1. 難化する外資系金融のフロント職と高まるオペレーションへの注目?
①就活時における外資系金融の門戸は狭い
外資系金融の場合、外資系投資銀行、いわゆる「外銀」と、外資系運用会社(バイサイド)に大別される。
ところが、外資系運用会社(バイサイド)の場合には、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント、JPモルガン・アセット・マネジメントのような投資銀行系運用会社や、最大手のブラックロックとフィデリティのような例外はあるものの、基本的に新卒は採らない。
このため、就活の対象となるのは基本的に外銀に限定され、しかも、外銀の場合、ドイツ銀行のリストラ報道に見られるように全般的に欧州系の投資銀行ビジネスは調子が良くない。
そうなると、米系大手と欧州最大手のUBS位に対象が絞られがちである。
さらに、外銀の場合、部門別採用をするのであるが、人気があるのは高給で知られるIBDとグローバル・マーケッツ部門のようなフロント職である。
②国内系証券会社のフロント職も難しい…
外銀のフロント職が難しいことは就活生も十分知っているので、国内系証券会社のフロント職を併願する就活生は多い。
しかし、国内系証券会社においても、数百人規模で採用する総合職とは異なり、フロント職は各部門10人程度の少数しか採用しないので、併願したところで外銀の「滑り止め」になるとは言えない。
国内系証券会社のIBDコースの説明会等に参加してみたら、周りは東大生ばかりだったというのはよく聞く話である。
③結局、フロント職は難しいので、オペレーションも併願したい?
しかし、フロント職の場合、難易度が極めて高くなるので、バックオフィス、特にオペレーション部門の併願を考える就活生も出てきている。
そこで、本当に外資系金融のオペレーション部門に就職してもいいのか気になるところである。
2. いったん外銀オペレーションに入社して、その後にフロント部門への社内異動は可能か?
外銀のフロント部門から内定を取れず、オペレーション部門から内定をもらった場合、社内異動で途中からフロント部門に行けば問題無いという発想がある。
確かに、社内異動に成功すればその通りなのだが、部門を超えた社内異動が難しいというのは国内系金融機関も外資系金融機関も大して変わらない。
外銀の方が組織が小さいので、オペレーション部門のMDとフロント部門のMDがOKをすれば、日本企業とは異なり人事部門は権限が無いので、社内異動は可能である。
しかし、優秀じゃなければフロント部門は採ってくれないし、優秀であればオペレーション部門は手放してくれないので、結構ハードルは高い。
いずれにせよ、年をとるに連れて社内異動は難しくなり、アソシエイトに昇格する頃にはかなり難しくなってくる。
したがって、一旦外銀のオペレーション部門で採用されると、途中でフロント部門に社内異動するという楽観シナリオはあまり当てにしない方が良いだろう。
3. 外銀オペレーションとしてのキャリアと将来性
①外銀オペレーションの年収水準
オペレーション部門は、フロント部門と比べると、大幅に給与面において見劣りする。
そもそも入口(初年度)の年俸についても、ベースと呼ばれる基本給が600万円程度であることが多く、ボーナスを含めても、初年度は1000万円に到達しない。
そして、アソシエイトに昇格すると、基本給は1000万円程度に到達するが、オペレーションを含めた外銀のバックオフィスのボーナス水準は低いので、せいぜい数百万円程度しか見込めない。
30歳位で、VPに昇格すると、トータルで年収は2000万円を越えるが、フロント部門と比較すると半分くらいのイメージである。
それに、オペレーションを含めたバックオフィスの昇格速度は遅いし、時間もかかりがちであるので、VPまで到達するのは容易ではない。
(もちろん、フロント部門でも別の意味で容易ではないが…)
就活生からすると、初年度年収が800万円というとかなり魅力的に聞こえるかも知れないが、社会人になると大した金額では無いので(メガバンクでも20代後半になると誰でもそれ位には到達する)、あまり目先ばかりを見ない方が良い。
もちろん、MDまで到達できれば、年収は4000~5000万円になるが、それは本当に一握りに過ぎない。
結局、オペレーションの場合、年収については国内系大手金融機関や総合商社と比較すると若干多い水準であるが、フロント部門と比べると半分程度に過ぎず、世間一般で想像されているような外銀の華やかな生活を送ることは難しい。
よく言うと、バランスが取れているのであるが、悪く言うと中途半端な位置づけである。
②外銀オペレーションのキャリアと将来性
外銀オペレーションというのは、潰しが利く職種ではない。
事業会社では全く役に立たないし、外資系運用会社(バイサイド)への転身も実は結構難しい。オペレーションで求められるスキルが異なるので、30歳を過ぎてVPレベルでのバイサイドへの転身は結構厳しい。
そうなると、基本的に、一生外銀オペレーションで頑張るか、何とか30代のうちに国内系証券会社に転職するくらいしか途は無い。IBDのように、PEファンドとかベンチャーCFOというキャリアは見出しにくい。
しかし、外銀オペレーションの未来はそれほど明るいわけではない。
何故なら、非収益部門なので、コストカットの対象にされる部門であるので、慢性的に予算削減バイアスがかかる。
例えば、ゴールドマン・サックスがオペレーション部門をシンガポールに集約させていることが知られているが、これは結局、業務効率化・コストカットが狙いであるので、あまり良い話ではない。
また、AIによって将来代替されるリスクのある職種の典型であり、外資系運用会社のオペレーション部門(クライアント・レポーティング等)もITの進歩や、他社へのアウトソーシングによって、将来のポジション増は見込みにくい。
まとめ
就活生の世界においては、「外銀」というのはとにかくブランドで、何が何でも外銀に行きたいという気持ちはわからないでもない。
しかし、職種というのはそれ以上に重大であり、入社してから職種を変えることが容易ではないのは外資も国内系も同様である。
本当に、オペレーション的な仕事が好きなのであれば構わないが、そうでない場合には、他部門への転身は難しいので、ずっとオペレーション部門でのキャリアを不本意ながら続けなければならないことになってしまう。
したがって、外銀及び国内系のフロント部門に落ちてしまった場合には、オペレーションとかバックオフィスに拡げるのではなく、国内系のバイサイドとか、総合系コンサルティングファームとかも視野に入れて、長期的なキャリアプランを再考した方が良いのではないだろうか?