1. そもそも良いベンチャー企業を見つけ出すのは難しい…
日本の大企業の場合、ほとんどの企業が新卒一括採用・終身雇用制度を採り続けてきたので、日本の労働市場における流動性は低い。
2019年の令和の時代になってから、経団連の終身雇用の廃止宣言が注目され始めたものの、今直ぐに状況が変わるわけではなく、労働市場の流動性はまだまだ低いと言わざるを得ない。
そもそも大企業のサラリーマンの場合、転職エージェントに接したことすら無いという人も結構いるので、中途採用・転職市場における良質な情報を探し出すことは結構難しい。
ましてや、ベンチャー企業の場合には、以下の理由により、良いポジションを探し出すことは、大企業の良好なポジションを探し出すよりも格段に難しい。
①そもそも上場していないので、公開情報がほとんど無い
メルカリのような既上場のベンチャー企業ではなく、まだIPOに至っていないベンチャー企業の場合には、公開情報がほとんどない。
このため、どれくらいの売上・利益があって、どういった部門で稼いでいるのか、今後どういった部門に重点を置いて勝負しようとしているのかといった正確な情報を把握することができない。
少ないながらも、ベンチャー企業自身のHPには情報があるものの、IPOを目指しているベンチャー企業の場合は特に、株価を意識する必要があるので、見栄えが良い情報しかなかなか入って来ない。
特に困るのが、その企業の本当のビジネスモデルすらわからない場合だ。
例えば、AIというキーワードを散りばめている様な場合、実態は単なる受託開発をしているだけに過ぎないケースも散見される。
また、ベンチャー企業であるにも関わらず、複数の事業に手を出している場合、どちらがメインなのかもよくわからない。
②転職エージェントに尋ねることが出来ない
転職エージェントは自分のクライアントである採用側企業のことは悪く言わないので、良い情報は取れないという見方もある。しかし、長年付き合いのある転職エージェントの場合には、それなりの実態を教えてくれることもあるし、自分が担当していない企業についてはネガティブな情報も教えてくれることが多い。
しかし、ベンチャー企業の場合には、転職エージェントを使っているところはまだまだ多くないので、転職エージェント経由の情報を入手できない。
特に、待遇に関する情報については予めレベル感を知っておきたいところである。
ストック・オプションをもらえるかどうかは極めて重要なところであるので、予めそれを把握しておかないと、最終面接になって初めて知って、お断りをするという無駄な就職活動になってしまう場合がある。
Wantedlyだとこの辺りがよくわからないので、転職エージェントを使えないベンチャー企業への転職は情報収集が難しい。
2. 良いベンチャー企業の選び方
①【年収チャンネル】キープレイヤーズの高野秀敏さんの考え方
結局、情報が限られる中、良いベンチャー企業を見つけるには、多分に感覚的なもので決定せざるを得ないところがある。
この点、人気YouTubeの番組「年収チャンネル」における、著名転職エージェントである高野さんの登場回は参考になると思われる。
<「年収チャンネル」 良いベンチャー企業の見つけ方>
https://www.youtube.com/watch?v=Td0-87MsRKM
それを整理すると、ポイントは以下の3点。
(1)経営者、従業員が優秀かどうかを見極める
ベンチャー企業の場合、ビジネスモデルよりも、重要なのは経営者自身であるということが一般に言われている。
これは、転職活動においても同様で、自分が転職を考えるベンチャー企業の経営者やその従業員が優秀かどうかで判断すべきということである。
もっとも、若手の社会人、ましてや、ビジネス経験の無い就活生の場合、経営者が優秀かどうかの見極めは大変難しい。
この点は、実際にその企業で長期インターン/アルバイトでもしてみないと、なかなか実態把握は難しいであろう。
(2)伸びている業界かどうか
これは、その業界自体が伸びていれば、当該ベンチャー企業はイマイチだったとしても、少なとも自分自身は需要のあるスキルとか業界経験を身につけることができるので、自らの市場価値を向上させることができる。
今でいうと、AI、デジタル・トランスフォーメーション、フィンテック、5G関連といったところであろうか?
もっとも、上述したように、ベンチャー企業の場合は、掲げた看板と実際のビジネス内容が食い違うことがあるので、この点は判断が難しいところである。
(3)逆バリ、先行している企業を選ぶ
これは、既に成功している企業、例えば、メルカリとかZOZOのような企業だと伸び代が限られるので妙味が無いということである。
例えば、フィンテックと言っても、仮想通貨の大手取引所(例えば、ビットフライヤー)とか、ロボアドバイザーのウエルスナビとかに行ってもリターンが少ないということである。
ただ、これも見極めが難しく、就活生の時点においては逆バリで企業選びをするのはほぼ無理であろう。そこまでやるなら、自ら起業をする前に短期間勉強しておくために就職してみると言った覚悟がいるのではないだろうか?
②それ以外の良いベンチャー企業の見極め方
上記のベンチャー企業の見極め方は、ある意味、真実なのであるが、定性的な項目が多く、ある程度のビジネス経験が無いと難しいだろう。
そこで、以下の様なチェックポイントを紹介する。
(1)1億円以上の資金調達を実施済み
これは、他人の目利き力を借りる方法なのだが、既に1億円以上の資金調達に成功している場合、VC等の外部投資家の審査を潜り抜けたということである。
したがって、それなりの内容のあるベンチャー企業であることがうかがえるのである。
特に、VCにおいても、GCP(グロービス・キャピタル・パートナーズ)、グローバル・ブレイン、WiL、インキュベイトファンド、イーストベンチャーズあたりが出資しているところは面白いかも知れない。
他方、目利き力が必ずしも高いとは限らない、金融機関とか事業会社系CVCが出資しているだけでは何とも言えないかも知れない。
(2)CXOのスペックが高い
CXOとは、社長であるCEOの他、副社長級のCOO、人事の責任者であるCHRO、財務の責任者であるCFO、テクノロジーの責任者であるCTO、営業の責任者であるCMOなどを意味する。
CFOにゴールドマン・サックス等の外銀IBD出身者がいたり、CTOにヤフーとかGoogle等の著名IT企業出身のエンジニアがいたり、CHROにリクルート出身者等がいる場合には、ハイスペック人材の採用に成功しているということであり、期待できる可能性がある。
もちろん、ハイスペックな人材を集めれば成功できるというものではないが、十分な参考指標になるかと思われる。
(3)ストック・オプションをもらえるか否か
これは当該ベンチャー企業の善し悪しというよりも、自分自身に対する評価も含めた視点である。
ベンチャー企業には、自らの成長のために行くのであって、給料とかストック・オプションの有無といった待遇は気にすべきではないないという考えもあるかも知れない。
しかし、成長のため、勉強のためと言っても、重要な転職カードの1枚を切るわけである。どうせ行くのであれば、それなりの評価をしてくれるところに行きたいものである。
また、ベンチャー企業に行くときにはやる気満々であっても、低賃金・長時間労働では1年もすると疲弊してくるものである。そんな場合には、ストック・オプションという楽しみでも無いとやっていられないものである。
それに、そもそも、ケチな経営者という者は大成しないことが多い。
ケチなのは自分に対してだけかも知れないが、それなりの待遇を用意しないと良い人材は採れないものである。
優秀なスタッフを採れないようなベンチャー企業はまず成功できないので、そんな船に乗っかっても一緒に沈没するばかりだ。
ベンチャー企業なので、現金給与が出せないのは当然かも知れないが、それなら、ストック・オプション位を渡さないと成功は厳しいだろう。
最後に
良いベンチャー企業の見極めは、実は、大変難しい。
単に面白そうだとか、転職エージェントに勧められたというだけで乗っかると、確率論的に失敗することの方が多いだろう。
成長すること、将来自らが独立・起業するために勉強するのが目的と言ったところで、
ある程度のDD能力を持っていないと大した成長は難しいのではないだろうか?
学生の間は、長期インターンということでベンチャー企業の実態を掴むことができるし、社会人の場合には、Wantedlyを使うことによってベンチャー企業の経営者と接することはできる。
とりあえず、なるべく多くのベンチャー企業に接してみて、自らの目利き力を高めることが望ましい。