文系が医師並みの生活を実現するための、就活、キャリアについて考えた

1. 東大文系の学生が、「外銀全落ちしたら、医学部に入り直すか…」

東大工学部生或いは卒業生が、「医学部に入っておけばよかった…」というのは割とよく聞く話である。

<東大工学部と他大の医学部との選択>
https://career21.jp/2019-02-05-064559

しかし、東大文系の学生が、「外銀全落ちしたら、医学部に入り直すか…」というとショックである。

2. 東大他、文系のトップ層が将来のキャリアについて悩む理由

本来、文系と医学部というのは無関係な気もするが、東大文系の場合は中高一貫私立校(或いは国立)からの進学者が目立つ。そういった中高一貫校の文系トップ層は、同級生の1/3以上が医学部に進学したりするので、医学部というのが身近な存在である。また、学力的にも、医学部を選択しようと思えば十分合格することは可能であっただろう。

東大文系に進学できたのであれば、「医学部にしておけば…」などと悩む必要など無い様に見える。文系としての最上級のキャリアを歩めば、医師にコンプレックスや憧れなどを感じる必要は無いからだ。

しかし、良く考えてみると、東大文系とは言え、医師と同等の生活を実現しようと思えば、意外に選択肢は多くないことに気が付く。

本来、文系トップ層は、司法試験に合格し弁護士になるというのが王道の1つであったのだが、司法制度改革による弁護士増によって、弁護士の魅力が薄れてしまった。

また、東大文系の場合だと、官僚になるというのも王道であったのだが、天下りの規制、給与水準の抑制、薄給激務の敬遠ということで、明らかに継続的に人気は低下している。

そこで、外銀が人気なのだが、世界的に見て投資銀行業務はそれほど好調な訳ではなく、特に欧州系は収益的に厳しい状況にある。また、有価証券売買やM&A業務における手数料の下げ圧力も強く、ゴールドマン・サックスが小口金融とかクレジットカード事業に進出したりする状況である。このため、外銀の新卒採用者数は少なく、東大文系とは言え、外銀から内定をもらえるのは一部に過ぎない。

3. 医師並みの生活とは?

医師と言っても、公立病院の勤務医から、複数の美容外科を多店舗展開する医師まで、年収格差は極めて大きい。

そこで、医師のカテゴリー別の年収と、それに対応する文系の職種とを突き合わせると、以下の様になる。

・数億~
 (多店舗展開の)美容外科医院長vs外銀/PEファンドのMD

・5000万~1億円
 美容外科の分院長vs外銀フロントSVP/VP、渉外弁護士パートナー

・3000万~5000万円
 (保険診療の)開業医vs外資系アセットマネジメント(フロント職)

・1500万~2000万円
 勤務医vs総合商社

文系の就活最高峰の商社の給与水準においても、ようやく勤務医並みの年収である。
一般的な開業医レベルの生活を営もうとすると、結局、外資系金融機関のフロント部門の管理職或いは渉外法律事務所のパートナーになるしかないということだ。

要するに、国内系企業のトップ企業に就職をしても、年功序列型給与体系であるので、早くて50歳位で就任できる役員クラスにならないと、開業医クラスの生活はできないということだ。

4. 文系が医師並みの生活をするためにはどういったキャリア上の選択肢があるか?

とりあえず、文系が「医師並みの生活をする」というのを、「30代で年収2000~3000万円の生活」と仮定しよう。

それを実現するためのキャリア上の選択肢としては、以下のものが挙げられる。

①外銀に新卒で入社して昇格或いは他の外銀に転職する
②国内系金融機関に入社して、外資系金融機関に転職する
③渉外弁護士になる(そして、パートナーになる)
④MBBでスピード出世(30代でプリンシパルレベルに昇格する)
⑤ベンチャー企業にCXOクラスで転職して、SOを付与され、成功裏にIPOが実現する
⑥自ら起業し、まとまった金額でEXITに成功する
⑦個人ネットビジネス(アフィリエイト、note・サロン、せどり、YouTube他)で当てる

他にも、ソニー生命やプルデンシャル生命等の生保の歩合職で大成功するとか、ストライクや日本M&Aセンター等のM&A仲介の営業で大成功するというのもあるが、成功確率的には厳しいものだろう。

そう考えると、例えば、東大法学部や経済学部に進学できる能力があったとしても、医師並みの生活を送ろうとすると、かなり選択肢は限定的であると言わざるを得ない。

司法制度改革前の様に、とりあえず弁護士になれば、渉外事務所に入るとほぼ全員がパートナーになれ、或いは、街弁の場合でも開業すれば年収2000~3000万円は十分可能というのであれば、良かったのだが、今だとそういうわけには行かない。

また、リーマンショック後には、投資銀行のトレーディング業務が大幅に制約されることになり、以前の様に稼ぎにくくなってしまい、ポジションの数もなかなか増えない状況にある。

かといって、上記⑥のように起業を目指すといっても、成功パターンというのがあるわけではないし、高学歴エリートだからといって成功できるとは限らないものなので、東大文系が起業に走るというものでもない。

5. 将来的にはどうか?

将来、外資系金融という括りの中では、外資系の運用会社やヘッジファンドを目指す文系トップ層は増えるかも知れない。外資系の運用会社は基本的に新卒採用を行わないので、目指すとすれば国内系運用会社に就職することとなる。

しかし、国内系運用会社は金融機関の子会社であることがほとんどであり、ステータス・年収的にトップ就活生からは敬遠されがちである。しかし、そういうことも言っておれないと気が付くと、将来の外資系運用会社への転職を前提とした上で、一旦国内系を選択するトップ就活生も増える可能性はある。

また、現状だと国内系大手企業の場合は年功序列色が強いため、30代で年収2000万円が可能な企業というと、極端な歩合営業職を除くと、キーエンス位しか思い当たらない。

しかし、終身雇用の廃止、新卒採用の多様化という流れから、徐々にこちらは変化していく兆しもある。ソニーが初任給730万円、NECが初任給1000万円といった制度を公表しているので、特殊なスキルを持った人であれば30代で年収2000万円は可能になるかも知れない。

国内系大手企業のサラリーマンでも、頑張れば30代でも年収2000万円が可能になると、事情はかなり違って来るだろう。

それから、個人のネット系ビジネスで稼ぐという選択肢も、アフィリエイトでは極めて稼ぎにくくなったものの、将来は異なる収益法が出て来るかも知れない。まだまだ少数であるが、東大出身のビジネス系ユーチューバーも出始めている。高学歴の者がこちらの世界にはまだまだ進出していないが、本気で取り組めば成功できる者はいるはずだ。

最近では、総合商社に入社をしても若くして退職し起業を目指す者が増えてきているようだ。今後は、総合商社に限らず、アップサイドを求めて会社経営とかネット系ビジネスで独立を図る者は増えて行くのではないかと思われる。

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