転職力に関して、事業会社からのデロイトの評価は高くないのか?

1. ハイスぺ就活生の間で特に人気が高いコンサル業界

今、東大、早慶等の就活生の間では、コンサル業界の人気が非常に高い。
例えば、ONE CAREERが実施している東大・京大就活ランキングによると、
デロイトトーマツコンサルティング(以下「デロイト」)は8位にランクされている。
https://www.onecareer.jp/articles/1809

2. ハイスぺ就活生からコンサル業界の人気が高い理由

コンサル業界が、ハイスぺ就活生の間で人気が高い理由としては、何といっても、その転職能力の高さに対する期待があるだろう。コンサルというのは全業種で必要とされる普遍性があるし、コンサルスキルというのは、コンサル企業で働かないと習得できないものと考えられるからである。

このため、就活段階においては特にやりたい仕事が見つかっていなくても、とりあえずコンサル業界に行っておけば、数年後に、やりたい仕事に就くことができるという発想である。

また、給与水準も比較的高い。初任給が550万円、2年以内にコンサルタントになると650万円と若い時の給与水準が特徴である。

その後は、シニアコンサルタントで年収800万円、管理職であるマネージャーに就任すると年収1200~1300万円程度になる。大手金融機関とか商社・マスコミと比べると、特に高いわけではないが、今の学生は初期の年収水準に拘りがちなので、その点は魅力なのであろう。

3. しかし、デロイトの転職力は期待するほどは高くないという話も?

高い転職力が期待されるはずのデロイトであるが、就活・転職がテーマの人気YouTube番組の「年収チャンネル」の元デロイト社員の話によると、事業会社からのデロイトの評価は必ずしも高くはないということであった。
https://www.youtube.com/watch?v=RXjfsT77YfA

その理由が衝撃的で、以下の2点である。

・コンサルなので専門性が高くない
・MBBに負けてしまう

MBBに勝てないのは仕方が無いにしても、「コンサルなので専門性が高くない」というのは驚きである。期待としては、その逆で、「コンサルだから専門性が高い」という評価のはずである。

もちろん、それは求人側の事業会社の状況や、デロイトの社員によっても転職力は変わってくるはずなので、この方の意見を一般化する必要は無いかも知れない。

しかし、転職力については思っていたほども評価されない場合があるというリスクも念頭に置いておいた方がいいだろう。

4. デロイトでの業務経験が必ずしも高評価につながらない理由

デロイトに限らず、アクセンチュア、KPMGコンサルティング、PwCコンサルティング、アビームコンサルティングといった総合系ファーム全体にあてはまるものだと思われるが、これらの企業は近年急速に採用者数を拡げている。

採用拡大の対象は、新卒及び中途の両方である。
そもそも、優秀な人材の比率というのは大体決まっているので、大量に採用するとそのクオリティは低下しがちである。

また、デロイトを含む総合系ファームに就職する者は、終身雇用ではなく、転職を前提としている者が多いだろう。そうなると、近年の大量採用で若手のコンサルの供給が急増し、その市場価値が低下するということは容易に想像できる。

また、採用側である事業会社からしても、コンサルの稀少性が低下したことに加え、その業務内容やスキルが戦略コンサルというよりはむしろSIerよりであるということの認識が強まっていったのかも知れない。

とはいえ、アクセンチュアを始めとする総合系ファームはデジタルトランスフォーメーションの波に乗って、ビジネスはまだまだ好調の様なので、この傾向は急速には変化しないかも知れない。

そうなると、今後、デロイト等の総合系ファームに就職・転職をする者は、転職価値の低下リスクを認識しておいた方が賢明ではないだろうか?

5 今後の就活における考え方

そもそも、将来の方向性が不明確なままで、皆が就職するし潰しが利くからとりあえずコンサルという発想自体が戦略的ではない。

大量採用が継続すると、その社員の市場価値は低下していくことはある程度予想できるはずだ。

競争力を有する高度の専門性の習得という点については、事業会社を選択した方が良い場合もある。今後の業界の成長性や企業の研修インフラ等を考えると、配属先を交渉して就職することも可能な楽天、ヤフー、メルカリあたりは悪くないと思う。

しかし、就活生はとにかく目先の年収水準を気にするので、このあたりは勧めたところで、なかなか納得してもらえないのだろう。とはいえ、もう少し長い目でキャリア形成を考えた方が、結局高収入になれる可能性は高いと思えるのだが…。

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