1. 50代サラリーマンの雇用問題の難しさ
2019.10.14号の日経ビジネスの特集記事は、「新50代問題 もうリストラでは解決できない」であった。
過去には3度ほど、景気悪化局面であり、早期退職という場当たり的な対応でも、その後の景気回復によって何とかなった。しかし、今後はバブル世代、団塊ジュニア世代という人口ピラミッドによる恒常的な50代比率の高まりや、AI/ITの進展に伴うスキルを欠く労働者の不要化という構造的な問題になるため、抜本的な対応策が求められるという。
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/mokuji/00040/
もっとも、上記の日経ビジネスは、50代の雇用問題について企業側から考察したものである。被用者側である50代のサラリーマンの立場から、この問題を考えると大変厳しいものがある。
2. 50代サラリーマンのキャリア設計が厳しい理由
①役職定年制度による、社内での居場所が無いこと
今はほとんど全ての大企業は役職定年制度を採用していると思われる。一定の年齢に達すると、自動的にラインの管理職(部長、課長)タイトルを剥奪され、併せて年収も2割程減らされるという制度である。
20世紀においては、役職定年が適用される年齢は57歳位だったのが、21世紀に入ると段々と早期化し、55歳が増えて、中には52歳というところもある。
したがって、50代のサラリーマンはモチベーションが低下しているし、周りの若手社員もそのような環境に慣れてしまったため、社内で活躍できる居場所は無くなってきている。
②スキルが無いので転職できない
日本の大企業は年功序列とジョブローテーションを柱としてきたので、これといったスキルやリーダーシップが無くても誰でも管理職になることができた。そして、スペシャリスト型の制度では無いので、業界横断的に求められるスキルを持っている50代サラリーマンは非常に少ない。
汎用性のあるスキルとしては、英語、IT、会計などがすぐに思い浮かぶが、周りの50代のサラリーマンを見渡して、英語、IT(プログラミング)、会計(ファイナンス、税務)が堪能な人はいるだろうか?
ただでさえ、50代というと頑固なイメージがあるし、どうせ一緒に働くのであれば若い方がいいと誰でも考えることなので、スキルがあっても50代の転職は厳しい。ましてや、これといった専門スキルが無いのであれば、転職は非常に厳しい状況にある。
③IT、ネット系ビジネスに疎い
50代のサラリーマンでも、PC、スマホ、SNSをユーザーとして使いこなすことはできるが、自らネットビジネスで稼ぐ知識や能力は有していない。
これは、長年、大企業は副業とか情報発信を規制してきたからという事情もあるが、将来ネットの副業で稼がないといけないという危機感が希薄であったサラリーマンにも問題はあるだろう。
したがって、「能力のある自分を年齢だけで閑職に追いやって、今の会社はけしからん。ネット系ベンチャーに幹部として転職して、ストック・オプションでリッチになって見返してやる!」と意気込んで、Wantedlyを物色しても、ネットビジネスに疎いので採用されない。
④金融リテラシーが低い
50代に限らず、サラリーマンの場合、年収2000万円以上の人はかなりの少数であろうから、大抵の場合、会社が源泉徴収をやってくれて、年末調整だけで終了する。確定申告なんて、マンションを買った年の住宅ローン減税の時くらいしかやったことがなく、税金には疎い。
また、企業年金が充実しているし、退職金制度もしっかりしているので、自ら運用をしようというモチベーションはわかない。
このため、証券口座すら開けたことがないエリートサラリーマンも多い。
3. 現状の50代サラリーマンにならないためにやるべきこと
①経営者人材を目指す
外資系金融の拠点長の年収は、7000万から3億円位と言われている。大きな幅があるのだが、見るべきところは上限値ではなく下限値である。外資系金融の拠点長になると、少なくとも年俸7000万円位は期待できるのだ。
そんなのなれっこないよと思うかも知れないが、それは外資系投資銀行を想像するからである。運用会社とかファンドの場合だと、東京の拠点は10人にも満たないことが少なくないので、拠点長になることもあり得る話だ。
外資系金融の拠点長のうま味は、年俸だけではない。年齢制限が無いので、50代は当然問題無く、60代だって構わない。日本の場合には、日本企業が終身雇用を採用していて経営人材を外から採らない自前主義なので、経営者人材のストックは乏しい。
従って、プロ経営者に一旦なると、その後もチャンスが回って来るのだ。
したがって、大企業の場合でも取締役を目指すのではなく、子会社の社長を目指すというのは面白い考え方だと思う。商社の場合、海外の現法の社長になれる確率はそれなりにあるので、その経験を他の業界でも活かせるような実力を付けることができれば魅力はある。
②CXOを目指す
上記①の、経営者人材を目指すというのは、ある意味ゼネラリストとしての1つの頂点を目指すという考えであるが、別のスペシャリストの頂点としてCXOを目指すというのもアリだ。
CXO、要するにエンジニア系だとCTO、ファイナンス・財務系だとCFO、人事系だとCHRO、戦略コンサル系だとCSO、マーケティング・営業系だとCMOと、いくつものCXO職はある。
CXOの場合も、経営者(CEO)程ではないにせよ、年齢による制限が無いのは魅力だ。一旦どこかでCXOのポジションに就くことができれば、その後はCXO経験者ということで、50歳を過ぎても十分転職していくことは可能だ。
また、ベンチャー企業に転身を考える場合でも、CXOとして確かな腕と自信があれば選択肢は格段に増える。ベンチャー業界に、優秀なCXOは少ないので、需給的にかなり有利であるからだ。
このため、メガバンクとか大手の保険会社でリテール業務をやる位であれば、メーカーの経理とか人事で専門性と経験を磨き、転職も絡めて、CXOを着実に目指して行く方が計算されたキャリアであるだろう。
もっとも、日本企業の問題点は、メーカーの場合でも職種別採用を新卒についてはやってくれないことだ。このあたりについては今後変わって行く可能性がある。
③副業を磨く
働き方改革の目玉の1つが、副業/兼業の規制緩和、推進だ。既に、ヤフーやメルカリの様な先進的なネット系ベンチャー企業とかでは解禁されている。
このため、大企業のサラリーマンでは年齢に関わらず、副業で稼げている人はほとんどいないであろう。
しかし、今後は、この副業でどれ位稼げるかがキャリア上重要になって来ると思われる。
国内経済が全般的に縮小していった場合にも、ネットビジネスとかAIといった分野はまだまだ成長が期待できる分野であるからだ。
副業と言っても、具体的には、個人ブログ、YouTube等を開設してアフィリエイト、Googleアドセンス等の広告で稼ぐとか、noteでコンテンツ課金をするとか、せどりで販売で稼ぐといったところである。これだけで月100万円を稼ぐことは大変だが、優秀な者からすると、月10万円位稼ぐことは十分に可能であろう。
それから、サラリーマンは給料ではなく自力で稼ぐ経験をすることは、いろいろな意味において極めて重要である。アフィリエイトで1円でも稼げると、給料ではなく自分自身で稼いだお金なので、自信もつくし、いろいろなヒントにもつながるはずだ。
以上より、50代でリストラに怯えるサラリーマンにならないようにするには、副業を積み重ねまとまった金額を稼げるようになることがお勧めだ。
最後に
今、50代のサラリーマンはキャリア選択において、本当に選択肢が無い。30代、40代と年をとればとるほど転職は厳しくなるが、50歳になると決定的にポジションは減るし、30代、40代と競合すると負ける。
かといって、企業にどっぷり浸かってきたので、今更自ら起業・独立なんて考えられないし、ネット系にも疎いので、ネットを利用した個人経営という発想も無い。
それに、子供の教育とか住宅ローンが残っていれば、身動きできない。
今さら専門スキルを習得することなど非現実的であるので、今の会社にしがみつくのが結局一番賢い。
その代わり、時間的余裕はあるから、簡単な副業からでも始めてみるのが良い。ランサーズとかクラウドワークスのライティングからでも始めてみるべきだろう。