ヤフー経済圏?ZHDとSBIが金融で連携することによる転職機会をどう考えるか?

1. ヤフーが、SBIと金融事業で包括提携を発表

2019年10月10日に、ヤフーを傘下に持つZホールディングスが、SBIホールディングスと金融事業で包括提携すると発表した。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50849390Q9A011C1EE9000/

IT/通信大手では、楽天とKDDIが決済や投資など幅広い金融サービスを揃えようとしているところ、ヤフー陣営も、最大のネット証券を擁するSBIHDと組み、巻き返しを狙っていることがうかがえる。

2. 傘下に複数の金融部門を擁する両社の提携によって、転職の機会が見込まれる?

ヤフーを傘下に要するZホールディングスは、グループ内に、PayPay、ワイジェイFX、ジャパンネット銀行といった金融事業を抱えている。

また、SBIHDは、ネット証券最大のSBI証券の他、住信SBIネット銀行、SBIアセットマネジメント、SBI損保、SBI生保といった多くの金融機関を有している。

こういった大規模で複雑な金融サービス部門を抱える両社の包括提携が生じると、まず、既存の事業の重複部分を排するといった作業だけでも膨大な仕事量となる。

そして、証券、銀行、決済、保険、FXという極めて多様な金融サービスを展開しているので、どこにどのように重点を置いて、競合と勝負をしたり、事業強化を図るべきかという戦略を構築するには、金融ビジネスを熟知した優秀なスタッフが数多く求められるため、外部から人を引っ張ってくる必要性が生じるだろう。

いずれにせよ、この包括提携によって金融事業にかかるかなりのポジションが産まれることは間違いないだろう。

3. ヤフーとSBIとの金融事業に転職すべきか?

ヤフーとSBIという、インターネット系の最大手企業と、ネット系証券会社最大手のSBIとの組み合わせである。もともと、SBIという名前の通り、その出自はソフトバンクなので、相性は悪くないかも知れない。

直感的には、面白いことができそうにも見えるが果たしてそうだろうか?

このあたりについては、人によって意見が分かれるところかも知れないが、私としては、それほど面白いことができないのではないかと考えている。

インターネット系大手企業はヤフーの他、楽天、KDDI、LINE、メルカリなどが金融事業に興味を示しているが、その中では、楽天が一番面白いのではないかと考える。

このため、以下の理由から、ヤフーとSBIとの連携絡みの転職ポジションについては慌てて応募をする必要は無いのではないか、そうであれば、楽天の金融事業の方が面白いのではないかと考えられる。

①楽天の金融事業は、傘下のEC事業とのシナジーがある。

今のところ、金融事業で最も稼いでいるインターネット系企業グループは楽天である。
直近の決算期(FY2018)において、楽天の連結営業利益は1700億円強であり、そのうち約半分の833億円を金融部門が稼ぎ出している。

内訳としては、約4割の331億円を楽天カードが稼ぎ、約3割の257億円を楽天銀行が稼ぎ、残りの3割弱の212億円を楽天証券が稼ぎ出している(保険とか決済部門はほとんど利益を出せていない。)。

特に、楽天カードと楽天銀行が大きく稼いでいるのだが、この理由は明らかであろう。
傘下に楽天市場という巨大なECビジネスを有しているので、お買い物をする人が、楽天カードや楽天銀行を使って決済等をしているからである。これには、ポイントとかが絡んでくるので、他のカード会社とかネット銀行は入って行きにくい。

他方、ヤフーは利益の大半を広告ビジネスとヤフオクで稼いでおり、ECについてはまだまだである。従って、SBI側としては、ヤフーと包括提携をしたところで、楽天のようにECビジネスで傘下の銀行やカード会社が稼がしてもらうということにはならない。

②ヤフーファイナンスとつなげることでSBI証券は儲かるか?

ヤフーと金融というと、利用者1500万人の巨大金融情報のヤフーファイナンスがある。
ここのユーザーを、SBI証券とのビジネスに繋げられないかという期待がある。
しかし、SBI証券は既に400万口座(業界最大の野村證券の口座数が500万程度)を有しており、既にネット証券では日本最大である。そこに今さら、ヤフーファイナンスと繋げられるといっても、そこから新たにネット証券取引の需要が生まれるかどうかはよくわからない。

③SBIが現在、最も力を入れているのは地銀ビジネスでは?

最近、SBIはわりと派手な動きをしているようだ。
つい先月、2019年9月には、SBIHDは島根銀行との資本・業務提携を発表している。
SBIHDは島根銀行に限らず、複数の地銀との連携構想を有しており、「第4のメガバンク」ということで地銀とのビジネスを重要な戦略目標としている。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO49516110W9A900C1LC0000/

このような状況下、SBIは既存事業に加えて、地銀ビジネスでも精一杯だろうから、それに加えてヤフーとの提携事業にまで対応できないのではないだろうか?

4. SBIだと年収面における妙味に欠ける?

以上のように、ヤフーとSBIとの連携金融事業が成功するかについては疑問が残る。
どうせSBIを選ぶのであれば、地銀ビジネスの方が面白いかも知れない。

また、問題点としては、SBIグループの年俸水準はそれ程魅力的ではない。
そして、証券業界においてネット証券の業界ステータスは低い。
(なお、SBI証券の年収とか転職についてはこちらの過去記事をご参照下さい。)
https://career21.jp/2019-09-19-133640

業務内容が違うということもあるのだが、いくらSBIでエリートだと言っても、外銀とか国内系証券のIBDに採用されることはまず不可能であろう。

金融プロフェッショナルのキャリアという観点から長期的な視点で考えると、SBIに行ったところで、転職スキルとかネームヴァリューがあがるわけではない。

そうであるならば、金融キャリアを狙うというより、ネットビジネスでのキャリアを追求した方が面白いかも知れない。

もし、楽天の場合であれば、金融事業で成果を出して、EC事業とかメディア事業の方に凱旋させてもらえると、同じグループ内においてキャリアチェンジが図られることになる。

他方、SBIだとそれが難しい。まあ、ヤフー側で居場所を見つけるという手はあるのかも知れないが。

大手のインターネット系企業はフィンテック、決済を始め、金融事業に対する関心度が高いようであり、今後も金融スキルを有する人材に対するポジションは少なからず提供されるだろう。

しかし、そのポジションが果たして自分のキャリアアップに繋がるのかどうかについては、慎重な対応が必要となる。具体的にどの部門で、どういったポジションで、どの程度の年収(ストック・オプション含む)が期待できるのかということを冷静に考える必要があるだろう。

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