「新卒」で商社よりもお勧めの企業はあるのか?2社目への転職力で考えてみた。

1. 「新卒」で商社はもうだめか?

Twitterの現役商社マンの人気アカウントが、「実を言うと、新卒で商社はもうだめでは」と呟いた。

商社は就活生の間で最も人気がある業種であるので、「それでは、どこに行けばいいのか」という疑問を持つ就活生や、若手ビジネスマンは多いだろう。

そこで、新卒で商社に行くよりも良いと考えられる企業について、自分なりに考えてみることとした。

2. ヒントは、「2社目」で商社以上のところに転職が狙える企業・職種

商社よりも良い会社といっても、いろいろな切り口がある。ここでは、年収・転職力・ステータスといった客観的・経済的な観点において、総合的に商社と同等かそれより上のキャリアを歩むことが可能となる企業・職種について考えたい。

実は、この点については、当該現役商社アカウントの方がヒントをくれている。
「2、3年後にものすごく優秀な中途を高給で採るようになります。」というtweetや、新卒でサイバーエージェントに入社をして中途でGoogleに転職した人に関するtweetがそれである。

要するに、新卒入社企業としての就職偏差値や待遇は商社よりも劣っていたとしても、2社目の転職によって、商社以上の名声や待遇を得られるような企業、或いは、商社に同期以上の高給で転職することが可能な企業を意味するのではないだろうか?

 

3. 「2社目」で商社以上の企業に転職が狙える条件とは?

「2社目」で商社以上の企業に転職を可能にするには、基本的に2つの条件の充足が必要であろう。

第1は、確固たる「専門性」である。これは、ゼネラリスト色の強い商社の弱みと認識されているところである。

専門性については、ヒト、モノ、カネ、情報というカテゴリーに沿って、以下で考えて行くこととする。

第2は、企業の持つ「ネームバリュー」である。中途採用で転職する際には、同じような職種であっても、当然企業の「ネームバリュー」によって転職力や市場価値は異なってくる。これは、新卒採用における学歴と類似しているかも知れない。

このため、その後に起業・独立によって商社以上の成功を収める可能性はあるかも知れないが、小規模ベンチャー企業については対象から除外することとする。

4. 具体的な企業について

上記の基準に即して、確固たる専門性が期待され、かつ、ネームバリューの高い企業について、ヒト、モノ、カネ、情報に沿って以下考えてみる。

①ヒト系のスキルが習得できる企業について

リクルート、パーソル、リンクアンドモチベーション、サイバーエージェントである。
但し、ここでは、リクルート及びパーソルはHRテック関連部門である。
サイバーエージェントは人事部門である。

今後、AIの進歩によってコモディティ的な人材は生き残れないと言われている。反面、AIで代替されないような高度の専門性を有するごく一部の優秀層には人気が集中し、如何に優秀な人材を確保できるかが企業の生き残りのカギとなるはずだ。

GAFAとかBATに限らず、グローバルなトップ企業は当然このことを認識しており、優秀な人材獲得に多大なる経営資源を投じている。

それに対して、今も新卒一括採用・年功序列、管理職以上は中途採用を行わないような日本の大手企業は、採用や人的資源管理(HRM)において後れを取っているはずだ。

さらに、人事の世界にも、HRテックという切り口が加味されていくので、テクノロジー分野に疎い大企業の人事スタッフはますますついて行けなくなるのではないか?

そうなると、上記4社のような、人事分野で定評があり、かつ、最先端のHRテックの分野での専門性も有していると、2社目における転職価値は非常に期待できるのではないだろうか。

また、人事スペシャリストの汎用性は非常に高い。どんな会社でも人事部門はあるからだ。
転職先としては、外資系金融も不可能ではないが、事業会社の勝ち組企業を狙うのが良いのではないか?

例えば、GAFA、マイクロソフトの様な外資系ITとか、P&Gのような消費財メーカーや、上場が見えている段階でのベンチャー企業のCHROのポジションを狙って見ても面白い。また、商社の人事部門も良いだろう。

なお、HRテック系にはベンチャー企業で面白いところもあるが、独立起業よりも、好待遇への企業への転職に主眼を置く場合は、ネームバリューがモノを言うので、上記の様な大手を選択するのが堅いやり方だろう。

②モノ系のスキルが習得できる企業について

モノ系といってもいろいろな業界・企業が想起されるが、ここでは、マーケティング或いは(法人)営業に定評がある企業に注目したい。

マーケティングというと、P&G、ユニリーバ、ロレアル、ネスレのような外資系消費財メーカーのマーケティング職が思い浮かぶ。このあたりは、1社あたり5~6人位しか枠が無いので、ある意味で商社以上の難関かも知れない。

但し、年収という観点からは、メーカー系は概してサービス業程は期待できず、1500~1600位が30代だと精一杯だろうから、商社からすると年収的には特に羨ましいとは感じないだろう。

また、マーケティング・スキルは必ずしも業界を超えて通用するとは限らず、消費財から外の業界に出られるわけではない。例えば、金融とかハイテク系では評価されるとは限らない。

更に、web系マーケティングはまた別のスキルが要求されるので、こちらの世界に行けるとは限らない。

外資系消費財メーカーのマーケティング職からアップサイドを狙うとなると、MBAを経由する等して、MBBのコンサルタントになるというのが良いかも知れない。

なお、日清食品とか花王の様に、一部の国内系企業でもマーケティング職を別採用しているところもある。しかし、商社との比較においては、あまりお勧めできるものではない。

何故なら、年収水準があまりにも違い過ぎるからだ。

<日清食品に対する東大、京大の就活生の評価>
https://career21.jp/2019-04-02-125140

<花王のマーケティング職と就活>
https://career21.jp/2019-05-30-092840

商社との比較において、モノ系のスキルが習得できる企業の中では、キーエンス、或いはセールスフォース、マイクロソフトといったIT系の法人営業職がお勧めだ。

キーエンスは転職する必要もないが、法人営業の強さには定評があり、外資系IT企業の法人営業をセカンドキャリアとすることも可能であろう。

<キーエンスへの就職について>
https://career21.jp/2018-11-20-094949

また、セールスフォースやマイクロソフトの場合には、IT系の知識も備わるし、ネームバリューも十分に高いからだ。昔は、IBMの法人営業というのも選択肢だったかも知れないが、今日では微妙なところであろう。

③カネ系のスキルが習得できる企業について

カネ系のスキルの習得、要するに金融系については商社以上に稼げる企業はある。
外資系金融、国内系証券会社のIBD、グローバルマーケッツ職が典型であろう。このあたりは、そもそも、商社以上に難関かも知れないが、両方から内定を取って悩む就活生もいるようだ。
その場合には、外銀等に行った方がいいのではないかというのが私の考えである。
従って、金融プロフェッショナルとしてのキャリア志向が強ければ、みずほ証券或いは三菱UFJモルガンスタンレー証券のIBD職であれば、それらを選択すべきではないか。

なお、IBDというか、M&Aスキルに拘るのであれば、GCAというブティックもある。既に難化しているので、滑り止めにはならないが、こういった選択肢もある。

<GCAについて>
https://career21.jp/2019-03-29-153019

また、同様に、Big 4アカウンティング・ファーム系のFASという選択肢もある。

<FASについて>
https://www.onecareer.jp/articles/2243

悩ましいのは、運用会社をどう考えるかである。従来は、就職偏差値とか一般的な評価において、商社と運用会社を比べると、圧倒的に商社の方が格上であった。しかし、直近では運用会社の人気がトップ就活生の間で急騰しているという話も聞く。途中で外資系に転職するというのが大前提だが、アップサイドを狙いたい、運用ビジネスに大いに興味がある場合には、商社よりも運用会社を選択することにも合理性はあるだろう。

<外資系運用会社の魅力>
https://www.onecareer.jp/articles/2162

それから、総合商社と比較すると劣るかも知れないが、事業会社で経理財務職に就くという手もある。日本企業は部門別採用を基本的に行わないのだが、JTとかソニーのように別採用をしてくれる企業もある。経理も人事と同様に、どういった業種でも求められるし、優秀な人には何時でも需要があるので、将来のCFO狙いという点ではお勧めだ。商社から内定を得られなかった場合には、ネームバリューの高い大企業の経理職について、長期的な視点からアップサイドを狙うという手もある。

最後に、現実的には商社への就活と併存するケースは少ないかも知れないが、財務・経理系の専門職としては何といっても公認会計士であろう。大半がファーストキャリアに選択する監査法人の待遇は商社と比べると見劣りするが、転職や独立によって商社以上のアップサイドの可能性があるのも公認会計士の魅力である。従って、大学卒業時には公認会計士試験浪人という立場で、その時点では商社内定者と天地の差があったとしても、5年後位には逆転することも可能なのだ。

東大、京大の経済学部に余裕で合格した者は、公認会計士に一発合格して、キャリアを考えるのもありだろう。

<公認会計士のキャリアプラン>
https://career21.jp/2019-04-11-144821

④IT/情報系スキルが習得できる企業について

先ず、IT系のカテゴリーなのかはさておき、商社よりも難しいとされるMBBの内定があるなら、そちらを選択すれば良いだろう。

IT系の場合には、将来、商社以上の待遇も期待できる企業はありそうだが、文系・非プログラミング職を前提とすると、そこまで多くは無いかも知れない。

とはいえ、GAFAから内定を得られたのであれば、営業、新規事業、マーケティングのスキルを付けられる部門であれば、そちらを選択すればいいだろう。もっとも、コーポレート系の職種の場合には、将来の社内異動の可能性等を踏まえて判断した方が良いだろう。

判断が難しいのは、国内系のトップIT系企業との比較である。
商社と比較した場合、ネームバリューや待遇において大きな差があるため、両方内定した場合に、商社を蹴る選択というのは現実的に難しいだろう。

具体的に名前が挙がるとすれば、サイバーエージェント、ヤフー、楽天であろう。
このうち、サイバーエージェントは特に面白い。広告営業でGAFA経由でキャリアアップを試みるプランもあるし、ネット系の投資事業や新規事業開発力には定評がある。また、メディア事業に従事することも可能である。人事以外のコーポレート職や、特定の業種(例えば出会い系アプリ)に特化した子会社でのキャリアは微妙であるが、ここは部門別に採用をしてもらえるのが魅力である。

広告営業とか、webコンサルティング領域での専門性を磨くのであれば、業界大手のオプトという選択肢もあり得る。もっとも、給与水準等はかなり落ちるので、将来の独立とか転職プランを明確にしておく必要があろう。

楽天の場合には、日本企業最強のEC部門がある。ここで専門スキルを磨いて、アマゾンとかTwitterとかの外資系ITに転職するプランもあるし、国内系企業大手や、IPO前の勝ち組ベンチャーに転身という選択肢もある。

他方、フィンテックとかカード、証券、保険あたりの金融部門は避けた方がいいだろう。そのあたりのスキルでは、IBDとかトレーディングのような稼げるスキルでは無いからである。

ヤフーの場合、非プログラミング職の場合は、ビジネスコースしか選択肢が無く、なかなか有望な職種を見つけるのが難しい。コーポレート職では特段競争力は無いので、他は、事業開発、EC、営業系といったところとなる。

結局、楽天、ヤフーと商社に両方内定して、商社を選択しないという判断は難しいので、商社から内定を取れなかった場合の、バックアッププランとして考えれば良いのではないだろうか?

ヒト系のスキルで登場したリクルートについては、メディアビジネス部門での妙味も十分にある。収益力は非常に高く、成功した起業家を多数輩出している部門でもあるので、こちらを狙うという手もある。

最後に、DXブームが継続し、商社も中期経営計画においてDX対応を打ち出しているので、ここで最も稼いでいる総合系コンサルティング・ファームをどう考えるかが悩ましいところである。

実際、転職エージェントのメルマガでも毎日のように、丸紅のDX要員の求人が飛び交っている。

ただ、商社から内定を取れば場合には、総合系ファームであれば、商社を選んだ方が無難では無いだろうか。何故なら、総合系ファームは近年の大量採用によって供給過多のおそれがあるのと、会社がDXで稼いでいることと、各社員にDXスキルが付くこととは別物だからである。この点、ネームバリューや稀少性において、MBBの様な強みを欠く総合系ファームの場合には、転職力はそれ程高くは無いという見方もある。

また、20代であれば、商社から総合系ファームであれば転職も可能であろう。

<デロイトと転職力>
https://career21.jp/2019-12-12-105516

⑤製薬業界

トップは数億円、外資系企業が多いということから、製薬業界に関心を持つ就活生もいるだろう。武田薬品とかアステラス製薬のような国内系大手製薬会社の場合、30代で1000~1200万円、40代課長で1200~1400万円レベルという。ただ、金融との違いは、外資系に行っても年収の大幅なアップは期待できず、せいぜい数百万円位の上乗せに過ぎないということだ。中には、40代で2000~3000万円という話も聞くが、それはR&Dのケースであって、研究開発が花形の製薬業界においては、文系はそれ程アップサイドを期待できないようだ。従って、商社の代替にはなりにくいと思われる。

⑥その他

三井不動産、三菱地所、NRIは、そもそも商社以上に内定が難しいだろう。
実際には、どれほど実例があるのかはわからないが、東京建物、東急不動産と商社に内定すると悩みどころであろう。不動産の世界でスキルを磨きたいという意思が明確であれば、両社を選択しても良いのではないだろうか。なお、不動産スキルという観点からは、信託銀行(三菱UFJ信託銀行、三井住友信託銀行)の不動産部門も面白い。しかし、配属を確約してくれないのが日本の銀行なので、最初からここを狙うのは難しい。

電通・博報堂については、商社以上の難関企業なのでそもそも内定を取れるのかという問題はあるが、年収水準はピーク時よりもかなり下がっているようだ。昔は、電通と言うと、「ショボい外資系よりも稼ぐ」というイメージがあり、経費も派手に使っていたが、今では残業代も減り、30代だと1500~1600万円は厳しいと聞く。こちらの世界が好きな人であれば、内定が出れば年収水準関係なく電博に行くのだろうが、年収だけの観点からすると、商社の方が良いのではないだろうか?

ベンチャー企業への投資といった切り口だと、かなりマニアックだが、ユナイテッドとか独立系ベンチャーというのも面白いと思う。

<ユナイテッド>
https://career21.jp/2020-02-06-143143

<独立系VC>
https://career21.jp/2018-12-12-081754

5. まとめ:迷った場合は、まだ商社で良いのではないか?

商社の場合、専門性の点において30歳を過ぎると転職価値が下がるという課題はある。
しかし、MBA留学や海外赴任等、キャリアを拡げる機会はあるし、何といっても給与水準や安定性では群を抜いている。

もちろん、将来、ある程度は、安定・高給というのは変容するかも知れない。ただ、それは今すぐに生じるものではないし、リスクがあるのは他のキャリアを選択した場合も同様である。2社目での年収やステータスアップを目論んで1社目を選択しても、3年後、5年後に、転職マーケットが今と同じとは限らないので、その点はリスクである。

従って、外銀、国内系金融専門職、MBB、外資系IT、財閥系デべという、新卒時点で既に商社以上に内定が難しい業種・企業を除くと、商社以上に魅力がある穴場的な業界・企業を探すのは難しい。

ただ、商社に落ちてしまった場合には、リクルート、サイバーエージェント、キーエンス、楽天、ニッチな金融系専門職といったところで職種を絞れば、2社目での逆転の可能性も残されていると言えよう。

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