「英HSBC、7~9月純利益24%減、欧米軸にリストラ検討」の日経記事について考える

1. 英HSBC、7~9月純利益24%減、欧米軸にリストラ検討

こちらは、2019年10月29日の日経オンラインからの記事である。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51514940Z21C19A0000000/

HSBCホールディングスは、大手の英国籍の金融コングロマリットである。傘下には商業銀行に加えて、投資銀行、運用会社も有しており、日本においてもこれらのビジネスを幅広く展開している。

日経の記事によると、世界的な金利低下による融資の利ザヤの縮小や、債券などの取引が低調で市場部門の収益も振るわなかったという。

このため、欧米を軸にリストラ策の健闘を急ぐ方針を示したという。

なお、地域別で見ると、アジアは好調で、主力の香港は反政府デモが継続しているにも関わらず、個人向け金融等が好調であった模様である。

HSBCというのは旧香港上海銀行を設立母体としているので香港を始めとするアジアビジネスに全般的に競争力を有しており、この点は昔から評価されている点である。

とはいえ、2019年においては、ドイツ銀行の大規模リストラが今年の夏に報道されるなど、相変わらず欧州系の金融コングロマリットは厳しい状況が継続している。

<ドイツ銀行、最大2万人削減へ>
https://career21.jp/2019-07-02-101351

2. 日本におけるビジネスの影響

これは、ドイツ銀行とかHSBCグループに限った話ではないが、外資系金融機関の場合、日本の拠点が順調であったとしても、親会社が経営不振になると当然無関係ではいられない。

直ちにリストラの話が本社から降りて来るという訳ではないが、ボーナスの金額等に響いて来ることが多い。

また、欧州系金融機関の日本の拠点が稼いでいるのかというと、当然、日本の投資銀行ビジネスだけ好調という環境には無い。このため、親会社が不振だと、日本の拠点で働く従業員にとっては頭の痛い話である。

3. 外銀志望者は、自分のキャリアを少し長い視点で考える必要があるのでは?

若い時から高給がもらえ、スキルの習得が可能な外銀はトップ就活生の間で人気である反面、超難関化しているので、就活生は対策に追われているだろう。

しかし、就活時における外銀選択というのが、最適解とは限らないので、このニュースも踏まえていろいろとキャリアについて考えてみてはどうだろうか?

①5年後、10年後に、自分が外銀の世界の中で輝いている姿を想像できるか?

就活段階では、とにかく外銀に入ることが目的化しており、企業レベルを落としたり、志望部門・職種をフロントからミドル・バックに落としてまで、何とか外銀から内定を取りたいという焦りもあるようだ。

しかし、せっかく難関突破をして外銀に新卒で入社したとしても、3年後にアソシエイトに昇格する時点には同期の半分以上が会社を去っている。

更に、競争力のある外銀のエンティティ数は減少傾向にある。その中で、5年後、10年後に厳しい競争環境を勝ち抜くことができる自信があるか考えてみたい。

もし、そこに不安があるのであれば、以下のような選択肢も取り得るのではないだろうか。

②国内系証券会社のIBDやグローバル・マーケッツコースをメインにする。

そんなこと言われなくても、トップ就活生は高い情報収集・分析能力を有しているので、国内系証券との併願は当然意識しているのだろう。また、多くの外銀志望者が国内系と併願するので、外銀を受けることによって外銀志望者のレベル感も知っておきたいところである。

従って、国内系証券会社の専門職コースを本命に据える場合でも、外銀と併願することは推奨できる。ただ、本音ではフロント部門志望であるにも関わらず、滑り止め的な位置づけでオペレーションとかバックオフィスを併願するのはあまりお勧めできない。

それなら、国内系の中でも、三菱UFJMM証券やみずほ証券のフロント部門にフォーカスした方がいいだろう。

国内系証券会社のIBDとか市場部門に入って、その中で経験とスキルを積めば、中途採用で外銀に転職できる可能性はある。(もちろん簡単ではないが…)。

そうすると、新卒時点においては外銀のミドル・バックオフィスの方が給料が高かったとしても、すぐに追い抜くことができる。

また、国内系には、働きやすさとか、良好な案件の豊富さとか、外銀には無い魅力があるので、居心地が良ければ国内系で働き続けることも悪くは無い。

もちろん、国内系の難易度はかなり高くなっているので、全く油断はできなのであるが…。

<隠れた最難関、国内系証券会社IBDへの就活について>
https://career21.jp/2019-10-22-093310

③運用会社(バイサイド)をも視野に入れる

面白いことに、就活生は外銀に関する情報は豊富に持ち合わせているにも関わらず、運用会社(バイサイド)になるとほとんど情報を持ち合わせていない。

これは、外資系運用会社は基本的に新卒採用を実施しないからであるとか、トップ就活生向けの就活メディアにおいても外資系運用会社に関する情報はあまり掲載されていないからと思料される。また、国内系の場合、運用会社は銀行、証券、保険の子会社であるので、格下の業界と捉えられているのかも知れない。

いずれにしても、トップ就活生でも運用会社の世界についてはあまり詳しくないと思われる。

しかし、外資系運用会社のエンティティ数は数多く、また、ヘッジファンドなども含めるとかなり転職のチャンスは多い。年収については外銀には敵わないものの、フロント職であれば30代で3000万円を狙うことは可能である。

また、ヘッジファンドで成功出来れば、外銀以上の高収入を実現することも可能である。(もちろん、リスクも高かったりするが…)。

運用会社の世界も、インデックス(パッシブ)運用の高まりとか、アクティブ運用における運用報酬下げのプレッシャーとか、いろいろ課題はあるが、OB/OG訪問をして業界研究をする価値はあるだろう。

<運用会社(バイサイド)の種類、年収、将来性>
https://career21.jp/2019-01-09-072810

④金融以外の業界、コンサル、商社等の可能性

外銀を本命にする場合も、当然、他の業界も併願しても構わない。
もっとも、コンサルとか商社の場合には、それなりの対応策に時間と労力を割かれるので、上手く配分を行う必要があるが。

比較的に併願をお勧めしやすいのが商社だ。
ハイスぺの外銀志望の就活生からすると、三菱商事を除くと、他の商社から内定を取るのはそれほど難しくないと思われる。もちろん相応の対応策を立てることが前提ではあるが。

外銀志望者からすると、「商社なんて、全然スキルがつかないじゃないですか?」と考えるかも知れないが、何といってもネームヴァリューがあるし、教育体制は充実しているので、第二新卒として外銀、外コン、国内系証券専門職に再挑戦する途は残されている。

また、社費留学はハードルが高いかも知れないが、有力校のMBAを取得すると、将来のキャリアは大きく拡がることとなる。

モラトリアム的な発想なのかも知れないが、商社の良さは、外銀、外コンと比較すると若い時には遥かに時間的・精神的な余裕が持てる。もちろん、給料もそこそこである。
従って、一旦商社に入社して、次の機会をじっくりと考えることができるので、ファーストキャリアとしての総合商社は悪くないと思われる。

最後に

外銀が難化していることもあり、最近何人かの就活生から相談を受けたが、外銀志望のハイスぺ学生のプレッシャーはかなり高い気がした。ファーストキャリアが外銀以外になったとしても、いくらでも明るいキャリアはそこから開拓できるので、いろいろな選択肢を視野に入れて、ある程度リラックスした状態で外銀に臨みたいところである。

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