん、メガバンクや生損保のリテール業務も楽ではないが、証券会社のリテールと比較するとまだまだ恵まれていると思われる。

昭和の時代と比較すると、学生における評価は低下気味かも知れないが、業界トップの東京海上日動火災と日本生命は、金融業界におけるプレゼンスは高く、転職する場合におけるネームバリューは高いし、仮に、長期間働くことになった場合でも給与水準はトップクラスである。

<東京海上日動火災>
https://career21.jp/2019-03-22-064501

<日本生命>
https://career21.jp/2019-03-23-072129

②総合系コンサルティングファームについて

今でも、東大や早慶から大量に採用をし続けているのが、総合系ファームである。
近年の急激な採用増やDXブームの終焉リスクが気になるので、私としては、必ずしも総合系ファームはお勧めではない。

しかし、それは転職力に関する相対的な評価の違いである。確かに、総合商社や金融専門職に容易に転職できる程の転職力は無いかも知れないが、一般的な大企業やベンチャー企業への転職力は有しているし、普遍的なスキルは他の業界と比較すると習得し易い。

また、アクセンチュアなどはまだまだ採用に熱心な模様であり、第2志望的な位置付としては悪くは無い選択肢ではないだろうか。

<東大生のアクセンチュアに対する評価は高すぎか?>
https://career21.jp/2019-06-05-131148

<事業会社に対するデロイトの評価は高いか?>
https://career21.jp/2019-12-12-105516

③IT系の大手について

サイバーエージェント、ヤフー、楽天である。これら3社は魅力的なのであるが、文系の場合、金融や商社との年収格差が気になるのか、それ程入社難易度が高いわけではない。

しかし、セカンドキャリアを考える上では必ずしも悪くない選択肢となろう。

<東大生にとってサイバーエージェントは魅力的な就職先か?>
https://career21.jp/2020-03-02-174822

④商社について(双日、豊田通商)

商社については、総合商社7社全部受ける就活生は珍しくは無いが、自分に自信のあるハイスぺ就活生においては、5大商社しか受けない場合もあるだろう。

しかし、5大商社の難化を踏まえて、ある程度安全策を取りたい場合には、双日と豊田通商をキッチリと押さえておきたいところである。

商社の場合、事業ポートフォリオや社風・カルチャーが企業毎に結構異なっているので、複数受けると対策が面倒なのであるが、そこは取りこぼしが無いよう、万全の事前準備をした上で臨みたい。

⑤メーカーについて

3月2日にONE CAREERの東大京大・21卒就活ランキングが公表された。
この特徴の1つとして、メーカーの順位の大幅な上昇が目立ったように思われる。

例えば、資生堂が17位(+30位)、富士フィルム17位(+24位)、トヨタ自動車22位(+24位)、JT23位(+27位)、旭化成27位(41位)あたりがそうだ。

もっとも、このランキングは文系と理系を分けていないので、文系におけるメーカーの順位が上昇したのかどうかは定かではない。

文系に人気の、金融、コンサル、商社の難易度が上昇しそうだと考えると、メーカーにも目を向けてみようかという気持ちは理解できる。しかし、メーカーに行った場合には、転職力が高いとは言えず、業界を超えた転職は難しくなる。このため、消去法的な気持ちでメーカーも視野に入れる場合には、将来のキャリアについて問題無いか十分吟味する必要があろう。地方の工場勤務になった場合には、第二新卒で転職を図ることは極めて難しくなってしまう。

<ONE CAREERの東大京大・21卒就活ランキング>
https://www.onecareer.jp/articles/2279

⑥その他:とりあえずリクルート

私の場合、リクルートに対するポジティブなバイアスが掛かり過ぎているのかも知れないが、金融、コンサル、商社がダメだった場合の、押さえとしてはリクルートをお勧めしたい。

リクルートの場合は、人材系(HRテック含む)とメディア系の2つのビジネスラインがあるが、どちらに行っても、スキルは磨かれるし、ビジネス界におけるネームバリューは十分に高い。

特に、今後もいかに優秀なヒトを採用できるかということは、ますます企業にとって重要性を増してくると考えられる。このため、HRテックをも含む人材系のスキルを習得すると、セカンドキャリアにおける選択肢は十分拡がると期待できる。

<ハイスぺ就活生とリクルートの併願>
https://career21.jp/2019-11-07-081638

<東大・京大の就活生とリクルート再考>
https://career21.jp/2019-03-25-181350

5. 景気には必ずダウンサイドもあるので、逆境の際の対応法は重要

長い人生において、必ず景気の影響によって、採用市場が極端に悪化する時はある。
2008年のリーマンショックの時は、特にひどかった。

そういう時を上手く切り抜けられるかどうかが、ビジネスマンとしての寿命を左右する場合がある。パニック気味になって慌てて行動すると、大抵上手く行かないものである。そうならないためには、平常時から転職に関する情報を適宜収集し、複数の良い転職エージェントと付き合って、適切な行動がとれるように準備をしておくことが求められる。

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