1. 人気YouTube番組「年収チャンネル」にカリスマ的ベンチャー転職エージェントが登場
2019年10月時点で、登録者数が6万5千人程の、業界や企業の年収を紹介する人気YouTube番組の「年収チャンネル」において、ベンチャー界隈でのカリスマ的な転職エージェントである高野秀敏さんがゲストとして登場した。
https://www.youtube.com/watch?v=tmfDEuSOkbI
テーマは、(ベンチャー企業等に)転職しやすいファーストキャリア(最初に勤める業界・会社)はどこかということで、キャリア形成上大変参考になる内容と考えられ、以下でそのポイントと、それに対する若干の考察を行うこととする。
2. ベンチャー企業等に転職しやすいファーストキャリア(最初の就職先)
大学を卒業して、最初に就職する業界や企業をファーストキャリアという言い方をするが、ファーストキャリアをどうするかということは非常に重要である。
それは、就活においては学歴が最重要ファクターであるように、転職・中途採用(第二新卒含む)においては、職歴・今働いている会社の会社名が最重要ファクターとなるからだ。
これも学歴と同様で、中味がどうのこうのというのは直ぐにはわからないので、職務内容とか実力以前に、今在籍している業界や会社のネームヴァリューによって選別されてしまうからだ。
今回のゲストの高野さんは、スタートアップ/ベンチャー業界においては知らない人がいない程著名な転職エージェントであり、ベンチャー企業等に転職をさせやすい業界・会社として、以下の3パターンを紹介されている。
①現在成長している業界にいる人、インターネット系企業に勤めている人
現在成長している業界は、当然、採用ニーズが業界として高いので、当該業界に在籍している人材もそれに応じてニーズがあるという当然の話である。
少子高齢化による国内市場の縮小化が避けられない日本においては、成長している業界を見つけるのは難しいが、その中でもインターネットに関する業界は基本的に成長業界と言える。
そして、非インターネット系の業界であっても、インターネットとの関連は必ずどこかにあるので、インターネットに関して何らかのスキル、専門性を有する人材については転職させやすいという。
②投資銀行業界にいる人
高野さん曰く、VC(ベンチャー・キャピタル)業界における資金量が急増していて、従来は年間の投資金額が2000億円位だったのが、今では倍増して4000億円位になっている。
このため、その資金市場から十分に資金を調達させ、IPOまで推進していく能力や、高株価対策ができてIR対応も得意な人材に対する需要が高いという。
そういったスキルは、投資銀行業界に在籍しているものが得意な分野であり、また、投資銀行業界に就職することは極めて難易度が高いので、ポテンシャル的にも優れた人材が多いというのも人気の理由である。
③戦略系コンサルティング・ファームにいる人
会社を大きく成長させていく上で、戦略系コンサルティング・ファーム出身の人材がいると、大変便利だと考えられているようだ。
こちらも、投資銀行業界出身者と同様、もともと優秀な人達が多いので、ベンチャー企業からの需要が高い人材だそうだ。
3. 反対に、転職させるのが難しいファーストキャリア
①総合商社に勤めている人
意外なことに、就活段階では、転職させやすい2つのファーストキャリアとして紹介されていた投資銀行や戦コンと並んで難関な業界であるにも関わらず、転職となると、需要は低いということだ。
何故かというと、日本企業は全般的にそうなのだが、最初の3年位は下積み中心であり、守備範囲も狭く難しい仕事を経験していないことが多いからという。
また、反対に給与水準は高く、数年で年収700~800万円位に到達してしまうため、ベンチャー企業がそれ以上の待遇を用意するのは難しくなるという。
そして、海外駐在があるからか、比較的若いうちに結婚する人が多いので、リスクの高いベンチャー企業からすると引っ張りにくいという。
もちろん、総合商社にはポテンシャルが高い人材が集まるので、その点は十分に理解されているのであるが、長くいればいる程採用しにくくなるので、動くならなるべく若いうち(入社3年目以内)が良いという。
②大手メーカーの人
こちらも、総合商社と同様、大手程、若いうちからハードな仕事に接することが少なく、長くいればいる程、独自の日本企業のカルチャーに染まっていくし、業界横断的なスキルを持っている人材が必ずしも多くは無いという。
もっとも、例外があり、大手メーカーの管理部門(法務、経理、人事等)はしっかりしているという評判で、特に、法務部門の人材に対してはニーズが高いという。
確かに、Wantedlyとかを見ても、法務や知的財産に対するスペシャリストへのニーズは高い。メーカーは、輸出の割合も高く、海外で厳しい戦いをしているので、法務その他の管理の水準は高いのだという。
但し、メーカーの場合、基本的には部門別・スキル別採用を行っていないので、狙ってそういった部門に就くわけではないので、配属先リスクを負ったまま入社することになってしまう。
4. 若干の考察
番組中で株本さんも言及していたが、上記のベンチャー企業に転職しやすい3業種のうち、投資銀行と戦コンは入社難易度が高いので、ベンチャー業界で成功するというキャリアプランを持つ者としては、インターネット業界が狙い目ということになる。
インターネット業界といっても、ヤフー、楽天、サイバーエージェント、LINE、メルカリといった実質的には大企業になってしまったベンチャー企業もあれば、WantedlyとかPassion Naviに載っているような従業員が10人にも満たない真のベンチャー企業もある。
どちらかを選ぶかは、その人のリスク許容度とか価値観にもよるが、ファーストキャリアで失敗したくないという場合には、大手インターネット系ベンチャー企業を選択することが無難であろう。
他方、将来は自ら起業をしたり、フリーランスとして独立を目指すという意図が明確であるのならば、最初から小規模なベンチャー企業を選択するのも悪くないだろう。
それから、面白いと思ったのは、大手メーカーの場合でも、管理部門の評価は高いということである。現在のところ、部門別・職種別の採用を行っていない大手メーカーが多いのであろうが、これは今後変容していくことが予想されるし、学生のスペックによっては就活の段階で交渉して行くことも可能だろう。
外銀、外コン、総合商社と比較すると、外資系メーカーのマーケティング職という例外を除くと、ハイスペック学生からするとメーカーに対する入社難易度はそれ程高くは無いだろう。そうなると、業種・企業・部署によっては、大手メーカー或いは事業会社において、狙い目の企業・職種というのがあるのかも知れない。
今後、別の機会で、そういった穴場的なポジションについても考察してみたい。