1. 特にどうしてもやりたいことがなければ高給が期待できる会社を選びたい?
最初からやりたいことが決まっていれば、就活でも転職でも、企業選びは難しくないだろう。
しかし、自分が本当に何をやりたいかなんて、年齢に関係なく、簡単にはわからないものだ。
また、憧れていた企業・仕事であっても、いざ実際にやってみると、思っていたものとは違ったと期待外れな場合もある。それに、仕事の面白さは、その時の経済環境、流行、上司、同僚等によっても左右されるものだ。
このため、特にやりたいことが明確に無い場合には、とりあえず給料等の待遇や会社名から探して行くことも悪くないのではなかろうか?
2. 金融・コンサル・商社が高給であることは誰でも知っているが…
給与水準が高い業界というと、金融、コンサル、(総合)商社が直ぐに思い浮かぶだろう。
他には、大手マスコミ(キー局、電通・博報堂、大手新聞社、大手出版社)、財閥系デベロッパー(三井不動産、三菱地所、東京建物、東急不動産)あたりも高給であろう。
また、平均年収ランキングで上位の常連となっている、日本M&AセンターやストライクのようなM&A仲介業者、或いは、GCA、NRIなどがピンポイントで挙げられるだろう。
このあたりであれば、30歳の時点で年収1000万円に余裕で到達することが見込まれる。
3. 比較的高収入が期待できる業界・企業とは?
OB訪問等において聞かれるのは、上記のような業界・企業ほどの年収水準は求めないが、それなりに高給が期待できる業界・企業はどこかということだ。
具体的には、日本の大手企業で、30歳で700~800万円、30台で1000万円に到達するような業界・企業はどこかということだ。
そういった業界・企業については、本ブログでも取り上げてきたが、一覧になっていないので、ここで、東証株価指数33業種に沿ってチェックして行きたい。
①建設業
いわゆるゼネコンである。ゼネコンの世界では、スーパーゼネコン5社(清水、大成、大林、鹿島、竹中)が待遇において他社を話しており、特に近年はオリンピック特需の影響も有り、業績は極めて好調である。
このスーパーゼネコン5社の中でも、鹿島がトップであり、30歳時点では800~900万円、早ければ30代前半に1000万円に到達する者もいるようだ。
もっとも、これは残業代込なので、一律全社員がもらえるわけではないというところが、金融や商社との違いである。
https://career21.jp/2019-05-21-171834
②食料品
食料品については、昔から、食品3社ということで、味の素、キリン、サントリーが高給でイメージも良く人気である。
3社とも、食品業界の中では高給ではあるが、30歳では800万円位で、大台の1000万円に達するのは30代中盤~後半である。出世が早く、30代のうちに課長に昇格できると、1100~1200万円位は期待できるため、金融機関に準じた水準となるだろう。
https://career21.jp/2019-04-02-135721
③繊維製品
繊維業界においては、帝人、東レ、旭化成の3社が人気企業である。
もっとも、この中で、給与水準が最も高いのは旭化成では無いだろうか?
旭化成の場合、30歳で700~800万円、30代中盤~後半で課長に昇格できると1000万円に到達するようだ。もっとも、食品3社と比べると、若干低い水準と言えるだろうか。
https://career21.jp/2019-05-23-154442
④化学
化学業界で高給とされるのは、昔から、三菱ケミカル(旧三菱化学)と三菱ガス化学の2社だろう。とは言え、30代前半で700~800万円で、年収1000万円到達は30代の内にはやや難しそうである。その代わり、年功序列的な昇給ペースで40歳位では1000万円近くにはなれそうで、課長に昇格すれば1100~1200万円位まで到達可能のようである。
同じ、素材系メーカーであれば、後述する鉄鋼大手の方が若干高給であるかも知れない。
https://career21.jp/2019-05-21-092559
⑤医薬品
製薬業界には知り合いが結構いるのだが、40歳以上なので、残念ながら今の30歳前後の状況はよくわからないが、総じて高給で満足度は高いということだ。
大手金融機関のように、30歳で1000万円までは行かないものの、残業代や各種手当によっては900万円位の者はいるようだ。また、30代で課長代理になると、1000万円は余裕で超え、1000~1200万円位になるらしい。
面白いのは、外資系が強い業界で、転職もそれなりにある業界なので、国内企業であるが上の方はかなり高給の人がいるようだ。製薬会社だけあって、R&Dが花形の様で、シニア研究職の場合には40代で2000万円超の人もいるようだ。
大手製薬会社で40代の課長の場合、1200~1400万円は期待できるという。中には、もっともらっている人もいるかも知れないとのこと。
ただ、金融と違って、外資系に転職したからと言って、大きく給与が跳ね上がるというわけではないようだ。
おそらく、日本の製造業の中では、キーエンスなどの例外を除くと、もっとも高給の業界と言えるのではないだろうか。ただ、花形はR&Dなので、文系のトップエリート層が活躍できるポジションが明確にあるとは言えないところが悩みどころだ。
https://career21.jp/2019-03-25-171930
⑥鉄鋼業界
高度経済成長時代においては、花形産業であり、東大や京大からも数多く就職したのが鉄鋼業界である。昔から、メーカーの中では最高水準の待遇だったという。
業界内の合併によって、トップ校の文系の学生が検討するのは、日本製鉄とJFEではないだろうか。日本製鉄の場合、30歳時点だと700~800万円位だが、35歳位で1000万円に到達するという。これは、20世紀の時代から、「新日鉄だと35歳で1000万円に到達する」と言われていたので、今でも変わってないようだ。次長、部長に昇格すると、更に年収は上昇し、部長になると年収1500万円を突破し、大手金融機関の水準に近づくが、部長まで昇格できるのは一部に過ぎないようだ。
https://career21.jp/2019-05-20-091732
⑦電機・精密機械等
このセクターは、20世紀までは、自動車と並んで世界最高の競争力を有する、日本の産業界の2枚看板であった。しかし、R&D、設備投資に多額の資金が必要となるため、従来から給与水準的にはそれほど高いセクターではなかった。
ソニーは比較的電機業界の中では給与水準が高い企業であったが、当時の人事担当者は「いくら出せても、金融の7割位まで」と嘆いていたことを記憶している。
もっとも、ソニーの場合は一部の学生(極めて例外的だが)には初任給730万円を用意する旨公表する等、今後は、個別的に給与水準が決定されていく可能性があるので、人によっては大手金融機関並みの年収を実現できる場合もあるかも知れない。
https://career21.jp/2019-05-14-085748
また、このセクターだと、キーエンスの圧倒的な高収入が有名である。業種を問わず、国内系企業ではナンバー1であり、総合商社や大手金融機関をも余裕で上回るレベルである。
外銀・MBB・総合商社の採用枠が拡がらなければ、キーエンスの就活生における人気ももう少し向上するかも知れない。
https://career21.jp/2018-11-20-094949
⑧電力・ガス
東京以外では、電力会社はエリート企業であったのだが、原発事故の問題が生じて以来、事情は大きく変化している。
他方、ガス会社、特に、東京ガスと大阪ガスについては昔から安定・高給企業であり、今でも魅力は有りそうである。但し、転職能力はあまり期待できないので、今後は何が起こるかわからないという意識を持った上で、自己のスキルアップも意識する必要があるのは他のセクターと同様であろう。
https://career21.jp/2019-05-24-125017
⑨通信
ソフトバンクについてはWeWork問題が気になるが、日本の時価総額ランキングのトップ10に入っているのが通信キャリアである(2020年2月4日時点)。
ワークライフバランスを加味すると、給与水準自体はまずまずなのだが、金融機関や商社と比べると見劣りする点は否めない。大手金融機関の7掛け位だろうか?
このため、年収を軸とした場合には、金融機関に流れてしまう場合も多いと思われる。
https://career21.jp/2019-05-14-104722
⑩その他
独自の領域で、高給の会社と言えば、リクルートだろう。昭和の時代から、リクルートはそれなりに高給の会社で、東大、早慶の学生を熱心に採用していたことで知られている。一時は、バブル崩壊やリクルート事件で沈んだ時代もあったが、21世紀に入り、上場以降急拡大して、そのプレゼンスを高めている。そして、今では時価総額トップ10に入るまでの企業になった(2020年2月5日時点)。給与水準も、総合商社や最大手金融機関と比べると見劣りするが、30歳で1000万円は狙える会社である。グローバル展開、HRテクノロジーを武器に現在も成長途上にあるし、数多くの起業家を輩出し続けている。好き嫌いが明確に分かれる会社だろうが、十分検討の余地はあるかと思われる。
https://career21.jp/2019-03-25-181350
最後に
年収水準について、東証株価指数33業種を参考に、業種ごとに年収水準をチェックしていて気が付いたのだが、これらは驚くほど、1990年代と変わっていないということである。
外銀・外コン(総合系ファーム含む)が新たに加わったかも知れないが、メーカーでもサービス業でも高給と言われるところはほとんど変わっていない。
数少ない成長分野がネットIT部門なので、ヤフー、楽天、サイバーエージェント等の給与水準がもう少し高ければいいのだが、残念ながら、現時点では金融・商社にはまだまだ及ばない。もっとも、将来的には高度な専門性等を有する人材には例外的な高給が支払われる可能性もあるので、この点は変化する可能性はあるだろう。
また、(非上場の小規模な)ベンチャー企業、フリーランスで高収入を実現できる人が増えて来ると面白いので、ここは気になるところである。
それから、「副業」というのが推奨されているようだが、大手企業のサラリーマンでも「副業」で数百万円程度を稼ぐ方法というのはなかなか見当たらない。
長期的には、こういった分野も興味深いところである。