1. 大手証券会社の部門別採用が出来たのは比較的最近の話
今では、大手証券会社の場合には、IBD、グローバルマーケットといったエリート部署については別採用のルートがある。もちろん、外銀志望者が併願するために、かなりの難関にはなっているのだが、昔は総合職一括採用しか選択肢が無かったのだ。
2. 東大、京大生もリテール営業への配属リスクを負いながら大手証券会社に就職した?
大手証券会社の場合、制度上は総合職一本採用なのだが、当然裏ルートというものは存在し、東大とか京大で特に優秀だと判断されるものについては、口頭ベースであるが、最初から本社部門への配属を示唆した上で内定を出すケースは存在した。
とは言え、それらの例外的なポジション数は極めて限定されており、1学年で総合職を300人採用した場合、そのようなオファーをされるのはせいぜい十数人位であり、一般的には東大生や京大生でも普通にリテール営業に配属された。
そうなると、ハードなリテール営業についていけるわけではなく、1年以内に辞表を出したり、失踪する者もいた。
もちろん、大手証券会社もそういった事態は当然想定の範囲内であり、東大や京大卒で、
1~2年でリテール営業にドロップアウトした者は、他の非営業部門に異動をさせた。
3. リテール営業で失敗した後に配属される部署の例
①営業が絡まない、管理部門への異動が多い。
東大、京大から大手証券会社と言っても、本当にエリート扱いされている者は最初からIBDとか市場関連部門に配属されているわけである。
したがって、リテール営業でドロップアウトした場合には、IBDとか市場部門といったエリート部門に異動させてもらえるわけではない。
リテール「営業」で躓いたわけであるので、営業的な要素を伴う、IBDとか機関投資家営業的な部門には配属させにくいということもある。
典型的なパターンは、管理部門である。
例えば、経理部門、法務コンプライアンス部門、リスク管理部門、引受審査部門といったあたりである。
収益第一カルチャーの証券会社において、管理部門のステータスは高い訳ではないが、だからといって、低い訳でもない。
むしろ、格上の人事部門とか(総合)企画部門よりも、汎用的な専門性は、そういった管理部門の方が習得しやすい。
そして、大手証券会社の場合には、メガバンクなどと比べると、リテール営業時代の×点をそれ程引きずるわけではないので、その部署で高い評価を得られたら、その後にIBDとか市場部門への異動も可能となる。
②その後に頑張れば、明るい未来も拓けている
大手証券会社の場合には、リテール営業部門も本社部門も、基本的に2~3年位のサイクルで異動の対象になるので(管理部門の方が異動のサイクルは長めだが)、数年間頑張って、高い評価を得れば、IBDとか市場部門への異動も可能になる。
また、経理部門とか法務部門、或いは引受審査部門で身に着けたスキルは、IBD等においても応用できるので、必ずしも悪くないキャリアとなる。
もちろん、経理とか法務コンプライアンスの仕事が気に入れば、長く在籍し、スペシャリストとしての途を極めることもできる。そして、英語ができれば、外資系金融機関の経理や法務コンプライアンス部門に転職することも十分可能である。
そう考えると、東大や京大卒業生の場合は、大手証券会社においてはそれなりに良い対応をしてもらえるので、総合職で最初の配属先がブラックボックスのまま入社をしても、それなりのキャリアを形成できる可能性は大いにある。
4. もちろん、全員が何とかなるとは限らない…
とは言え、リテール営業がキツくて、1年どころか1か月も持たずに辞表を出したり、鬱になったり体調を壊したりして、次の異動先を考える余裕などないまま退職してしまうケースもある。
やはり、最初にリテール営業に配属される可能性があるということはリスクであって、
予め回避できるものであればそれに越したことはない。
5. 終身雇用が廃止され、会社名よりもスキルが重視される将来においては、東大、京大生であれば、大手証券会社の総合職は避けるべきか?
令和の時代になって、終身雇用の廃止が強調されるようになってきた。
そして、人生100年時代、年金2000万円不足問題を考えると、70歳位まで何らかの形で働き続けることを考えた方がいいかも知れない。
そうなると、会社名の価値は薄れ、その人の転職力を伴うスキルとか市場価値といった方が重要なファクターになっていくことが予想される。
東大、京大という学歴があったとしても、卒業後に適切なスキルを取得しないと、年を取るほど市場価値は下がってしまう。
以上のようなことを考えると、配属先がブラックボックスで、リテール営業のリスクがある証券会社の総合職は回避した方が賢明かも知れない。
東大、京大生の場合には、ほとんど全ての企業から内定を取ることができるのだから、
きっちりとしたキャリアプランを立てた上で就職活動を実行すべきであろう。
証券業界というのは、同じ会社でありながら、業務内容とか部門間格差が極めて大きい特殊な業界であるので、会社名よりも職種に拘るべきである。