序. 今年読んだ本の中で1番参考になった!
西野亮廣、Roland、ラファエル、オリラジ中田敦彦、与沢翼、ホリエモン、ひろあきと、有名人系のビジネス書が書店の店頭に並んでいる。
この種の書籍を有難がって購入するのは、いかにも成功できない人というイメージを持たれそうだと意識しつつ、GACKTの初のビジネス書である「GACKTの勝ち方」を購入した。
https://www.amazon.co.jp/GACKT%E3%81%AE%E5%8B%9D%E3%81%A1%E6%96%B9-GACKT/dp/4861133777
数ある有名人系のビジネス書の中から本書を選んだ理由は以下の通り。
・GACKTの年間生活費は2億円位だから年に5億位稼ぐ必要があると、具体的に年収水準に言及。
・稼いだ分だけ、しっかり消費をしていてケチ臭くない(車がランボルギーニ・アベンタドールというのも良い。)
・写真が多く、文章とかも読みやすい。
・他の有名人と比べて、本人がカッコ良い。
・有名人の中では、知名度・過去の実績はそれほどでも無い様に見えるので、どうやって稼げているのかに興味があった。
その結果、有名人のビジネス書だからと言って侮ることなかれ。今年読んだ本の中で最も面白かったし、参考になった。そのポイントについて、以下自分の考えをまとめてみた。
1. GACKTのマーケティング戦略
①まずはファンを作る
GACKTが上京してミュージシャンになろうとしたところで、メジャーデビューなどそんな簡単にできるわけがない。
そこで、GACKTが採った戦略というのが、「先ずは50人のサポーターを作ること」。
具体的には、GACKTは池袋で若い女性を、片っ端からナンパし、自分の音楽のサポーターになってくれる人を探したのだ。来る日も来る日もナンパをし、結局2000人に声掛けし、ようやく50人のサポーターを集めることができたのだ。
サポーターに対しては、「出来る範囲で音楽をサポートして欲しい」という要請を大事にしたもの。
ミュージシャンとして成功するためには、多数のファンをどうやって獲得するかということで、一気に大量のファンを獲得する手段にばかり拘泥しがちだ。
しかし、GACKTの場合、サポーターは50人からの積み上げという発想で、多くのファンを作るために、ファンの「量」よりも「質」に拘ったわけだ。
これは、個人がブログやSNSのビジネスを成功させるために非常に参考になる。
ブログでPVを稼ぐためには、SEOを意識し、如何にBig Wordで検索上位を獲れるかばかりを考えている。また、Twitterでもフォロワーを多く獲得するために、どうすればバズらせて少ないツイート数で楽して大量にフォロワーを増やすことばかり考えがちである。
こういった考えをする人は多いのだろうが、そんなに簡単に行くはずが無い。そして、成功した他人のケースを見て、何故自分は上手く行かないのかと悩んでモチベーションは下がって行くだけだ。
しかし、GACKTのように少数のコアなファンからじっくり積み上げて行けば良いという考えた方に立てば気楽だ。たった1人でも、絶対に自分のコンテンツを有用だと感じてくれる得意なテーマを見つけて行けば、PVにせよフォロワーも着実に積み上がっていくはずだし、そうやっていくうちにBig Wordを取れたり、バズったりするのである。
ブログにおいては、Big Wordを狙うよりも、Small Word、しかも、2語ではなく、3語・4語検索での上位を狙うべきだというSEO戦略の基本に立つ方が結局早道であることを再認識できた。
Twitterにおいても、他人のバズったツイートを真似るよりも、自分が最も得意な分野を地道に攻めるべきなのだ。
②コピーじゃない(尖ったコンテンツを意識する)
GACKTはソロになる前に、MALICE MIZERというロックバンドをやっていて、これがソロでも成功するきっかけとなった。
GACKTは、欧米と同じことをやっていても勝てる訳が無いと考えて、ビジュアルロックという、ロックでもパンクでも無い、固有のジャンルを選んだのだという。確かに、MALICE MIZERというのは、中世の貴族の様な衣装を着て、ロックとクラシックの中間のような音楽でそれまでに見かけないものである。
個人がブログ・SNSで成功するためには、成功者と同じ土俵で戦っても勝ち目はない。各個人が個性を活かして、尖ったコンテンツで独自の市場を開拓していくことが有用だ。
そこそこブログやSNSでPVとかフォロワーが増えて行くと、面を一気に取りに行くことを企図して、最大公約数的な無難なテーマを攻めがちになるが、それだと結局勝てなくなる。あくまでも、自分にしか出来ないような個性的で尖ったテーマを攻め続けることが、個人が勝てる方法だろう。
③テレビじゃ勝てない(メディア戦略)
GACKTというと、お正月の格付け番組が知られているが、それ以外の番組でGACKTを見かけるだろうか?
答えは、否だ。何故なら、GACKTはテレビじゃ勝てないと考え、テレビは年間に5本までと考えているようだ。
テレビに出るか出れないかは、事務所、大手代理店、テレビ局のパワーゲームで、そこに巻き込まれても勝てないという。
また、毎日テレビを付けたらいつでも見られるというのであれば、稀少性は薄れ、コンテンツとしての価値は薄れて行くのだという。
他方、全くテレビに出ないと、消えてしまったと思われて良くない。そのため、年間5本だけテレビにでるのだという。これがGACKTのメディア戦略である。
この考え方は、ブログやSNSで儲けようと考える個人にも当てはまる。
炎上商法が典型的であるが、メディアへの露出ばかりを考えていたら、一時的には知名度が上がり、Impressionを増やすことができても長続きしない。
控え目な露出で、コツコツとファンを作って行く方が長期的・継続的に勝つことができる。オンラインサロンなんかも同様で、仮想通貨で有名なKAZMAXも、他にも理由はあるが遣り過ぎでコケてしまった感はある。
イケハヤさんの「脱社畜サロン」も、非常にいい感じで伸びて行ったのに、急拡大を焦り過ぎたというのも失敗の一員では無いだろうか?
反対に、ベンチャー企業、VCに特化した、ベンチャー界隈では知名度が高いThe Start Upの梅木さんは堅実であり、だからこそ、長期間成功している。
http://thestartup.jp/
梅木さんの場合は、主催する梅木サロンは会員数500人位を上限として、むやみに会員数を増やさず、500人規模を維持している。会員数を増やそうと思えばできるのだろうが、欲張らずに会員の質を維持することに注力していることが成功要因の1つであろう。
メディア戦略においても、ただ目立つことを目指すのではなく、ファンの質と安定的な人数の維持を重視したいところである。
2. 精神論:「できないは無い」
これは精神論であるが、カッコ良さ、スマートさが売りの様にも見えるGACKTの座右の銘が、「できないは無い」というのが興味深い。
「天才には努力は要らない」とでも言いそうな雰囲気なのだが、その真逆の事を説いているのが却って新鮮な感じもする。
これは、無理目な目標にただ頑張れということではない。
「できないは無い」というのは、すぐに「できない」と諦めるのではなく、「できるにはどうすれば良いかを考えよ」ということである。
例えば、ファンを1万人作るという目標があれば、どういった手段を採れば50人ずつファンを積み上げていくことによって、確実に早く1万人になるのかを具体的に計画するということである。精神論の様で、極めて現実的な考え方なのである。
また、無理目な目標を作って、それを達成することができれば、自信が付き、それが習慣化してどんどん自信につながっていくという狙いがある。
ワンルームマンションのテレアポ営業の、営業課長がこういうことを言っても、モチベーションは上がらないが、もっともこういう精神論からは遠い位置にあるGACKTが言うと、妙に説得力がある。
3. 人脈、仲間、信頼関係
①1億円を援助してもらったエピソード
GACKTは人脈、仲間、信頼関係を非常に重視する。
本書で紹介されたエピソードとして、GACKTが友人と事業をしていた時に、友人が試みたビジネスが失敗して数億円の負債を抱えヤバイ状況に陥ったという話がある。その時には、別の友人が黙って1億円を使ってくれと差し出したのだという。
その経緯としては、その友人はIPOの際に、さんざんGACKTにPRして助けてもらったことを心から恩義に感じており、今回はどうしてもGACKTをサポートしたいのだという。
その結果、GACKTはそのお金を受け取り、苦境を脱することができ、その友人との間には強い信頼関係ができたという。
闇金ウシジマくんが人気な理由も、「お金、お金」のように見えて、実はそれよりも上位に信頼性・人との絆があるということが描かれているからである。
それは、サラリーマンの世界と一緒で、成功するためには、人望が無いと行けないという話である。
②人脈作り:同じ世界にいる人と接しないと、同じ世界に上がれない
GACKTは若い時から、ファーストクラス(無ければビジネスクラス)にしか乗らないという。何故ならば、そういう場は人脈を拡げる格好の場だからだ。
自分が上の世界を目指しているのであれば、業種・業態は違えど、同じレベルの人と接していないとその世界には行けないのだという。
意識的に、上の世界にいる人と接して、自分磨きをしていくかが必要だということだ。
4. ビジネス:他業種展開
GACKTは当初より、音楽やるにはお金がいるということを意識して、音楽以外のビジネスに熱心であった。最初は不動産競売ビジネスで成功し、他には、日本の中古携帯端末の貿易ビジネス、デザイナーに対する出資とジュエリー/アクセサリー販売から最近では仮想通貨ビジネス(ICO)まで、とにかく幅広に手を出すという。
GACKTのポリシーは、100%儲かる方法なんてビジネスに無いので、とにかくやってみてPDCA回して勝ちに行くというものである。当然、過去には大失敗もあり、スキー場関連ビジネスで大損し、損切りしたこともあったという。
しかし、業種・業態は違っても、根っこは共通点があり、過去の多様なビジネス経験が成功要因の1つになっているようだ。
その中で気になったのが、不動産、ベンチャー出資、仮想通貨と投資関係は広く手掛けており、個人も金融・投資・テクノロジー関係のリテラシーを高めておくことはビジネスで勝つための必要条件であると感じた。投資というと、「FX」しか思いつかない様ではダメなのである。
最後に:感じ方は人それぞれ
強烈な個性を持つGACKTの本なので、根強いファンが本書を買うからか、当然アマゾンの評価は高い。7割が最高点の☆5つである。
むしろ、評価の高さよりも面白いと思ったのは、感じ方が人それぞれということである。
論旨は極めて明確なのであるが、それをどのように受け止めるかは読者によってことなるが、逆にそれは、本書の汎用性の高さの証左ではないだろうか?
自分なりに、GACKT流の勝ち方のキーワードをまとめて見ると、こんな感じだろうか?
・徹底した自分磨きと、尖った個性、オリジナリティの追求
・少数からのファン作り。ファンは「量」ではなく「質」
・たった1人のファンドでも、そのファンを満足させる質の追求
・自分の稀少性を損なわないメディア戦略
・ストイックな目標の追求と結果への拘り
・人脈、仲間の重要性と信頼されることの重要性
・多様なビジネス展開。ただ考えるよりも、行動せよ。
GACKTは現在、マレーシアが本拠であり、続編も出るようなので、大変楽しみである。