1. 終身雇用廃止を踏まえると、転職を想定したキャリアプランが必要に?
経団連が終身雇用の廃止を宣言し、将来的には長年続いた終身雇用制度が無くなっているかも知れない。
従来の様に、大手企業のサラリーマンの多くが最後まで1つの企業に勤め上げるのが主流であれば、転職ということは考える必要は無かったのであれば、終身雇用が保証されなくなると、転職を前提としたキャリアプランを立てて行くことが求められる。
2. 転職力、市場価値を高めろと言われても、その方法がよくわからない…
転職するとなると、転職力或いは市場価値を高めることが必要となる。
しかし、今までは終身雇用が主流であった。
また、転職とかフリーランスといったものはネガティブに捉えられていた。
そもそも、労働市場の流動性が低かったために、転職エージェントというのも大企業のサラリーマンにとっては身近な存在ではなかった。
そういった環境下、多くの大手のサラリーマンは、どのようにすれば転職力とか自らの市場価値を上げることができるかについて、その方法が良くわからないのではないだろうか?
3. そこで、社会人向けビジネススクール(国内MBA)
社会人が自らの市場価値を上げる方法の一つとして、社会人向けビジネススクール(国内MBA)に進学するということが挙げられる。
社会人を対象としたビジネススクール(国内MBA)としては、早稲田、慶應、一橋などがあるが、全日制だと会社を辞めないと行けなくなるので、現実的に選択しやすいのは夜間・休日に授業があるパートタイム型のビジネススクールであろう。
慶應と一橋は全日制なので対象から外れ、パートタイム型でメジャーなところというと、
早稲田とグロービスあたりであろうか?
もっとも、早稲田の場合には「早稲田MBA」という学歴・学位が欲しくて進学する社会人も結構いるようなので、本当に市場価値・転職価値を上げる目的だとは限らない場合もある。
4. 社会人向けビジネススクール(国内MBA)は市場価値を上げるために有用か?
日本の場合、国内MBAに対する評価は総じて辛めで、市場価値とか転職力向上には役に立たないという見方も結構ある。
しかし、社会人向けビジネススクールに通って真面目に勉強したとすれば、少なくとも以下のメリットはあるだろう。
①知識と視野を拡げることができる
サラリーマンの場合、同じ会社で働いていると、業界とか今やっている職種(営業、マーケティング、人事、経理、法務、IT等)を拡げることは難しい。
しかし、社会人向けビジネススクールに通うと、経営戦略、マーケティング、HRM(人的資源管理)、ファイナンス・会計、IT周りを幅広く学習することができる。
もちろん、営業畑のサラリーマンが、ファイナンスとかITを勉強したところで、それだけではその分野への転身を図ることは厳しいが、同じ営業畑の中ではファイナンスとかITに詳しい人として社内的にアピールをすることができる。
また、営業畑から、ファイナンスとか人事部門に社内異動した場合には、スムーズにその部門に馴染むことができるし、自らのスキルの数を増やすことができる。
そして、将来、起業とかフリーランスを目指す場合においては、経営というのは営業、企画、人事、マーケティング、ファイナンス、ITとあらゆる能力が求められる総合格闘技的なものであるので、社会人向けビジネススクールで幅広い分野を一通り学習できることは有用だと考えられる。
②他業種の人達と触れ合うことができる
社会人向けのビジネススクールには、金融、コンサル、IT、流通、メーカー、会社経営者と幅広い業界の人達が集まっている。そして、講義はケースとかディスカッション形式を取り入れたものが多いので、他業種の人達の考え方や見方を取り入れることができる。
これは、同じ業界で働いているとまず得られない経験であるので、その業界で転職するにせよ、他業界に転身するにせよ、他業種の人達と一緒に勉強したり、議論をしたりすることは有意義だと考えられる。
③ネットワークを構築することができる。
早稲田ビジネススクールの内田和成先生も説明会でコメントされていたが、社会人向けビジネススクールの最大のメリットは、ネットワークができるということだそうだ。
社会人向けのビジネススクールは学部と比べると圧倒的に少人数であり、1学年数百人レベルである。このため、親近感が強く、同期生に限らず、卒業生ともメール一本で連絡が取れるという強固なネットワークを持っており、転職の相談でも、仕事の相談、或いは起業・独立の相談でも気楽に聞けるという強みがある。
これは、将来の転職力にとって有用だと言える。
以上のように、社会人向けビジネススクールに通った場合には、転職力とか市場価値の向上という観点からも、それなりに有用なことはあると言えるだろう。
この点、グロービスの創業者の堀義人さんは、「最も効果的な投資は、自分自身に投資をすることだ。」と説明会で話されていたが、自分の市場価値を高めるためには、自分に投資をする他は無い。これは真実であろう。
5. 社会人向けビジネススクール(国内MBA)で期待できないこと
他方、社会人向けビジネススクールの課題というか、期待できないこととして、以下の点が指摘できる。
①転職サポート体制が不十分
夜間・週末に授業が開催されるパートタイム型の社会人向けビジネススクールの場合は、今いる会社で働き続けることを前提としているので、転職サポート体制が脆弱な場合が多い。
どこかの有力な転職エージェントと複数提携したり、教授のコネなどを通じて特定の有力企業と転職の窓口でも設けれもらえれば、学生としては有難いのであろうが、そのようなサービスはあまり見られない。
この点、慶應ビジネススクールとか一橋ビジネススクールのような全日制の場合には、一旦会社を辞めてから進学することが前提となっているので、それなりに学校が就職の手助けをしてくれるようだ。
<一橋大学経営大学院の魅力>
https://career21.jp/2019-03-26-170920
とは言え、全日制の社会人向けビジネススクールに進学してしまうと、今所属している会社を辞めることになるのでリスクは高い。また、その間は当然無職なので、経済的に苦しくなってしまう。
このあたりが、国内MBA全般にあてはまる課題であろう。
②箔付にならない
ハーバード、スタンフォード、ウォートンといった米国のトップMBAの場合は、そこんで学んだ中味は別として、転職市場において抜群のブランド価値、箔がある。
他方、国内MBAの場合には、早稲田であろうと慶應であろうと、大した箔付けにはならない。学歴については、結局、学部の学歴で判断されるので、下手をすると、「学歴ロンダ」「院ロンダ」という見方もされかねない。
2年間の通学という苦労と、300万円程度の学費を突っ込んで、上述のように得られることはあるものの、箔付けにはならないというのは残念な点であろう。
③起業・独立には直接役立たない?
幅広い分野の専門性・スキルを身に付けたり、多様な業種の人達と交流するのは、起業・独立にとっても有意義なのは間違いない。
とは言え、直接的に社会人向けビジネススクールが起業・独立に役立つかというと、必ずしもそうとは言えない。
カリキュラムの中には、起業とかベンチャービジネスに関する科目はあるのだが、座学が中心であるし、生徒の大半は大企業のサラリーマンであって、起業・独立を本気で目指している人はごくわずかである。
もっとも、早稲田ビジネススクールは既に成功している起業家とのネットワークが強いようなので、起業・独立に関心がある社会人は早稲田を検討してみる価値はあるかも知れない。
最後に
終身雇用が廃止されると、転職を視野に入れたキャリアプランを立てなければならない。
そして、転職するにあたっては、自らの市場価値を高め、好条件で転職が可能になるように実力を付けたり、ネットワークを強化していくことが求められる。
それでは、市場価値を高めるにはどうしたら良いかということについては、明確な方策があるわけではない。
その方策のうちの選択肢の1つとして、社会人向けビジネススクールへの進学というのがある。
国内MBAの場合には、多くの課題があるものの、少なくとも言えることは、行かないよりは行った方が市場価値は上がるということである。
但し、国内MBA進学についてのROI(Return on Investment)が必ずしも高いとは言えないことが課題なので、興味があれば、グロービスとか早稲田の説明会に行ってみるのが良い。説明会はわりと頻繁に開催されているし、説明化に参加すれば、卒業生や在校生が親切にいろいろと教えてくれるはずだ。