新卒採用における配属対応法。メガバンクや証券会社等の金融機関では特に重要。

序. 部門別採用以外の場合における配属リスク~メガバンクや証券会社等金融機関では特に重要~

日本企業の場合、大半の企業は部門別採用を行っておらず、いわゆる「配属ガチャ」のリスクが問題となる。配属先によって、将来のキャリア、市場価値が大きく影響を受けるため、就活生にとっては深刻な問題である。

特に、メガバンクや証券会社等の金融機関においては、どこに配属されるかは非常に重要だ。何故なら、金融機関の社員の市場価値は、部門・職種によって非常に大きく左右されるからだ。例えば、証券会社の場合、IBDや市場部門と、経理、人事、コンプライアンス、IT、オペレーションのようなミドル・バック部門と、リテール営業部門とでは、転職が可能な先やその際の年俸水準が数倍位違う場合もある。メガバンクの場合でも、海外部門、ストラクチャード/プロジェクトファイナンス部門、アセットマネジメント部門、管理部門、リテール営業部門とでは、将来の行内における出世・評価や、転職の可能性が大きく異なる。

なお、最近では、メガバンクや証券会社は部門別採用を行っており、いわゆるオープンコースの総合職の場合、人気のIBD等の企業金融部門や市場関連部署に配属される可能性は昔よりも低くなっている点に留意が必要である。もっとも、最初の配属先で全てが決まる訳ではなく、次の異動で希望の部署に動ける可能性があるので継続的に対応すべき問題である。

1. 配属のメカニズム(会社側から見た配属先の決定方法)

就活生からすると、自分が希望する部門・職種に配属されるかは大いに気になるところであうが、その前に、企業がどのように配属先を決定するのかについて知っておいた方が良いだろう。

企業の場合には、管理会計というものがあるので、部署毎に定員数(Headcount)が決まっている。従って、各部署の定員に空きがある範囲内で新入社員が配属されることになる。従って、不採算部門については定員数は削減されがちなので、こういう部門を志望したところで、すぐに戦力にはならない新人が配属される可能性は低い。

反対に、成長部門、戦略部門については新入社員も配属される可能性はある。

配属の決め方としては、各部門の部門長、管理職が人事部に人数とスペック等に関する条件(或いは固有名詞)を出した上で交渉し、会社全体で調整した上で新入社員の振り分けがなされるのである。

したがって、残酷な話かも知れないが、既にこの段階で、人気がある新入社員には各部署からの引きが殺到する場合もあるし、全く、お声が掛からないような新入社員もいるわけである。

入社式の社長或いは人事部長の訓示において、「横一線でスタートをすることになり…」という話がでることがあるが、実はそれはウソで入社式の段階で既に横一線では無いのである。

2. 配属対応法

以上のように、入社前から既に競争は始まっているわけなので、希望の部署に配属されたいと思うのであれば、スペック上げをしたり、上手くアピールをする必要があるのだ。

①希望部署の業務内容を具体的に調べてみる

各部署の業務内容は、業界や企業によって当然異なる。したがって、当該企業においてその部署の役割がどのようになっているかとか、具体的な業務内容を公開情報を通じて学習したり、OB訪問等を通じて十分に情報収集しておく必要がある。

具体的にどんな仕事をするのかよくわからないにも関わらず、憧れや響きだけで、「広報に行きたい」とか「経営企画に行きたい」と言っても、評価されなくて当然である。

②当該業務に必要な準備をする

例えば金融業界の場合だと、20世紀の時代から、「M&Aやりたい」「ファンドマネージャーになりたい」「プロジェクトファイナンスをやりたい」と何も知らないままで主張する学生は多い。

しかし、M&Aをやりたいと希望しても、ヤフーとZOZOの案件についてコメントできなかったり、財務諸表もまともに読めない状態では、真剣な希望とは評価されない。

また、ファンドマネージャーになりたいと言っても、日経平均株価の予想レンジと理由について自分の考えを何も語れない様では説得力が無い。

従って、本当に配属されたい部署があるのであれば、それに向けた学習とか知識の習得を常日頃から行い、結果を出した上で、人事にアピールしておくことが必要である。

③希望を伝える

知識や能力に加え、どの程度強くその部署に行きたいのかという点も、配属先の決定にあたって人事が知りたいところである。

同じようなポテンシャルであれば、よりその部署を強く希望する者を配属させたいものである。将来的に行ければいいという程度の希望なのか、その部署に配属されないと辞めますという強い希望なのか、この点も人事との内定後のインタビュー等において明確に伝えることが重要である。

3. 自分の配属に関する希望が叶わなかった場合の対応法

上記の3点、要するに、希望の配属先に対する勉強や準備を十分やった上で、配属に対する希望を明確に伝えた上で、それでも、希望の部署に配属されなかった場合には、その理由を聞いてみることが重要である。

その部署の定員の問題で入れなかったのか、新入社員は採りたくないのか、知識・能力が評価されなかったのか、明確には答えてくれないかも知れないが、そのあたりのニュアンスを掴んでおきたい。

何故なら、今の会社で将来希望の部署に配属される可能性がどの程度あるかによって、第二新卒のカードを切るかどうかが違って来るからだ。

20世紀においては、入社後数年以内に辞めてしまう者に対する評価は高くなく、そういった第二新卒市場は大きくなかった。しかし、今では新入社員の3割が3年以内に辞めてしまう時代であり、また、少子高齢化の進展によって若い社員に対する需要は強い。

また、第二新卒というのは職務経験が無くても応募が可能であるので、本来やりたい仕事に就くことができる重要な機会である。

従って、今の会社のままでは希望の仕事に就けないと思えば、相応の準備をした上で、第二新卒カードを使って、本来やりたい仕事を狙うべきである。

このため、希望の部署に配属されなかった理由・経緯を掴んでおくことが重要なのである。

最後に ~メガバンクや証券会社のリテール営業から転職で転身するのは大変~

20世紀と比べると、新卒採用の方法は大いに変化したし、第二新卒市場というものが今では存在している。

しかし、終身雇用・年功序列の枠組みの中、新卒一括採用・部門/職種指定は無しという仕組みは基本的に変わっていない。終身雇用・年功序列が崩れると、同じ会社であっても職種や部門によって各社員の市場価値は大きく異なってくる。

このため、長期的なキャリアプランを持った上で、希望の仕事に就けない場合には、退職カードをちらつかして異動させる、或いは、第二新卒枠を利用して転職するという方法が重要になって来るのではないだろうか?

というのは、一旦、メガバンクや証券会社でリテール営業に配属されると、転職によってIBDとかアセマネのような専門職に転身するのは非常に難しいからである。何故なら、中途採用においては、学歴・資格といったスペックよりも、職務経験を重視するからである。もちろん、未経験でも第二新卒であれば転身可能な場合もあるが、それは景況感に左右されるし、何といっても競争率が高く狭き門である。このため、出来れば社内異動によって関連部署への配属を実現することが理想なのである。

 

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