外銀志望のハイスペック就活生にリクルートの併願も勧めるべきか考えてみた。

1. ますます気になる、業績好調のリクルート?

①時価総額ランキングの上位10社も目前?

外銀とか国内系証券会社の専門職コースというのは、就活における最難関業種/職種になっているのであるが、グローバル投資銀行とか、日本の証券会社の足元の業績を見てみると若干不安になる。

他方、外銀志望のハイスペック就活生からは見向きもされないであろうリクルートは業績、株価ともに好調である。

実は、半年以上前に、ハイスペック就活生はリクルートも見てみたらという記事を書いたのであるが、そこからますますリクルートは伸びている。

例えば、株価時価総額では2019年3月15日引値ベースでは5.3兆円で第17位だったのに対して、2022年3月1日引値ベースだと株価時価総額8.3兆円で第9位に浮上してきている。リクルートは株価時価総額のトップ10企業なのである。

リクルートがKPIとしている財務指標のEBITDAで見ても、2019/3期は2,930億円だったのが、2020/3期だと3250億円、2022/3期予想は2700-3350億円なっている(2022年3月2日現在)。

リクルートは、目新しさは特に無く、ハイスぺ就活生からは興味を持たれていないにも関わらず、じわじわと今でも成長を続け、日本を代表する企業になろうとしているのである。

<東大・京大の就活生のためのリクルート再考>
https://career21.jp/2019-03-25-181350

②ハイスペック就活生の行き場が不足している?

ハイスぺ就活生が行きたがる、外銀・外コン、或いは、国内系証券会社専門職、総合系コンサル、総合商社については、今後席数が減少しそうである。

外銀は欧州系が不振だし、国内系証券会社も収益が厳しい中、高給のIBDコースに対しては歓迎されないムードである。また、ここ数年はAI/デジタルトランスフォーメーションブームでかなりの事業拡大を継続してきた総合系コンサルも、新卒・中途共にそろそろ採用抑制傾向に転換するのではという話もある。総合商社については、例えば三菱商事の場合、4年前(2015年)は総合職170人程度だったのが、現在(2019年度)では120人強にまで減少している。

もちろん、景況感が改善すると、こういったものは急激に好転することもあるが、あまり楽観的に考えないとすれば、上記のようなハイスぺ就活生が好む企業の枠は拡がらない(むしろ減る)と考えた方が無難だろう。

そうなると、他の業種/職種を物色することになるのであるが、これがなかなか見つからない。そうした中、リクルートというのはバランス的に悪くは無いところではないかと考えられるのである。

2. リクルートの魅力とは何か?

リクルートの魅力については、少なくとも、以下の2点は指摘できるだろう。

①最強の起業家輩出企業であること

最もお金持ちになれる方法というと、起業でIPOを実現することだろう。
IPOまで行かなくとも、最近では、M&AでEXITするという選択肢が拡大しており、小規模な企業売却であっても数億円を手にすることは可能である。

この点、リクルートは圧倒的な起業家輩出企業である。
例えば、じげんの平尾氏、イトクロの山本氏、ジーニーの工藤氏、ジモティーの加藤氏、トレンダーズの経沢氏、マクロミルの杉本氏、リンクアンドモチベーションの小笹氏、セプテーニの七村氏、オールアバウトの江幡氏、などなどIPO組だけでも多数の経営者を輩出している。

非上場レベルでのEXITとなれば枚挙に暇はないだろう。
起業で一山当てようと考える場合には、最適な企業環境であると言えるのではないだろうか?

②ヒト関係のビジネスに強い

リクルートはヒト系のビジネスで始まり、その後数々の高収益のメディア事業で大きくなっていったのだが、今でも人材領域ビジネスのダントツのトップ企業である。

そして、ヒト関係のビジネスについては、Indeedなど国内だけでなく海外にも積極進出をしているし、また、Glassdoorという米国を代表するHRテック企業を約1300億円で買収するなど、新しいヒト系のビジネスにも極めて熱心である。

ヒト系の仕事と言うのは、伝統的な大企業から、小規模なスタートアップ企業でも重要なものであり、将来的にも、AIによる代替化が進むが故に、ますますヒトの企業にとっての重要性は高まると言えるだろう。

リクルートというのはヒト系のビジネスでネームヴァリューはあるし、HRテックのような新しい仕事や、Indeedのようにグローバルにヒト系の仕事を展開している。このため、リクルートでヒト系の仕事に従事すると、外資系、大企業、ベンチャー系、起業とあらゆる場面で使える転職スキル等を習得することができる。

3. ハイスペック就活生がリクルートに入社した場合に何ができるか?

ハイスペック就活生は選択の余地が広く、リクルートに行くのであれば、終身雇用を目指すのではなく、将来の転職や起業によるアップサイドを求めたいところであろう。

そういった場合、以下のような部門でスキルを磨いて、将来の転職や独立起業に備えるのが良いのではないか。

①メディア&ソリューション事業で高い収益の秘訣を探る

ヒトで始まったリクルートであるが、利益の約6割はsuumo、ゼクシィ、じゃらん、HOT PEPPERというメディア&ソリューション事業が生み出している。

特に、20%を優に超える収益力(EBITDAマージン)の高さが強みである。
メディア事業というのは、ベンチャー企業から大企業までに需要がある業務であるし、独立・起業する場合においても、メディア事業に強いと極めて有利である。

ベンチャー企業に行った方が実力が付くとか、成長が早いという意見もあるが、ベンチャー企業もピンキリであり、大して稼げない(収益性が低い)メディア事業の会社に行ったところで、総務・雑用的な業務はできるようになるかも知れないが、本質的なビジネススキルが磨かれる保証は無い。その点、リクルートでメディア&ソリューション事業で頑張れば競争力のあるスキルの習得も可能になるのではないだろうか?

②HRテクノロジー業務で最先端のノウハウを掴む

アメリカでは既に注目されているHRテクノロジー(HRテック)ビジネスであるが、日本ではまだまだこれからである。将来的にヒトの重要性はますます高まるであろうから、最先端のHRテックに精通している人材は、活躍の場を拡げることができるだろう。

リクルートは資金力もあるし、経営戦略的にも、HRテックの領域にはバシバシ投資をすると言っているので、そういった事業に参画したいところである。

将来的なキャリアとしては、外資系企業の人事部門とか、国内系事業会社(特にオーナー系)の幹部候補、ベンチャー企業のCHROへの転職といった選択肢ができる。また、ヒト系のコンサルティングファームというのも悪くないだろう。

もちろん、自ら起業をするという方法もある。

いずれにしても、もともとヒト系事業に定評があるリクルートで、しかも、最新のHRテック事業に従事できれば、将来の転職価値を高めることには繋がるはずだ。

③ハイスぺ就活生には特にお勧めという訳ではないが、コーポレートの仕事もある

リクルートは巨大なヒトとメディアの企業になっており、グローバル化やM&Aを通じた事業拡大に熱心である。

従って、コーポレート部門でもそれなりに面白い仕事はあるだろう。
例えば、以下の様な、コーポレートM&Aのポジションなんかも外銀疲れの人にはいいかも知れないが、事業会社の経営企画とか事業開発に一旦行ってしまうと、そこから証券会社のIBDへの復帰は極めて難しくなる。このため、アップサイドに拘るambitiousなハイスぺ就活生にはお勧めできない。

<外銀疲れの人にはリクルートのコーポレートM&Aのポジションはどうか?>
https://career21.jp/2019-01-18-065024

もっとも、結婚等のライフイベントを機に、むやみに高収入を目指すのではなくそれなりの収入でワークライフバランス重視の生き方を選択したいという場合もあるだろうから、メガバンクと同程度(場合によってそれ以下)の年収水準で良ければ、転職とか独立起業を目指すのではなく、長くリクルートで働き続けるという選択肢も取り得るだろう。

最後に

リクルートという企業は、就活生のイメージ以上に良い会社と言えるだろう。
もちろん、会社が良いということと、そこの会社で働くことがキャリア形成上良いと言えるかというのは別問題である。

外銀、国内系証券会社IBDから内定がもらえず、商社になったという場合には、商社よりもリクルートをハイスぺ就活生に勧めるわけではない。こういったケースだと、とりあえず、商社に行くことが手堅い選択だからである。

しかし、商社も落ちてしまった場合には、就職先としてリクルートを真剣に検討する価値はあるだろう。

メガバンクとか総合系コンサルと比較すると、リクルートに行く方がキャリア形成上望ましい場合はあるだろう。

このあたりは、就活生個々の価値観や適性によって決まるのであろう。

いずれにせよ、リクルートという会社自体は凄い会社であるので、企業研究&企業訪問をする価値は十分にあるだろう。ハイスぺ就活生だからこそ、リクルートは、頭の片隅にはおいておきたい優良企業である。

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