1. 外銀と比較すると地味目な外資系運用会社であるが魅力も多い
就活生にとって最難関企業は、外銀と呼ばれる外資系の証券会社ではないだろうか?
確かに、初年度から年収は1000万円を超え、3年後にアソシエイトに昇格すると年収は2000万円に軽く到達する。そして、30歳でVPに到達すれば年収5000万円も可能で、更にMDに昇格できると年収1億円も夢ではない。
外銀の場合、新卒採用がメインのようで、トップ就活生の間でも情報はそれなりに出回っており、認知度も高いと考えられる。
他方、外資系運用会社においては、ほとんどが新卒採用を行わず、中途採用がメインであるので学生の間での認知度はかなり低いと思われる。
しかし、外資系運用会社には、外銀と比べて以下の様なメリットがある。
(1)ワークライフ・バランスに優れている
(2)外資系なのでリストラとかは避けられないが、相対的に安定している
(3)日本に進出している外資系企業数が多く、転職対象先が多い
(4)今でも新規に日本に進出してくる外資系運用会社もある
(5)平均年齢が高く、定年とまでは言わないが、50代半ば位まで勤めることは十分可能
そして、年収水準も外銀のような年収1億越えレベルは期待し難いが、フロント職であれば、年収3000~5000万円であれば達成可能である。
2. トップ就活生が転職を視野に入れた国内系運用会社への就職を躊躇する理由
以上のように、外資系運用会社におけるキャリアも、十分魅力があると考えられるのだが、トップ就活生は将来の外資系への転職を視野に入れて国内系運用会社に就職するのは抵抗感が強いようである。
その理由としては、以下のものが挙げられる。
①就職偏差値、年収水準の点から国内系運用会社には行きたくない
トップ就活生の場合は当然プライドも高く、周りの目も気にするものである。
国内系運用会社は、銀行、証券会社、保険会社の子会社であることが大半であり、就職偏差値的なものは決して高くは無い。
また、トップ就活生は初任給や若い時の年収水準を大変重視する傾向にあり、金融機関の子会社であることが多い運用会社の場合には、若い時の給与水準はそれ程高い訳ではない。
②転職するまでに年数を要する
就職偏差値とか、若い時の年収水準が低い点については、外資系運用会社に転職すれば全て解決する。
しかし、外資系運用会社の場合には、新卒採用を行わないのと、幹部社員が外銀の様に40代半ばでリタリアする必要が無いので、平均年齢が高い。
そして、外資系企業といっても、運用会社の場合は特に日本人比率が高いので、年功序列のカルチャーが存在している。
このため、20代で転職してもパシリにされるおそれがあり、あまり若い時に外資系に行くには得策では無いという考え方がある。
VPクラスで転職を図ろうとすると、年齢的に30歳位が目途になるので、そんなに長い間、待ちきれないという考えが今の若い人たちの間ではあるようだ。
③国内系の運用会社のぬるま湯的な雰囲気に浸るのが怖い
今の学生は、情報収集に長けているようで、ネットやリアルなソースから非常に多くの情報を仕入れている。
このため、国内系の運用会社は雰囲気がゆったりしすぎていて、長くいればいるほどその雰囲気に慣れてしまい、外資系に転職をしようという意欲を失ってしまうのではないかということが不安になるようだ。
まあ、それならそれで、国内系運用会社に最後まで居てもいいのではないかと思うが、その気持ちはわからないでもない。
3. 30代で年収4000万円~5000万円を達成した若手のキャリアプラン
今までは、外資系運用会社に転職するタイミングは、例えば、営業職の場合だと30歳でVPで入社できるタイミングがベストかなと考えていたが、最近、若くして高年収を達成できた若手の事例を複数聞いて、特急コースもあるのだと認識させられた。
外資系運用会社でもフロント職であれば、年収4000~5000万円の可能性はあるのだが、年齢的には40代のイメージであった。
しかし、30代でそのレンジの年収を実現できれば、外銀と比較してもかなり魅力的なキャリアなのではないかと思われる。
30代で高年収を実現できた人達のキャリアプランは以下の様なイメージである。
①26歳位で外資系運用会社の1社目に転職。アソシエイトの転職で構わない。
先ずは、外資系運用会社に転職するタイミングを早くしようということである。
26歳位の時にアソシエイトで転職するというプランである。さすがに20代前半では下積みが長くなるので、26~27歳位がベストではないだろうか?
さすがに、これぐらいのキャリアだとVPでの採用はまず不可能であろうから、アソシエイトでの入社で問題無いだろう。
②30歳までにVPへの昇格を目指す
このキャリアでのカギは、VPに早く内部昇格することである。
VPへの内部昇格については、外銀の場合には、かなりハードルが高い。
他方、運用会社の場合には、フロント職の場合にはそのあたりの基準はかなり適当であったりする。投資銀行系ではなく、独立系の場合には営業職にはインフレ気味のタイトルを付与しているところもある。
そういったところでは、タイトルがアソシエイトからVPに上がったところで、基本給は変わらない場合も多いので、比較的昇格させやすいのだ。
従って、1社目の転職先については、VPへの昇格が緩い独立系、特に、比較的小規模なところが狙い目かも知れない。
③VPに昇格した後、次の外資系運用会社に転職する
一旦VPに昇格すると、転職もVPを前提とした転職となる。
そうすると、ベースは1500~2000万円が射程圏内となり、トータルでの年収は十分に2000万円を越えることとなる。
④その後、内部昇格或いは転職でSVP(Director)を目指す
この後は、本人の営業実績次第ということになるが、営業マンとして十分な実績を残すことができる実力が付くと、30代半ば位でVPより1ランク上の、DirectorとかSVPを狙うことができる。
そうなると、基本給であるベースは2000万円を越え、ベースと同額のボーナス(RSUを含む)をもらえると、4000万円を超えるということになる。
4. このキャリアプランの留意点
もちろん、このように順風満帆に行くとは限らないが、1社目の転職のタイミングを早くすれば、若い間に高年収を実現することも可能な訳である。
その際の留意点としては、十分に転職エージェントや業界の友人から情報を仕入れて、若い間にVPに昇格が可能な外資系運用会社を絞り込んでおくということだ。
ここが最初のカギであるので、きっちりとした情報収集をしたい。
次に、これは当然の前提であるが、外資系運用会社に転職を考えるのであれば、英語力はきっちりと対応をしておくということだ。
企業によっては、若手の場合、英語面接がなかったりするが、上に行こうと思えば英語ができないと大変厳しい。バイサイドの場合、英語力はイマイチの人も少なくないが、英語をじっくりと勉強できるチャンスは国内系運用会社にいる間なので、ここはベルリッツに通うなりして、頑張る他無い。
そして、1社目の外資系運用会社に移って以降の話であるが、営業の場合は、顧客のカバレッジを拡げておきたい。運用会社の営業は、大きくリテール(個人向けの投資信託が対象)と機関投資家営業に大別される。
そして、機関投資家営業は、金融法人(金法)セールスと年金セールスに2分される。
従来は、リテールと機関投資家営業との間では結構壁があったのだが、成功した若手の共通点としては、両方のチャンネルを経験していることが指摘できる。
小規模な運用会社であれば、営業がこの両部門をカバーすることも可能である。
また、社内異動によって、両部門を経験するのでも構わない。
リテール部門の場合、投資信託がヒットすると、かなり収益が跳ねるので魅力がある。従って、若手のうちに守備範囲を拡げて、儲ける機会を拡げておきたい。
最後に
外資系の運用会社は十分魅力的であるが、情報が十分に浸透していないことと、活躍できる年齢が高めであることから、比較的目立たない業界になっているところがある。
しかし、これは穴場であるともいうことができ、上手いやり方をすれば若くして活躍し、高収入を早期に実現することも可能である。
外銀とか国内系証券IBDに新卒で入社するのはかなり難易度が高いので、こういったキャリアを視野に入れてもいいのではないだろうか。