LIFE SHIFT、人生100年時代と、外資系金融機関のキャリアプランについて

1. アーリーリタイアメントが当然の外資系金融の世界?

外資系金融、特に、外銀と呼ばれる外資系証券会社の場合は、45歳定年説という話もあるくらい、アーリーリタイアメントが当たり前の世界である。

ところが、LIFE SHIFT、人生100年時代という考え方が注目されるようになり、従来は定年は60歳位という認識であったが、今後は70歳位まで働き続けることも考えた方が良さそうな流れである。

そこで、外資系金融機関のリタイアメント・プランについて検討してみたい。

2. 外資系金融機関の人のリタイア後の暮らしぶりは、本当にピンキリ

外資系金融機関といっても、どれくらい稼げるかは時代環境やその人のポジションによって本当にピンキリの世界である。今回は、外資系金融機関勤務の人のリタイア後の暮らしぶりについて、大まかに3段階に分けて検討したい。

①年収数億、生涯賃金20億超、保有金融資産5億超の場合

これは主として、1990年代の外資系証券会社の勃興期に転職し、リーマンショックまでの間に稼ぎ切った一部の恵まれた人達のケースである。

リーマンショック前においては、外資系証券会社でフロント部門のMDになると年収数億円というのは珍しくなかった。そして、MDのポジションに10年位君臨できれば、保有金融資産は5億円を超え、40代でリタイアしてもその後の暮らしぶりは余裕である。

港区のマンションと軽井沢の別荘を往復し、高級ワインを開けて楽しんだり、海外の名門ゴルフコースでゴルフ三昧だったり、極めて優雅な暮らしぶりである。

もっとも、仕事に関しては、名目的な会社やファンドの役員を務めることはあっても、実質的には仕事はしていない状況にある。

②年収3000~5000万円、生涯賃金10億円前後、保有金融資産1~2億円の場合

これは、外資系金融のうち、バイサイド、外資系運用会社でそこそこ上手く行っている人達、または、外銀のバックオフィスのシニアポジションの人に該当するケースであろう。

年収3000~5000万円というと、十分な高給取りなのだが、上記①の外銀MDのような贅沢な暮らしはできない。

そもそも、40代でアーリーリタイアという訳にも行かず、外資系運用会社の場合だと、60歳とは言わないものの、50代半ば位までは働き続けることが多い。また、運用会社は全体的に平均年齢の高い業界でもあるので、50代半ば位までであれば働くことは可能である。

従って、リタイアする年齢自体は、日本の金融機関の人達と大きくは変わらない。

また、同じ外資系金融機関といっても、バイサイドの場合には、外銀と比較すると、暮らしぶりは控え目である。外銀の様に、ほとんどが港区に住むわけではなく、城南地区や横浜あたりの一戸建てに居住をしたり、フェラーリや高級ワインで派手にやることを好む人は少ないと思われる。

外銀フロント職でも、途中でリストラにあったりして、上記①のように稼ぎ切れなかった場合には、賃貸マンション経営に従事するケースも見られる。

証券会社の場合も運用会社の場合も、日本の金融機関は40歳以上の外資系金融の社員を採用したがらないので、40半ばで外資系をアーリーリタイアして、その後は国内系金融機関で60歳位までのんびりやるというようなシナリオは描きにくい。

③VP昇格前に外資系金融機関を去った場合

この場合は、アーリーリタイアには該当しないが、新卒外銀の場合だと3年後のアソシエイト昇格時には少なくとも半分以上は辞めているし、国内系金融機関やMBA経由でアソシエイトで外資系に転職をしても、VPに昇格できる保証は無いし、40代以降も働けるかはわからない。

そういった場合には、従来から国内系金融機関に転身するのがかつての王道だったのだが、最近の若手は、商社やベンチャー企業に転職する者も結構いるようだ。

このような場合には、日本の大企業のサラリーマンと同様、途中で、ストックオプションで一稼ぎ出来たり、起業で成功裏にEXITでもしない限りは、60歳位までは働くこととなる。

3. 70歳位まで働くことが普通の時代になれば、どう対応すれば良いのか?

①お金のためではなく、仕事に就いてみる

これは、生涯賃金20億超で勝ち抜けた場合の話だが、このカテゴリーだと実質無職である場合が多いだろう。現役時代、年収数億もあれば、年収1000万円の仕事はバカらしくて出来ないという感覚である。

とは言え、人生100年時代、70歳位まで働くのが当然という時代になれば、さすがに40代でリタイアするのは退屈するかも知れない。

そういった場合には、ベンチャー企業の社外取締役、監査役、顧問といった形で、お金目的ではなく働いて見るというのも1つの選択肢である。

ベンチャー企業には、外銀出身者に対するニーズが増えているので、需要はあるのではないだろうか?

②自ら起業をやってみる

これは上記①よりも、やる気があるパターンである。金融機関というのは規制業種であり、決まった仕事しかやってはいけないので、新規事業の創造というのは元来苦手である。

また、IT部門のスタッフを除くと、web系のビジネスとか技術には疎かったりする場合もあるので、ネット関連での起業というのは必ずしも得意でないかも知れない。

しかし、既に何件も外銀出身者のネット系ビジネスでの成功事例は出ていることからも、外銀の中には潜在的なビジネス創造能力を有する者も一定数存在するはずだ。

従って、気力と体力があれば、外銀で一稼ぎした後からでも、自ら起業してみるという選択肢は有り得るだろう。

起業といっても、二桁億円規模のEXITを目指さなければならないというわけではないので、堅実なビジネスでもOKである。

③副業を磨いてみる

外資系金融機関は、副業は全面禁止ということは無く、金融業と無関係であれば届出をすればOKな会社が多いと思われる。

例えば、マンション経営などを主目的とする資産管理会社を設立することとか、親族の会社の名目的な役員になること等は認められる筈だ。

もっとも、外銀の場合は基本的に多忙なので、なかなか副業をやっているような余裕は無いかも知れないが、外銀バックオフィスとか、外資系バイサイドの場合には、可能性はあるだろう。

今後も、副業規制は緩和されていくことが奨励されるであろうから、将来、金融以外の職業に就くことなども想定して、副業でのスキルを磨いてみることも面白いかも知れない。

④収益不動産投資を始めてみる

金融業界には厳しい自己投資規制が存在する。
株式、債券といった有価証券投資に関しては、事前承認が求められ、売買の間は半年位の待期期間がある。

また、職業上、有価証券投資で儲けることが簡単ではないことを知っているので、あえて自己証券投資をしないというケースもある。

他方、不動産投資については規制は無く、外資系金融業界においては、不動産投資を行っている者も結構いる。

将来の収益源の確保という観点からも、まだ収益不動産投資を行っていない者は、勉強も兼ねてやってみるのもありだろう。

最後に

リーマンショック後は、以前のように数億稼いで、アーリーリタイアが出来てしまうような人はごくわずかしかいないだろう。

外資系金融といっても、より多くの生涯賃金を稼げるようにする必要があるのだろうが、40歳を過ぎると、なかなか良い転職先が見つからない。特に、国内系の金融機関は40歳以上の採用に消極的だからだ。

従って、将来は、外資系金融とは言え、起業、ネットビジネス、不動産投資、他業種勤務等、金融以外に稼げる方法を勉強しなければならなくなるかも知れない。

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