【書評】「0円起業」有薗隼人著。サラリーマンが副業で稼ぐのは不可能なのか?

1. 本書と著者の概要について

本書の著者である有薗氏は、青山学院大学文学部を卒業し、GMOインターネットに就職し、広告営業の営業マンとして活躍。2011年に株式会社GEARを設立した。

有薗氏はGEAR設立後の2013年頃からアフィリエイトサイトの作成を始め、広告収入やサイト売却によって収益を上げてきた。現在は、スタッフと外注メンバーを含め、20名位のチームで、サイト作成サービス、サイト売買仲介業務、婚活アプリや結婚相談所の運営等の様々な業務を手掛けている。

特に強みは、個人でも運営できる小規模なサイト周りとその売買業務関係であろう。

「0円起業」というタイトルの通り、著者は、サラリーマンを辞めて起業で勝負をすることは推奨していない。手堅くコストを掛けずに副業として始め、それを育てていくのが賢明というスタンスであり、現実的な考え方である。

副業の緩和という流れの中、サラリーマンが興味を持ちやすい内容である。

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2. 0円起業の基本軸

①起業のテーマは、「好き」「得意」「儲かる」の3つの重なるところ

サラリーマンが副業で起業をやるとしても、何をやればいいのか皆目見当がつかない人々は多いであろう。

この点、本書においては、「好き」「得意」「儲かる」の3つが重なるところが、狙い目の起業分野ということである。

もっとも、本書においてはどういった分野が「儲かる」ビジネスかについての具体的な紹介が無い。

誰でも、好きなことや得意なことは見つけやすいが、ネットビジネス等をやったことが無いサラリーマンにとっては、そこが一番知りたいところである。

このあたりの情報を、十分に紹介してもらえていないところは残念な点である。

②0円起業を進める軸…継続・転換・売却

本書で紹介している、0円起業の進め方についてであるが、まずは「継続」して事業を育てていくことだ。

具体的には、著者は「飲み会」をテーマにしてアフィリエイトサイトを作り、育てていったエピソードが取り上げられている。

0円起業の典型はアフィリエイトサイトの設定・運営であるが、著者は「飲み会」のアフィリエイトサイトを育てていって、月に5~10万円位まで稼げるサイトにもっていくことができた。

そして、この段階で考えなければならないことは、このアフィリエイトサイトを継続して更に稼げるサイトにすることができるかどうかである。

そのアフィリエイトサイトを月に50~100万円位稼げるサイトに育てる自信があれば、そのまま継続するべきということになる。

しかし、1年位頑張ると、月に5万~10万位は稼げるサイトになっても、そこから先は急激にハードルが高くなる。競争が厳しくなるし、テーマ自体が陳腐化する可能性もあるからだ。

そういった場合には、「転換」することを本書では推奨している。
例えば、「化粧品」とか「美容」といった他のジャンルのアフィリエイトサイトを起ち上げるのである。

要するに、月収50万円のサイトを1本作るのと、10万円のサイトを5本持つのとでは、同じ売り上げになるし、後者の方がリスク分散されているので堅実なのだという。

そして、その次の段階が「売却」である。
2019年12月現在、Googleアプデの影響で、サイトの売却が、従来は売上の24か月分だったところが、今ではその半額位に下がってしまったということである。

しかし、サイトの売却市場は存在し、「サイト 売買」で検索を掛けると、「サイト売買Z」、「サイトレード」、「ビズリーチ・サクシード」といったサイトが検索できる。

月に5~10万円を稼げるサイトの場合には、100万円以上で売却できる可能性があるわけなのである。

また、自分で作ったサイトを売却するだけでなく、他人が作ったサイトを購入して、それをブラシアップした上で転売して稼ぐという方策もある。著者の場合には、150万円でサイトを購入して、わずか2日後に250万円で転売できたケースもあるという。

複数のアフィリエイトサイトを起ち上げ、運営していくと、そのあたりのノウハウも蓄積されて行き、サイトの売買によっても収益化できるというわけだ。

これはサラリーマンにとっては魅力的な話だ。ネットビジネスが本業の場合には、月収5~10万円のサイト運営では話にならないが、副業であれば問題は無いし、慣れてきてノウハウが蓄積され、複数のサイトを運営できるようになるとそれなりに魅力のある副業になるはずだ。そして、サイトを売却できれば、まとまったボーナスが入って来るのは十分に魅力的だ。

この、小さな収益化サイトを育て、慣れると複数数のサイトを運営し、そして売買で稼いでいくという一連の流れが、サラリーマンが副業としてネットビジネスで稼げる堅い方法では無いだろうか?

3. その他の0円起業の事例

なお、本書ではアフィリエイト以外にも、0円起業のパターンを紹介している。

1つは、著者が「電通方式」と呼ぶ、外部委託を使った儲け方だ。
これは、電通がコンペで仕事を獲得した場合において、実際に作業をするのは制作会社で、電通は外部委託先に受注するだけで収益化できることをヒントにしたものである。

著者のケースでは、web製作の仕事を受注して、それを相対的に低い価格で外注することによって鞘を抜くという方法だ。この方式だと、自分或いは自社のリソースは大きくなくても外部委託先を見つけるだけで収益を拡大できるというのがポイントである。

もっとも、良好な外部委託先を見つけるのは容易では無いし、サラリーマンが副業として手掛けるには、荷が重いかも知れない。

2つ目として紹介しているのは、地代0ビジネスである。
具体的には、飲食店を間借りして、一定の時間帯だけ運営している汁無し担々麺の専門店「担担担」を紹介している。

これは厳密には、地代は0では無いのだろうが、賃貸に伴う保証金等の初期費用や施設・器具代が掛からない、低コストの飲食業ということである。

もっとも、飲食店は誰にでもできるビジネスでは無いし、儲けることが難しい業態なので、サラリーマンの副業としては厳しいと思われる。

3つ目は、仕入れが0円のビジネスとして「村田商會」が紹介されている。
これは、SNSで喫茶店関係の情報を発信していて、業界ではそれなりに知られた存在になっていた村田氏が、喫茶店が古い家具を捨ててしてしまうことに着眼し、そういった捨てられてしまう家具をタダ同然で仕入れ、アンティーク家具として販売するというビジネスである。

これもサラリーマンの副業としては、参考にはならない。

4. アフィリエイトで稼ぐことができなくなったことの問題点

WELQ問題を発端に、アフィリエイトサイトや個人運営のサイトのGoogleでの検索上位表示が急速に難しくなったと言われている。

Googleは毎年数回、Googleコアアルゴリズム・アップデイト(Googleアプデ)を実施しているが、近年、この傾向は顕著であり、大手の企業のサイトが優先され、個人の運営サイトで検索上位を取るのが難しくなっている。

このため、アフィリエイトサイトでは従来の様に稼ぐことが難しくなってしまったのだ。
著者もアフィリエイトサイトの運営で成功を収めて来たのであるが、Twitter、YouTube、TikTokなどの方に転換を図るなど、試行錯誤している段階である。

本来であれば、本書でもこのアフィリエイトのところを厚く書くはずだったのだが、近年のアフィリエイトビジネスの難化によって大幅に削ることになってしまったようだ。

アフィリエイト以外にも、ネットで稼ぐ方法としては、noteによるコンテンツ課金とかオンラインサロン運営と言ったものがあるが、期待できる収益の額、継続可能性、手間などを考えると、十分な代替手段とは言えない状況にある。

最後に

個人がネットで稼ぐ場合において、最も有用であったアフィリエイトが機能しにくくなったのは辛い。

しかし、本書の様にサイトを作って育て、その売買で収益化するという方法は有用であろうから、webメディア製作から始め、Twitter、YouTube等に拡げてチャンスを待つ他ないのであろう。

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